第23話 こんな休日もある…のか?
店から戻ると2人の様子がおかしいことにすぐに気がつかれた。それもそのはず…そもそもシルメリアが耳と尻尾をつけるのを忘れていたのだ。まあお互いそんなことにまで気が回らなかったわけです。そのためシルメリアの事情について説明をすることになった。
「結婚か…王族は大変ね。」
「ねえ…ちょーっと気になることがあるんだけど。その辺のことはなそっか…女の子だけで。」
シルメリアは半分エリザに引きずられるように連れて行かれた。それにアルタとエレノアもついていく。
「えーと…行って来ます?」
「うん…」
食事の準備でルーナとスフィアは厨房にいて、今食堂にはポチとソーマの2人だけだ。
「あー…そうだ。ソーマさんどうでした?」
「ん…ああ、6日もあれば直るそうだよ。」
「6日ですか。少しさびしくなりますね。」
ソーマの宿の修理が6日で終わるらしい。それまでの間に販売従業員を補充しなくてはいけない。それに今のところシルメリアもここにいるが、いずれ帰ることになるだろう。
「おーい。ポチいるか~」
外から呼ばれている。そういえば今日からチサトが来ることになっていた。いろいろあって少し忘れていたのは黙っておこう。
「いらっしゃい。よろしくねチサト。」
チサトを家に招きいれ、まずは部屋に案内することにした。
▽▽▽▽▽
そのころシルメリア達は4人でお風呂に来ていた。
「もう尻尾隠さないでいいし、みんなで入れるわね。」
「あーそっか…それでまだ一緒に入ったことなかったんだね~」
エリザの言葉にエレノアがやっと気がついたらしく頷いている。
「はいっ皆さんともっと仲良く慣れたらうれしいです!」
服を脱ぐと各自風呂場へと入っていく。先に向かっていたアルタはすでに湯船の中だ。
「…王女様って呼んだほうがいいのかしら?」
「あっそれはだめです!一応これからも店に出るときは耳と尻尾つけますし。」
「そうなんだね~」
「そんなことはどうでもいいの。」
掛け湯をしていたシルメリアに背後からエルザが詰め寄る。
「変よね…」
「何がですか?」
「結婚の話とりあえずなくなったんでしょう?」
「はいっポチ店長のおかげです!」
シルメリアの言葉にますます不思議そうな顔をしてエルザが首を傾げた。
「だから、それ、よ。たとえば「この人と結婚します。」とポチを連れて行ったところで、あきらめるわけないでしょうが…」
アルタとエレノアはエルザが何を言いたいのかまったくわからない。
「んー…ポチのよさに気がついたとか?」
「初めて会っただけで何がわかるのよ…アルタは馬鹿なの?」
「ばっ…酷い…」
エルザの視線がシルメリアを見つめる。見る見るうちにシルメリアの顔が赤くなる。
「えっと…その…実は……」
そのときの城でのやり取りをシルメリアは話した。お風呂でばったり会ったことだ。
「あーなるほど…確かに王族ならそれも通るのか…」
「そういうものなの?」
「王族とか関係なくやっぱ結婚相手とかじゃないと、私も見られるのはいやかな~」
「あら、そんなこといってたら女の武器が役に立たないじゃない。」
「…エルザは武器になるような体してな…」
「何か言った?」
「いえ…」
さらにエルザはシルメリアをじっと見つめる。
「ねえ、それでポチと結婚するの?」
「「えっ?」」
ずばりというエルザの発言にシルメリアがうろたえ始める。自分でもそのあたりの気持ちとかがはっきりとしていないのだろう。顔を赤らめもじもじとしながらもシルメリアはどうにか口を開いた。
「あ…う…私、ポチ店長のこと好きなのかな?」
「…聞かれても知らないわよ。」
「…うん。でも……してもいやじゃなかったし…」
「は…?」
肝心なところが聞き取れず、エルザが聞きなおす。
「何をしたって??」
「私…ポチ店長と……キスしちゃいました!!」
シルメリアは両手で顔を覆いうずくまる。その告白に3人の動きはかたまってしまったように止まった。
▽▽▽▽▽
チサトを部屋に案内すると早速家の中も案内しろと言われ、今ポチとチサトは廊下を歩いている。案内するほど大きな家でもないのだが、まあ人の部屋とか勝手に入られるよりはましだからだ。
「ふむ…2階は全部個室ってことか。」
「うん、だからちゃんと用があったらノックしてね。」
2階の案内が終わると1階へ降りてきた。1階は店舗部分もあるためまずはそっちから案内する。
「この扉から店に入れるよ。」
扉をあけ店舗へと進む。倉庫への扉、従業員用の扉それと店の入り口と3箇所の扉を説明する。
「まあ採取だけだからここにくることはあまりないかもだけど一応ね。あー朝俺に会えなかったらこっちで聞いてみて。一応毎朝みんなの予定を話してから動いてるから、その場にチサトがいなくても誰かが教えてくれるはずだから。後で採取リスト作って渡すね。」
「あーそうか、毎回同じものを採取するとは限らないわけか…なるほど。」
「うん、在庫状況を見ながらある程度はね。多分明日はみんな森へ行くことになるよ。」
ステータス増加剤の材料であるプルポム草の補充をするためだ。スライム玉もいるのだが、これはスライム系を狩ると必ずといっていいほど出るので、すでに在庫過多。無理に集める必要がなかった。
店舗の紹介が終わると、すでに行っている食堂、そのすぐ隣の厨房を案内する。
「あれ、スフィア…ルーナは?」
「今は別の仕事へ…たぶん、すぐ戻りますよ?」
…まあいいか。別に用があるわけじゃない。
後はポチの仕事部屋だがここは別に見せるものもない。一応場所だけ教えておく。
「こんなもんかな…あーあとお風呂があるよ。」
「お…風呂いいね!」
以外だ…チサトはお風呂が好きなのか。ぱっとみじゃわからんもんだな…
「なあ、今からでも入れるのか?」
「あーうん。一応いつでも入れるようにはなってるけど…」
「うし…ちょっと準備してくるわ。ポチ先行っててくれよ。」
ん…?一緒に入ろうってことか。まあ基本荷物は持ちっぱなしだからいつでもどこでもいけますけども…まあ…若い男が一緒に入っていればルーナも流石に入ってこない…のか?
扉を開け中に入ると、すでにルーナがいた。
「主様お風呂ですか?」
「あーうん。」
「………ごゆっくり?」
あれ…目の前にいるのについてこようとしない。まあついてこないならそれはそれでいいのだけど。何か逆に不気味だ。首を傾げていたのも気になる…
ルーナの行動が気にはなるが、ポチは服を脱ぐとタオルを1枚もって風呂場への扉を開けた。中にを見ると人影が見えた。湯気で少し見にくくなっている。
「ん…ソーマさん?…あれ……」
よく見ると人影は数人いた。扉を開けたことによりすこしづつ湯気がはれ、それがシルメリア達だと気がついたころには遅かった。4人は会話もしていなかったのでポチはまったく気がつかなかったのだ。
「わーーーーーーーーーっ」
ポチはあわてて中へ戻ると服を着込み廊下へと飛び出した。
ええーっ4人が入ってるなんて知らなかったよ…っというかルーナ知ってたなら教えてくれてもよかったのに……
「あれ…風呂いかないのか?」
そこへ丁度戻ってきたチサトが現れた。その背後にはルーナも一緒にいるようだ。
「え…ああうん。今女の子達が入ってるみたいなんだ、だから食事が先だねっ…ルーナそろそろ出来るかい?」
「はい、それで声を掛けにきました。」
「うおっ裏にいたのか気がつかなかった…じゃあ後にするわ。」
ポチとチサトそれとルーナは食堂へ向かうため進行方向を変えた。すぐ後ろを歩くルーナがじっとこちらを眺めている。
「てっきり4人に洗ってもらうのか…」
「うわあ…わざとかっルーナわざとだろうっ?」
「ナンノコトカサッパリ…」
ちょと泣きたい気分だ。後のことを考えると恐ろしい…
食堂に行くとすでにソーマさんは座っていた。もしかするとずっとそこにいたのかもしれない。ポチとチサトも開いている椅子へ座る。少しするとお風呂に行ってた4人も食堂に現れた。お風呂上りのせいかさっきの状況のせいかわからないが赤みがかった頬をしている。
全員そろったところでテーブルの上にルーナとスフィアが作った料理が並べられ、食事が始まった。
「…なあポチ。いつもこんな静かなのか…?」
「いや…そんなことはないんだけど…」
どう見ても女性達の様子がおかしい。こっちを見るわけでもなく、お風呂のことを怒るわけでもない。ただもくもくと食事をしている。真っ先に食べ終わったエレノアがチラリとこっちを見ると、真っ赤な顔をして走って出て行った。その後アルタもシルメリアも顔を赤くして逃げるように出て行った。最後に食事を終えたエルザもポチの方を見ると少しだけ赤い顔をし、視線を少し下にずらした。
「ふふ…っ」
少しだけ笑うとエルザも食堂を後にした。
食事が終わるとポチはチサトとお風呂へ行った。流石に今日はルーナは現れなかった。お風呂が終わり、今は倉庫の在庫確認をしている。明日の採取先を決めるためだ。今日は休みで誰も採取をしていないので『調合』は必要ない。
「やっぱステータス増加剤の材料がメインかな…他がおまけ程度でいいか…」
在庫確認が終わるとポチは自分の部屋に戻ってきた。ベッドに横になり、天井を眺める。
……なんか色々ありすぎだろ。
昼間のこと、帰ってからのこと…思い出すとポチはベッドの上で転げまわった。思い出したらいけないと思いつつ印象が強すぎて簡単に忘れられない。
シルメリアが一番お…
コンコン
扉がノックされ叫びかけたのを飲み込み、ポチは深呼吸をしてから返事をした。
「ど、どうぞ?」
こんな時間に誰だろうか。返事を返すがすぐに扉が開く様子がない。首をかしげ扉を眺めていると、ゆっくりと開き4人の女の子達が入ってきた。顔を赤らめ少しもじもじとしている。その中でエルザが1人前に出た。
「ポチ…単刀直入にいうわ。」
「う…うん?」
「……責任とって結婚しなさいよ!!」
「………」
「「「……」」」
「結婚?」
「「「えええええええ~~~~~っ」」」
エルザの言葉に3人は一斉に大声を上げた。
「ちょ…ちょっと。あんた色仕掛けがどうとか行ってたくせに一番気にしてるじゃないのっ」
「ううう…うるさーいっ大丈夫だと思ったけど、やっぱだめだったのよっ」
「あの、2人ともそもそもシルメリアさんのこと言いにきたはずでしょ?」
もうぐだぐだである。言い合うアルタとエルザをエレノアが一生懸命止めようとしている。
「3人とも落ちついてー!」
シルメリアの大きな声に3人はピタリととまった。
「えーと…みんなで話してたんだけど。やっぱり肌を見せるのは結婚する相手じゃないと…と。その話をしてたらポチさんがお風呂に来ちゃってこんなことに…」
「話は…わかったけど。それだけで決めちゃっていいの?」
ポチはいまいち今の状況についていけないが、一応抵抗をしてみる。嬉しくないわけではないのだが、こんな理由で結婚を決められてはたまらない。
「わっ…私はきっかけはこんなのだけどっポチ店長のことが気になるんですっいや…じゃなかったしむしろ…っ」
真っ赤な顔をしながらシルメリアが一生懸命話してくる。その様子を眺めていたほかの3人はお互い顔を見合すと少し顔を赤らめた。
「ねえポチ…別に私達を嫌いじゃないだろ?」
「え、うん…」
「だったらポチが私達をす、好きになれなかったらあきらめるから…少しでもそういった対象としてみてくれるとうれしい…」
「…でも結局結婚は無理って言ったらどうするんだ?」
4人は少し考え込む。
「「「修道女になる…とか?」」」
「それは後味悪い…」
「私は…あきらめませんっ」
シルメリアはポチを見つめあきらめる気がないと宣言する。
「まあ見ちゃったら気になるよね…お互い…」
「お互い…?」
4人の視線はチラリとポチの下半身へ向いている。それに気がついたポチは顔が熱くなるのを感じた。
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