第7話

部活を引退した。引退後もカメラを持ち続けていたから引退した感じはしなかったが。しばらくしてOB会に誘われた。僕は人付き合いはなんだか苦手な方で、そういう人がたくさん集まるようなものに参加したことがなかったから断ろうと思った。でもなにか、なにか引っかかって参加すると言ってしまっていた。いや、本心は参加したかったんだ。僕には、写真の話ができるのは写真部しか居なかったから。


40人くらいが部室に集まった。見たことのある顔とそうでない顔といたし、50代くらいの男性もいた。写真部は結構前からあったらしい。幹事である30歳くらいの男性の掛け声とともに『乾杯』。といってもまだ学生なのでお酒は飲めない。あと校内なので成人していてもお酒は飲んでいなかった。

ふと目に付いたのは、左端にぽつんと座っていた20歳くらいの女性。白いワンピースを着て銀のネックレスをしている。ノースリーブから伸びた腕は白く、なんだかワンピースと一体化しているような気さえした。そんなことを考えながらぼんやりと眺めていたら、彼女がこちらを向いた。目が合った。彼女はにこっと微笑むとこちらに歩いてきて、僕の隣に座った。

『こんにちは。覚えて、ないかな?』

僕は正直に 覚えていないと言った。

『君、見学に来た時に私に話しかけられたでしょう?明らかに困ったような顔をして、僕入部しませんから!って。そんなに言わなくてもいいじゃんって思ったよあの時は、!』

思い出した。そうだ、この人だ。

少し大人っぽくなったけど、表情も仕草も声もそのままだった。

感情が表に出ていたのか、彼女は嬉しそうに微笑むと

また会えてよかった と僕に言った。

僕はずっと心に引っかかっていたことを聞いた。

『なぜ僕が写真を好きってわかったんですか?』

『だって、写真を眺める目が違ったんだもの。それにその時君が眺めてた写真、私が撮ったやつだったから無理にでも入部させたくて。』

写真を眺める目、僕は側から見るとそんな風に見えたのか。


僕は彼女ともっと仲良くなりたくて、思い切って連絡先を聞いた。彼女は僕の真剣さに少し驚きながら、またあの笑顔を見せて快く教えてくれた。

そしてこの日から僕はこの人のための写真も撮るようになった。2人で出かけたりもした。僕はきっと恋に落ちていたんだと思う。でも、恋人になるとかそういうのはちょっと違くて、2人で写真の話ができたらそれで幸せだったんだ。

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