第一章 - 記憶の影
僕は上半身を椅子の背もたれに預けた。事故に遭う前はよく話してたという
「いきなり、七海に会えなくなるって言われてもなかなか信じられないよなー」
好意を持っていたとかいう意味じゃないと心の中で訴えかける。だけど全くないという訳では無い。深い意味はないのだが、名前に馴染みがあった。
「もしかして……。忘れたのか?」
「残念だが」
「お前ら仲良かったんだぜ? なんせ双子だったしな」
「……そうか」
僕の頭だけはかなり重症らしい。家族のことまで忘れていたとは。いや、逆に目が覚めた時に親が彼女の存在を出さなかっただけなのか。男女の双子。兄だっけ、弟だっけ。
―XXXX、XXXXXXXXXX。
何かの言葉が脳裏をよぎった。十四文字で構成された文。あまり覚えていなくてぼんやりとしている。これに関しては気になったところで何も解決しないだろうと思い、考えるのを放棄した。話が変わるが、なぜ事件の詳細を教師に伝えたのだろう、そして死因はなぜわかったのだろうか。頭から離れなかったので自問自答ながら、まず一つ目から解いていこうと思う。屋上からの転落死。まさかとは思うが、この学校なのだろうか? そういえばホームルームで「南館の化学準備室の横は補強工事があるので近づかないように」と言っていた。全くもって根拠はないのだが何か関係性があるのかもしれない。第一、犯人が一人だけとは限らない。犯罪の影には女あり。とも言う。犯行したのは男だが、その裏では女が命令しているという事だ。そして死因。証拠になったのは恐らく、
指紋。
血痕。
目撃情報。
「ッ!」
突如頭を鈍器で力いっぱい殴られたかような頭痛に見舞われた。あまりの痛さに目が見開いた。見開いているのだが視界は周りからだんだん貧血のように暗くなっていく。頭痛は治まることなく両手で抑え込む形になった。鼓動が早くなると同時に痛みも脈打つ。気持ちを切り替えるため手洗い場に向かった。両手に貯めた水を顔面に浴びせ、予め肩にかけておいたタオルで水滴を拭き取る。少し経ち頭痛は引いたがまだ余韻が残っている。さっきのは一体何だったのか理解できない。軽く考えただけでこんな事になったとすると普通なら過ごせないだろう。迷惑な話だな。
――あれ?
「……何を、考えていたんだっけ」
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