虚像のカゲ
観葉植物
第〇章 - 再開のかげ
「えー学生の君たちに言うのは酷かもしれないのですがー、
中学三年の六月二三日の月曜日。いつもなら騒がしいホームルームが一瞬で静まり返った。聞こえるのは風が窓を押してガタガタと揺れる音と大して効かない空調の音だけだ。その場にいる誰もが瞬きをするのを忘れているようだった。まさに時間が止まったかのように。座席の前後で喋っていた生徒も黙って体を前に向けた。このなんとも言えない重い空気を切り替えるように
「ははっ冗談辞めてくださいよ。まさかあいつが。死因は何なんですか? 場所は? 」
「えー顔面を複数回殴られたあと屋上からの転落死。殺人事件として捜査を進めているそうだ。こんな事言ったらPTAに滅多打ちにされるんだがな」
教室がざわついた。呆然としている生徒もいれば泣き出す女子さえいた。背筋に冷たいものが通った気がした。月曜日の朝のホームルームでこんな暗い話持ち出すとかマジかこの教師。そして詳細に言い過ぎでこちらも吐き気がする。この学校には生徒の気持ちを考えない酷い教師がいるんだなと理解した。
一之瀬七海。
彼女の容姿は何と言っても綺麗で隣を通った男子は目が付いて行くほど。黒髪ロングで無駄な飾り付けは一切ない。成績優秀で総合点は学年トップ10の常連だ。そして運動神経抜群、友人や先生から厚い信頼を寄せられていて、絵に描いたような生徒だったそうだ。そうだというのは、僕は全てに対してあまり知らないのだ。だから今までの僕と彼女の関係のことは知らない。そしてこのクラスのことも断片的にしか覚えていない。一応補足するが転校してきたとかじゃない。話によると僕は金曜日の塾帰り、雨の中自転車で横断歩道を渡っていた。その時に直進してきたバイクに勢いよく
「XXXた。XょXた、
「んぁ?」
顔を上げると周りの視線が痛いほど伝わってきた。さっき、担任の代理に質問をしていたクラスの議長、蓮が手のひらを上下に動かすジェスチャーをしている。早く立てという事だろう。
「お前何険しい顔してんだよ。心配になるだろ、事故りやがって。挨拶だ、立て」
俺の事を何も思っていないような口調で吐き捨てた。ある意味ぎこちなく接してこられるよりかはマシか。
「悪い、ちょっと考え事を」
重い腰を上げ両手で机に体重をかける。椅子が倒れそうになるところをキープした。てきとうな挨拶を終え、クラスメイトは散らばって行った。
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