5話:逃レル者
※ ※ ※ ※ ※
ヒタヒタと忍び寄る足音、いや、付き従う影のようにピタリと
いつからだろう。
“
完全に
――参ったなぁ……
―――――
ここに、
あの少年の、
そう、
――だのに、
名を、オドゥオール。名うての
その情報屋オドゥオールは、少年の特徴を聞いただけで
――ああ、
ソイツの名は――
――――
最強の
そして、
あれだけ検索をかけ、調査したにも関わらず、何一つ、その情報の
世界的規模で開催されている違法
そして、吸血鬼の真祖を倒したという事実。
どれもこれも、
少なくとも、
オドゥオールという男――
私を
いや、だとしたら、ただ
ああ、――――本物。
その情報、限りなく“
「お
この男、
「なぜ?」
「お嬢さん、刑事だろ?なんもしなけりゃ一生
“
「――どう云う意味ですか?」
「ヤツには“
「……そんな
「
「どちらも
「いいや、
この男、
それとも、純粋に警告しているだけなのか。
いずれにせよ、もう止められない。それ程に、彼への、少年への興味が、彼を知りたいと思う知的
「大丈夫です、
「そうかいそうかい、それなら良かった。そうそう、少しだけ忠告しておこう」
「――はい?」
「ヤツを追えばそれは必然、吸血鬼共に追われる。それだけじゃあない、
「――ご忠告、有難う御座います……」
どう云う事だろうか?
あの少年が名うての吸血鬼ハンターであれば、狩られる立場にある吸血鬼達がそれを追うのは分かる。
「本当に困った時には、
「――
――葬儀屋?
オドゥオール……この男、忠告などとは云ってはいるが、
それがナニかを聞き返す事は
この奥歯に
そうでなければ説明がつかない。私が彼を信用していないのと同様、彼も
何か、――なにか、ある。
―――――
そう、
防衛本能――危機意識の
こんな
――だと云うのに……
そうと分かるって事が、
気付かせているんだ、
新米の私だって、本気で尾行するのであれば、もっと
急に、
歩調を変えず、歩む速度を一定に。
尾行を
私が
時は夕刻。
少なくとも、人間。太陽の
今、
土地勘は、ある。でも、男性相手では
少なくとも、日が落ちる
逃げる
間もなく、夜の
不用意に歩き続けるのは不自然。だから、行く
そこが、
その脇扉は常に開け放たれている。と云うのも、
そして、その通路奥には、
その抜け道を右に行けば大通りに、左に行けば右に折れ、その細道は別の通りに繋がる。何より、右に折れて間もなく左手に死角の多い駐車場が隣接しており、その駐車場を抜ければ、別の路地に抜ける事も出来る。
この複雑な構造が、
店舗脇の扉を入り、共用トイレのある通路が無数の
鉄扉を開けて
仮に追跡者が、その建物の、路地の、
或いは、AIなら予測可能か。だとしても、追跡手段が1つであれば、十分撒ける。そう、この迷宮は、私の為にこそ、ある。
この“嫌い”な街が、私を助けるのか?
一方通行な愛が、街からの愛が、有り
――いや、
痛々しいのは
――日が暮れた。
それが完全な日没なのか、それとも建物の影になっているだけなのか迄は分からないが、併し、十分。
その、店舗脇の、開け放たれた扉に入る。その通路が、そのまま
焦るな!
同じ歩幅、同じ歩調、同じ
入ってから。建物に、いや、扉を
どこへ逃げるかって?
多くの選択肢、尾行者が迷う程の選択肢。そんなものを、今、現時点で私が決めている筈もない。私自身が決めていないのだから、誰にも読まれない。勿論、尾行者にも。
扉を、潜る。
体が、建物内に入りきった
どこに逃げるか、なんて決めてない。
でも、もう、決まっていたんだ。
――兎に角、
遠く、へ。
一刻も早く、
最初に感じた、あの身の毛も
だから、走った。真っ直ぐに。
共用トイレの脇、通路真正面の裏口、その鉄扉。
裏路地へ――
思い切り扉を開け、併し、音を立てないよう、静かに閉める。
ヤツの視覚を
これで逃げ
――筈。
“迂闊”だった。
追跡者が私の行く先を読めないように、私も私自身が行く先を、その先を、見通せる訳もない。
何が起こるかなんて、何が起こっているかなんて、少なくとも当事者達には誰も分からない。そんな事くらい、誰にだって分かる筈なのに。その当然が、今の私には分からなかった。
今は決して無策ではなかったのに、筈だったのに、やはり、私は、
迂闊、だった――
幼女狩り ~第九官界流転帝国吸血鬼心中伝~ 武論斗 @marianoel
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