第26話 土魔法
レベルが20になったので約束どおりサラマンダーと契約をすることになった。いつものように両手を握りお互いの間を温かいものが流れていく。これで契約完了だ。
「やたーーーっこれで契約完了ね!これからしっかり働くからっ」
契約できたことが余程嬉しいのかサラマンダーは飛び跳ねて喜んでいる。ポチはそんな様子をほほえましく思いながら魔法についてたずねることにした。
「サラマンダーは魔法何が使えるの?」
「えーと…たくさん色々?」
うん、わからない。
「じゃあ…人間の使う魔法書買ってくるから一度それみてもらえるかな?」
「りょーかいですマスター!あ、あーあれですとりあえず火の魔法です!」
うん、流石にそれはわかるよ…
サラマンダーとの契約を終え今度はノームに魔法を尋ねようとしたとき、部屋の扉がノックされた。返事をかえすと入ってきたのはシルメリアとチサトの2人だった。
「話はついたの?」
「私のスキルの前で隠し事はできないので。ただ…」
恐ろしいスキルだ…
なにやらシルメリアが言いよどんでいる。少し困った顔をしながらポツリポツリと話し出した。
「兄が城からいなくなり、その間の記憶がはっきりしていないみたいなんです。」
『絶対服従』というスキルで、シルメリアが色々質問したようだ。だがその間の記憶がはっきりしていないらしく、聞くたびに違う回答が返ってくるという話だ。
「どーゆーこと?」
軽くため息をつくとシルメリアはチサトに向き合い質問を始めた。
「なんで城からいなくなったの?」
「外の世界で遊びたかったからってさっきも言っただろうが。」
「なんで城からいなくなったの?」
「またその質問か…知らないやつに連れ出されたんだ。」
「…ね?何が本当かわからないのよ。」
たしかに一見違う回答のようにも見える。もしかすると聞き方が悪いせいかもしれない。
「ねえシルメリアその質問の回答はこの2つだけ?」
「んーと…そうねこの質問は2つだけだわ。」
ポチは思いついたことを確認するために紙に書き出す。書きあがった内容をチサトに見せると頷いてくれた。
「え、どうゆうこと?」
その様子を見ていたシルメリアが不思議がっている。ちなみに今チサトに見せたのはこの文章だ。『外へ遊びに出たくて行動したところを何者かにさらわれた。』2つの文章を組み合わせてみたのだ。そしてこれを見たチサトが頷いた。と言うことはこれが真実の可能性もある。
「念のためシルメリアがこの紙の通りか確認してね。」
言われるままシルメリアは紙を見せ真実かどうかの確認を取る。うなずいたところを見ると大体あっているようだ。それにしてもどうしてチサトは全部の説明ができないのだろうか。
そうだ、折角人も鑑定出来るようになったのだから見てみればいいのか。
早速ポチはチサトを鑑定してみることにした。
名前:エルディカート(チサト)・オブ・アリストテレス
性別:男
年齢:20
職業:騎士(王族)(鍛冶士)
状態:短言の呪い
レベル:35
体力:2180/2180
魔力:251/251
力:1231
速さ:110
知力:85
運:56
物理防御力:311
魔法防御力:182
固有スキル:なし
称号:放浪人
状態のところに短言の呪いとあるのが見て取れた。本名はエルディカートというのか…似合わないな。
短言の呪い…長い言葉で会話が出来なくなる。だんだん短くなり最後は一言もしゃべれなくなり、衰退する。
「短言の呪い…これ放置はまずいんじゃ。」
「そうそれ!」
「えっどれ?」
チサトを鑑定したこととそれに書かれていた呪いについてシルメリアに説明をする。それがあれば初めから私のことあわったんじゃとシルメリアに言われたが、使えるようになったばかりだと言うと納得してくれた。
「つまりどういうことなの??」
「このまま家に戻って跡継ぎにはなれないってこと。呪いが解けないとシルメリアが継ぐかその子供が継ぐか…かな?」
「なんでそうなるの…」
「呪いが解けないと自分のことすら守れなくなるんだよ。そんな人が王様になれるわけないだろう?」
シルメリアがその場に座り込んでしまった。関係ないといえば関係ない話なのだろうが、シルメリアの様子を見ていると放置もできない。
「一度全部話しに戻ってみたらどうなの?」
「ああ、やっぱその方がいか…」
「ねえ、ポチ店長もついてきてくれるかな?」
「あーうんいいけど…」
少し気になることもあるしそのことも話しておきたいからいいのだが、また城に行くことになるのは少しだけ気が重いポチだった。
▽▽▽▽▽
次の日いつものように朝が始まる。みんな朝食をすませそこで連絡をする。ただちがうのは朝からチサトがいることだ。どうやらシルメリアにたたき起こされたらしい。だらだらしないでちゃんと働けと言うことだろう。今日は比較的安全なダンジョンの上層に行ってもらうことにした。
開店するとさっそくヨーデラさんがフィリアをつれて来たようだ。少しだけヨーデラさんが嬉しそうである。
「どうかされましたか?」
「いやはや、たった1日教わっただけでこの効果とは驚きましたよ?」
「……?」
一瞬何のことかわからなかったがきっと料理のことだろう。
「早速あの後孫が作ったのですがね、誰も腹痛にならなかったんです!」
「それは…よかったですね?」
そもそも腹痛をおこす料理のほうが逆にすごいと思うんだけどね?
2人をルーナに預けポチも今日の活動に動く。昨日杖を購入したのでぜひ魔法も試してみたいのだ。
「はい!私はたらくよーっ!」
サラマンダーが元気よく一緒にいきたがっているが、却下する。彼女には採取に1人で行ってもらおう。
「なんで!」
「今日も森に行くから火魔法はちょっと…」
「そうね!怒られちゃうわ…採取いってきます!」
誰に怒られるのか気になるが…はやい。もう行っちゃったよ。
そんなサラマンダーを横目にしつつポチもノームとオリオニスの森へやってきた。今日も迷いの森へ行く予定だ。
「今日はだめだな…森の一番奥だ。」
「むぅ…そこまでの間にいる一番強いモンスターのレベルは?」
「…38。いや42か。」
「流石に走り抜けれないか。」
「プルプム草は森全体どこでもあるかな…」
「多少偏りはあるがあるな。」
一応森の中をうろつけば集めることが出来そうだ。魔法の練習をしながらいけるとこまで進むことにしよう。まずはノームの魔法の確認からだ。
「ノームの魔法教えてもらえるかな?」
「ふむ…まずはどのあたりからだ?」
「どのあたり…?」
「攻撃、防御、生産…初級、中級、上級…まあそれより上は使えないが。」
…ん?生産ってなんだ。
「全部聞きたいけど今はまず攻撃と防御の初級かな。」
まず初級攻撃魔法はアースニードルとストーンバレット。
アースニードル…土で出来た針を3発飛ばす。
ストーンバレット…小石を多数飛ばす。攻撃対象とその周辺小範囲。
そして初級防御魔法はストーンウォールとダートスポット。
ストーンウォール…石壁をだす。
ダートスポット…対象の足元に泥の池を作る。
ストーンウォールはポチが作っていた土壁に似ている。まあ土と石だから強度がちがうが。ついでに生産も聞いてみた。
エクシィミート…埋まっている石や砂を取り出す。
グラウンドシェイク…土を混ぜ合わせ畑を作る。
石や砂を取り出す…他のものは出せないのかな?もう一方は畑作り…?まあ畑やりたい人なら嬉しいかもしれないけど今のところは興味ないな…
初級魔法を確認した後は実戦あるのみだが、よく考えたら魔法はどうやって使うのか知らない。
「…ごめんノームどうやって魔法使うの。」
杖を手に取り構えてみたがよくわからないので大人しく聞いてみる。
「普通魔法をスキルとして持っている人は呪文を唱えるだけだが…精霊から魔法を借りるなら精霊に指示をだせばよい。」
「えーと…じゃあ目の前にストーンウォール。」
ノームの目の前にストーンウォールが出た。
「違う…僕の目の前。」
「ふむ、言葉を聞いては中々難しいな…」
「あっ向かってくるウルフォルスにダートスポット。からのアースニードル。」
ウルフォルスの足元が沈みその後アースニードルが命中した。どうやら1撃で倒せたようだ。ダートスポットはいらなかったかもしれない。
「言い間違えたら面倒だな…ノーム小さくなって肩に乗ってくれる?で、杖を指した方向に俺が言った魔法を出す。これでどうかな…」
「試せばいい。」
小さくなったノームが肩のところにちょこんと座り込む。左の草むらから物音がしてラビッチュが顔を出した。すかさず杖を向ける。
「アースニードル」
他に対象がいなかったのでうまく命中した。複数いた場合はどうすればいいだろうか。まあそのとき試せばわかるだろう。
魔法を使ってみたり探検でしとめたりしながら採取も続ける。実力がどうとか言うより往復半日で森の奥まで行こうというのが困難なのかもしれない。森の中ら辺に来ると日傾き始め、薄っすらと空が赤くなってきた。
「うん、これは無理だね。さっさと引き返そうか。」
ポチとノームは来た道を少し急ぎ足で帰宅することにした。
魔法を使ってみてわかったことは、初級魔法なら余程連発しなければ魔力が切れることがない。それと杖で場所指定は少し精度が下がるくらいか…まあこれは範囲魔法を使えば問題ないだろう。
▽▽▽▽▽
店に戻るといつもの閉店前より少しにぎやかな様子だった。
「あ、ポチ君。ちょっといいかな。」
珍しくソーマさんに話しかけられた。何かあったのだろうか。
「どうかしましたか?」
「お客さんがね、もう少し回復量の多いポーションがないかといっててね。とりあえず今はないから錬金術師で作れるものでしたら少しづつ増えてくると思いますので、お待ちくださいと言っておいたよ。」
「あー確か次のレベルに上がったら1つ上のポーションがあったと思います。ちょっと早めに材料確認しておいたほうがいいですかね。」
「もし集められそうならそのほうがいいかもしれないね。」
「わかりました。明日にでも採取場所の確認してみます。」
ソーマさんの報告を受けると今度は家のほうに周り食堂へ顔を出した。昨日と同じくフィリアが作った料理をチサトが味見をしたみたいだ。机に伏せているが意識はあるようだ。今日はアルタとエルザはいない。
「今日はどうだったのかな…というかチサトまた味見したんだね。」
「おぅ…命令にさからえねぇ…」
なるほど。シルメリアに言われたのか…それはしかたないね。
「ん、約束…」
目の前にフィリアの料理が置かれた。たしかに昨日約束したが、チサトの様子を、見ると食べるのをためらってしまう。
「ルーナ。材料と調味料。それと調理方法教えて。」
一口だけ味を見てルーナに確認を取る。材料調味料調理方法どれをとってもいたって普通だ。どうしてこんな味になったのかわからない。チラリとフィリアのほうを見ると首をかしげている。
あーそうか鑑定してみるか。
名前:フィリア・レイラント
性別:女
年齢:9
職業:商人(
レベル:2
体力:20
魔力:30/30
力:25
速さ:30
知力:60
運:-30
物理防御力:15
魔法防御力:30
固有スキル:
称号:不運を持って生まれたもの
なんだこれは…商人でありながら戦うメイドさん…?ま、まあそれはいいとして、運がやたらと低いんだがもしかしたらこれが原因じゃないのか…
またしても部屋の隅でうたたねをしていたヨーデラさんを起こしフィリアのステータスについて話してみた。
「運が低い…ですと??」
10歳にまだなっていないフィリアはステータスプレートを発行していないらしく、知らなかったようだ。
「ええ、鑑定したところ運が-30です。なのでもしかしたらこれがせめて1になれば普通に料理できるようになるのでは…と。」
「たしかにありえますな…だが、我が家では誰もレベル上げにはつれてってやれないからな…」
「では明日のダンジョンへの採取に連れて行きましょうか?地下1階だけなら多分入らせてもらえるので。」
「でもご迷惑では…」
「そうでもないですよ、一緒にスライム倒して薬草を集めますので。」
そういうとヨーデラさんは少し申し訳なさそうにしながら「よろしくお願いします。」と頭を下げてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます