РІay with e×perimҽntal rats





 ……おいおいおいおい。勘弁してくれ。今すぐラットをケージに戻せ! 何をやってるんだ! あーあー、全てが台無しだ。ラットがみんな逃げてしまった。彼らは完璧に計算された環境下で、素晴らしいデータをもたらしてくれるはずだったのに。君は満足か? あらすじ通りに進まない小説に、一矢報いてやったとでも思ってるのか? 君の気まぐれな思いつきのために、ラットたちが無意味に死ぬことになるのがそんなに嬉しいのか。君って大層な人格者だな。さすが、短編小説を嗜まれるだけのことはある。


 なんだって、「ケージが開くとは思わなかった」だって? 


 あー、なるほど……君はつまりこう言いたいわけだ、「自分はただ書かれたものを読んでいる一読者に過ぎない。それなのに自分の行動が物語に反映されるなんておかしいじゃないか」と。確かに一理ある。でも考えてみてくれ、現に君はどうしてか私の研究所にやってきているし、こうして私と会話している。私には君の姿も見えている。だとしたら、君の選ぶ行動が少なからず私の世界に反映されるんじゃないかと、ほんのわずかでも想像してみてもよかったんじゃないか? もちろん私には、ただ活字を読んでいるだけだと主張している君がどういう方法でラットのケージを開けたのかはわからない。でもな、少しは想像がついたんじゃないのか? 君が何をしたにせよ、きっとそれをする前に「自分の行為は実験用ラットのケージを開けてしまうおそれがあるのではないか」と思案する余裕があったはずだ、違うか? 




 ハァ…………まあいい。


 残念ではあるし、本来あってはならないが、それでも事故というのは、どんなに注意していても起こるときは起こる。仕方がない、割り切ろう。まだ君がぐずぐずとここに居座っていること……良心の呵責と罪悪感に苛まれて首を吊ることを決意していないことが非常に謎だが、OK、それも忘れよう。


 さあ、研究を続けよう。



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