第20話 開店2日目
初日の売り上げは金貨12枚強だった。最初10日に一度の給料にする予定だったが、お金の管理をする経理担当がいないことに気がついた。ひとまずお金は全額ルーナに預かってもらうとして給料は日払いで記録をつけることとした。
「そのうち経理担当を雇うからそれまで日払いでお金わたすね。…ということで本日分みんな受け取ってね。」
「「「「「ありがとうございますー」」」」」
「ちょっと多いのか少ないのかわからないんだけど…」
「十分すぎるとおもいますよ。」
「部屋と食事、後お風呂もついてこれだけもらえたら…ねえ?」
「ラッキー、です。」
「残りのお金はみんなの食費とこの家の支払いにあてるね。」
店を閉め給料を渡し終えたので各自自由に活動を始めた。食事の時間まではそれほど時間があるわけではないのでほとんどの人が食堂で会話に花をさかせている。
ポチはシルメリアを連れて倉庫へやってきた。
「えーと…?」
「折角錬金術使えるんだし、少し手伝ってもらおうかなと。」
「あーなるほどです!でも私…調合は1なんですが…」
「ポーションと解毒剤後痛み止めが作れるね。じゃあその3つは任せちゃおうかな。僕はそれ以外の調合をやるね。これならシルメリアも調合のレベル上がるしいいんじゃないかな。」
「わかりましたやってみますねっ」
2人はそれぞれ調合を始める。倉庫扉の影からその様子をじっとルーナが見つめていたが気にしない。
へんだな…食事を作ってたはずなんだけどね。あれか、スフィアに任せてサボっているとか?もしそうなら後でしかっておこう。
「こんな感じでいいですか?」
「うん、全然出来てるね。じゃあ次はまとめて作るやり方を…」
それなりに楽しそうにシルメリアは調合をがんばってくれた。
「ところでシルメリアはメインの職業は何なの?」
「え…っえ~と…ちょっとこっちは人に言えない職業なんで…」
人に言えない職業…?そんなもの職業適性調べた時に見たかな…覚えてないな。
「そんなのあるんだね?」
「はい…えーと、家についてきてもらった後なら教えてもいいです。」
「?」
家と関係がある職業…?盗賊とか??いや、まさかそれはないか…盗賊といってもその技能を使えるだけで職に就く必要もないしな。
食事を終え再び各自自由に活動を始める。今日は調合が先に終わったので1番風呂にポチは向かった。
今日は珍しくソーマさんを誘って入ることにした。あれだ、ルーナ対策だ。流石に他の人がいたら入ってこないだろうという狙いだ。
「ソーマさん今日は店どうでした?」
「販売業も悪くないねー。」
「やはり宿とは仕事内容が違いますから、なれないと思いますがしばらくよろしくお願いします。」
「お願いするのはこっちだよ。あんなに給料貰ったら宿の修理費もすぐ溜まるよ。」
どうやらソーマさんは宿の修理費は自分の分から払うそうだ。娘には迷惑をかけられないらしい。いい父親だなーと思う。そんなことを考えていると、
バンッ
扉が勢いよく開きルーナが風呂場に入ってきた。
「主様はあまあまなのです…精霊が他人がいようが恥ずかしがるわけもなく…」
「……」
「…やはり精霊はみんな人形みたいな体だね~」
「ソーマ様は大人なのですっ」
結局そのままつかまりもみくちゃにされた。
「大人しく洗われれば問題ないだろうに…」
「いや、それもちょっと…」
うん、ルーナじゃないけどソーマさんは普通に大人だな…
▽▽▽▽▽
朝、いつものようにみんなが食堂に集まり、今日の予定を食事をしながら話す。
「今日はソーマさんシルメリアは固定の販売を、でエレノアも今日は販売について欲しい。アルタとエルザはダンジョンの地下1階と地下2階で採取作業を。それで俺は商人ギルドで経理担当と販売員、あと採取担当それぞれ各1名の募集に行ってくるね。」
「え、3人も増やすんですか?」
「うん、休み明けから来てもらえる人を増やしておくんだ。ソーマさん、3日の給料で宿の修理費のめどがたつんじゃないですか?」
みんながいっせいにソーマのほうに視線を向けた。なぜかエレノアは少し残念そうな顔をしている。
「はい、そうです。休み明けには修理に入れそうです。」
「修理が終わらない限り宿は再開出来ませんけど、その間に新人を入れて教え込もうと思ってね。で、募集を出し終わったら俺はノームと森へ行ってくるよ。」
「森…?」
「休み明けから新しい薬置けたらいいなーと材料を探しに。」
食事も終わりそれぞれが今日の予定のために動き出す。ポチは商人ギルドへ向かう予定だ。
「あ、そうだチサトに声をかけておくかな。」
隣の宿へ入り従業員に声をかけ、チサトは出かけたかどうかたずねる。話を聞いてみるとまだ今日は起きていないらしい。らしいと言うのは1階に顔を出していないからだそうだ。ポチはどうしようかとその場で少し考え込む。
「あれ~ポチじゃないか。」
「あ、おはようございます。」
丁度そこへチサトが2階から降りてきた。どうやら今から食事のようだ。チサトがついたテーブルに一緒に座り話を持ちかけた。
「へー従業員募集するんだ。」
「うん、それで経理と販売員と採取担当をそれぞれ1名募集しようと思ってね。チサトはどうかなと声かけに来たんだ。」
「従業員だろ?時間とか厳しくないか…朝起きるの遅めだしなぁ~」
「採取担当なら問題ないよ?」
「…その辺もう少し詳しく。」
多少起きるのが遅くてもその人採取の予定に参加してもらい、遅れた分稼いでくれればいいという話をした。
「このくらいなら起きてるんでしょ?」
「まあな。」
「じゃあ大丈夫だよ。ついさっき店を開けてきたんだけど、それを確認してから採取組みも出発したし。それに毎日全部の時間採取するわけじゃないからね。」
「なるほど、じゃあ俺も参加させてもらうかな。いつからがいい?」
「あ、この宿はどうする?こっち住み込みも出来るけど。」
「おっじゃあ世話になるかな!」
「それじゃあ…3日後の夕方からこっちに住んでもらおうかな。で、その次の日から採取に参加をお願い。」
チサトが採取担当に来てくれることになった。これでギルドで募集するのは残り2つになったわけだ。
商人ギルドの中に入りカウンターで募集のお願いを出してくる。
「ある程度店のほうが落ち着きましたら販売状況などの報告をお願いします。」
「それって今募集に出した経理の人が話しに来ればいいですかね?」
「はい、それで大丈夫です。」
さて、ここでの仕事も終わったし今からノームとオリオニスの森へいくぞっ
森に着くとこの間と同じようにノームにエルフの里の入り口を探してもらう。少し待つとノームが目を開いた。
「これは運がいいな。少し西に行ったところにあるな。」
「つまり…西に向かえば取り合えず迷いの森…でいいのかな?」
「そうだね。」
西に進路を向けて2人は歩き出した。それほど歩かないうちにあたりは薄っすらと霧が立ち込めだした。
「迷いの森だな。」
「お…じゃあヌグル草とグルルム草を探そうかな。」
うーん…名前のわからない草が一杯あるな。
一番近くにある草を鑑定してみる。読めない文字が表示された。
「ノームこれは何?鑑定しても読めないんだけど…」
「エルフ言語だな。エルフの扱うハーブだ。我々では理解出来ない代物だ。」
なるほど…しかも鑑定したら当たり一面そのハーブだらけだった。まだところどころ名前がわからないものがあるからそれを鑑定していこう。
「発見。」
名前:グルルム草
レベル:3
属性タイプ:土
アイテム:グルルム草
説明:薬の材料になる。
でも爆弾のほうの材料なんだよね。爆弾は販売するわけにはいかないからな…でもこれで鑑定されていない草のほうが増えたからよしとしよう。爆弾は作ったら後で試してみるかな。まずは誰もいないところで…
小範囲と言うものがどのくらいの範囲なのかわからないからいきなり使うことができないのだ。
「やっぱりハーブが多いな~でも見つかってよかった。」
名前:ヌグル草
レベル:3
属性タイプ:土
アイテム:ヌグル草
説明:薬の材料になる。
これでやっと集められる。
ノームにも採取を頼み2人でヌグル草、グルルム草、プルポム草、の採取をする。それほど多くはないが、ぼちぼち集めれそうだ。
「あ…れ?」
モンスターに遭遇しなかったのをいいことに採取に夢中になりすぎた。気がつくと霧が晴れ、門の前に立っている。
「ここは…もしかしてエルフの里とか?」
ノームは来ていなかった。どうやらポチ1人だけ移動しすぎたようだ。門を見ると何か書かれているが文字は読めない。どことなくさっき鑑定した草と似た文字だ。
「※※※※※※?」
「……」
やばい何いってるかわからない。エレノアやソーマさんとは普通に話せるのに…あれかこっちの言語にあわせてくれてるのか。
門のところにエルフがあわられてさっきから何か話しかけてきているようだが、ポチにはまったくわからなかった。
そうだ、エレノアに借りたペンダントだっ
ストレージからペンダントを取り出し首にかける。たしかエレノアが身に着けてといっていたからだ。
「ねえ、聞いてる?あなたは迷い人なの??」
「あ、そっかこれ通訳してくれるものなのか。」
「あらそれ…なるほど、言葉がわからなかったのね。では、改めましてエルフの里へようこそ。」
彼女はユミリアと名乗った。このエルフの里の住人で、たまに訪れる迷い人を案内したり元の場所へ帰したりしているらしい。
「えーと…ポチ?じゃああなたはここに用があるわけじゃないのね。」
「うん、ヌグル草とグルルム草を迷いの森で採取してたらここについてしまったんだ。」
「あーなるほどね~その2つならこの里にたくさんあるわよ。特にヌグル草とかは育ててるくらいだもの。」
「育ててるの…?」
「ええ、迷いの森にある霧はヌグル草を利用してエルフの里に着きにくくしているのよ。使い方は秘密だけど。」
なるほど、エルフならではの使い道があるんだな~
ポチは感心した。
「えーとそのヌグル草って分けてもらえたりしますか?」
「もちろん…と言いたいところなんだけど…ただじゃないのよ。」
「高いんですか?」
「んー…高くもあり安くもあるというか、お金じゃないんだ。」
「???」
さっぱりわからん…
「簡単にいうとここの長老様と仲良くなればいいのよ。」
なるほど…仲良くなるための手段と言うわけか。たしかにプレゼントとか繰り返したら高くなる。だけどそれじゃあきっとだめなんだろうな…
「じゃあこうします。まずは会ってみます。それでヌグル草はまた迷いの森に取りに来るから、そのときここにたどり着いたらまた顔を出したいと思います。」
「あーつまり土産話ってところね。外のことを教えてもらえるとか長老が少しうらやましいわ。」
「…あれ、エルフって外にいかないんですか?俺の住んでる町ですでに4人見ましたけど…」
「基本理由がないと出て行かないわね…」
つまりあの一家はなにかしら理由があって里の外に出ているってことなのか…
この後長老に軽く挨拶と自己紹介をして、また来たときに顔を出す約束をしてエルフの里から外へ出た。
「あ、お帰り?エルフの里にでもいっちゃたのか?」
「うん、進みすぎちゃったみたいだね。少し里の人と会話してきたよ。さて、もう少し集めたら帰ろうか。」
店が閉まる前に森を出て町まで戻った。早朝からダンジョンに行く人たちが店が閉まる前に買い物に来るのでその手伝いだ。従業員用の出入り口から中に入ると閉店前の駆け込みのお客さんが結構来ていた。ダンジョンから戻ってきていたアルタとエルザも手伝ってくれている。
さて、俺は何しようかな…先に少し調合やっているか。新しい薬を試してみようか。
『調合』で不可視薬、雲集薬、爆弾Sをそれぞれ作る。材料あるだけで出来るだけ作り棚に置いておく。それを数本ストレージにしまった。明日少し効果を試してからさらに数を作るためだ。
もう一度店へ顔を出すと人がひいて店を閉めるところだった。本日の売り上げは昨日よりも多く金貨15枚強で、同じく金貨1枚ずつ給料として渡した。
その後はいつもの流れとさほど変わらず…夜は更けていった。
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