第17話 開店準備2
新しい従業員になるシルメリアを加えて、内装や販売方法について話し合った結果、商品は一度手にとって確認できたほうがよいという話になった。錬金術で作れる薬はそれほど多くなく、最大レベルになってもこの狭い店でも並べることが可能だからだ。それに盗難対策ついてはもともと問題がないことが発覚した。精霊が家の管理をそもそもしているので、ルーナが「そんなの見つけたら外にだしません!」とのことだった。ルーナは店も含め家の中の様子がすべてわかるそうだ。
「とりあえず今必要な棚は…2つでいいかな?」
「4つがいいと思います!こう…入り口から入って左右の壁に1つづつ。」
「ああ、なるほど両側に客を分散するんだね。」
「はい、同じ並びで2箇所並べると商品を見ることが出来る人が増えますので!」
なるほど、たしかに1箇所だと見れる人が少なくなるな。
シルメリアのアイデアに賛同して棚のことは決まった。後は販売価格と仕事の流れについての確認だ。今ポチが作れる薬を1つづつカウンターのところに取り出す。
・ポーション…体力を10%ほど回復する。
・毒消し薬…毒状態を解除する。
・痛み止め薬…命にかかわらない程度の痛みを止める。
・ステータス増加剤S…全ステータスを半日ほど2倍にする。効果は重複しない。
・魔力ポーション…魔力を10%回復する。
・体活剤…体力を半日かけて30%ほど徐々に回復する。
・魔活剤…魔力を半日かけて30%ほど徐々に回復する。
・体魔力ポーション…体力と魔力を20%回復する。
・ポーション+…体力を20%回復する。
・魔力ポーション+…魔力を20%回復する。
・ステータス増強剤S+…全ステータスを半日ほど3倍にする。効果は重複しない。
「結構種類ありますね。」
「ポチくんまじめに錬金術やってたんだね。」
「ソーマさん…俺元から錬金術くらいしか出来なんだけど。」
「狩りばかり行ってたからあまり作ってないかと思ったんだよね。」
少しばかりポチは納得できない顔をしつつ会話をつづけた。
「あと、材料がなくて出来ないのが2つ。」
・不可視薬…半日ほど自分よりレベルの低いモンスターから見つからなくなる。
・雲集薬…半日ほど飲んだ人の傍にモンスターが寄ってくる。
「まあこの2つは安定して材料が手に入るようになるまで保留だね。最悪売らなくてもいいかも?」
「となると…11個の薬の値段をつけるんだね。」
一度ソーマさんがまとめてくれた相場を取り出し確認する。これを参考にポチの店の薬の値段を決めるのだ。
販売薬一覧
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・ポーション…銅貨5枚、銅貨4枚
・毒消し薬…銅貨3枚
・痛み止め薬…銅貨4枚、銅貨3枚
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「3種類しかわかっていないんですね…」
「うん、あソーマさん。この3種類なんですがぼちぼち売れてそうでした?」
「店で確認している間に買って行くお客さんはいましたよ。」
「一応売れるんだね…」
「あの…この金額、少し高くないですか?」
「そうなの?」
「はい、多分ですがギルドにアイテムを集める依頼でも出してそれで作って売ってるんじゃないですかね?この店の薬は元手0。少し安めに設定してたくさん売ったほうがいいかもです。」
たしかギルドでポーションの買取が銅貨2枚…ベルペル草20個は銀貨1枚だったはず。なるほど、買い取ったお金も考えての金額設定だったのか…
「じゃあこの店ではそれをなくした金額で設定したほうがよさそうだね。」
順番に一度金額を書き出してみる。相場が調べられなかったものについては、入手場所と薬の効果である程度決めることにした。
・ポーション…銅貨3枚
・毒消し薬…銅貨2枚
・痛み止め薬…銅貨2枚
・ステータス増加剤S…銀貨1枚
・魔力ポーション…銅貨8枚
・体活剤…銀貨1枚銅貨2枚
・魔活剤…銀貨2枚
・体魔力ポーション…銀貨1枚
・ポーション+…銅貨5枚
・魔力ポーション+…銀貨1枚銅貨5枚
・ステータス増強剤S+…銀貨3枚
「こんなところかな…」
「一部高めに見えます…」
「うん、今のところ森の採取でしか取れていない材料のものが高めかな~効果もいいものだし。」
「では最初はこれでやってみましょうか…店長?」
「……店長?」
「店長じゃないんですか!」
呼ばれて気がついたけど俺店長?いや…店長なのか。
どことなく照れくさいような慣れない言葉にポチは困った顔をした。
「えーと…ポチでいいよ?」
「ポチ店長ですね、ポチ店長!」
「……あーうん。じゃあそれで…」
気を取り直し店の販売の流れを確認する。お客さんが店にきて商品を選び、カウンターにもってきたものの金額を計算しお金を受け取り商品を渡す。よくある販売方式だ。どうやら販売方法は問題がなかったようでシルメリアは黙って頷いていた。
「1ついいですか?」
「ん?」
「カウンターまで数たくさんはもっていけませんけど…これはどうするのですか?」
「シルメリアの家ではどうやってたの?」
「蓋のない木箱を店の入り口においていました。そこに商品を入れてもらってもってきてもらいましたよー」
なるほど、買い物籠ってことか…
「じゃあ棚と木箱を用意することにしようか。」
「それは私がなんとかしようか。知り合いにでも頼んでくるよ。予算はどうする?」
「んー…木箱の質は問わないよ。数は…多いと邪魔になるから30で。棚は薬瓶が並べられる高さのものをお願いします。えーと…これだけあれば足りるかな?」
ポチはおもむろにストレージから金貨を5枚取り出した。
「ちょっこれは多すぎます!」
「そうなの?」
「金貨は1枚もあれば十分足ります!」
4枚返却されてしまった…
棚と木箱をソーマさんにお願いしてシルメリアに家を案内することにした。一度店の表にでてから家側の入り口から中に入る。他のみんなに案内したときと同じようにルーナに案内を任せる。ポチはそれに一緒についていくだけだ。
「ふへぇ~お風呂いいですね!」
どうやらシルメリアはお風呂に興味があるようだ。目を輝かせ中をうろうろとしている。
「あ、温かい…もしかしていつでも入れるの?」
「はい、いつでも自由にお入りください。でも主様が優先です。」
その言葉を聴くとシルメリアはチラリとこちらに視線を向けた。今からでも入りたそうな感じだ。
「仕事中じゃないときならいつでも入っていいよ。」
「ありがとうございます!」
まだ部屋に案内していないので、名残惜しそうにお風呂を見ているシルメリアを半ば引きずりながら2階へと上がった。
部屋はすでに5部屋使用中なのであいている3部屋から選んでもらった。部屋も決まったことなので、シルメリアは荷物を取りに戻ると言って一度どこかへ帰って行った。
「さて、俺も採取に参加してくるかな。」
フヌウ草はダンジョンだと聞いていたので、他の2つヌグル草とグルルム草の入手場所を確認しに冒険者ギルドへやってきた。カウンターでたずねようと向かうといつものギルド職員が立っていた。
「あら、ポチさん依頼ですか?」
「いえー採取場所を教えてもらおうかと。フヌウ草とグルルム草なんですけど。」
「あーその2つね…ちょっと待ってね。」
ギルド職員の女性は紙の束を取り出しぺらぺらとめくりだした。どうやら採取場所のリストのようだ。
「あ、ありました。んー…オリオニスの森みたいだけど…詳しい場所は書かれてないですね。どうしてかしら。ちょっとマスターに聞いてくるので、ここで待っててくださいね。」
職員は奥に聞きに行ってしまった。
どういうことだろう?採取された記録はあるけど場所がわからないというのは…
ポチは考えてきたが何も思いつかず、ギルド職員がギルドマスターを連れて戻るまでしばらく唸り続けた。
「なんだ、おまえさんか…誰がこんなの欲しがるかと思えば。」
ポチは頭を下げ挨拶をした。
「どこで手に入りますか?」
「あー…これな~ちいとばかし厳しいかもだけどいいか?」
「はい、取りに行くかは後で考えますけど、場所聞いてから。」
「じゃあ言うが…オリオニスの森の中にあるエルフの里、その道中に人を迷わせる場所があるんだ。」
「つまり…その迷わせる場所のどこかってことですか?」
「そういうこった。ちなみにエルフの里の場所はしらん。」
…ん?今なんて。
「どういうことですか?」
「そのままの意味だ。聞いた話だがな、森に入ってすぐ知らない場所に出たかと思うと、エルフの里についた人、奥のほうで迷ったらついた人もいたそうだ。」
「つまり…エルフの里がどこから行けるかがはっきりしない…ということか。」
「まあそういうこった。」
お礼をいいギルドから出ると、めずらしくノームのほうから話しかけてきた。
「エルフの里、あそこは魔力が溢れていてとてもいい場所だ。」
「ふーん、ノームは行った事があるんだね。」
「もちろんだ、精霊で行った事がない者などいないはず。」
「……もしかしてノームエルフの里行けたりする?」
「無論だ。行きたいのか?」
「うん。」
むしろその途中が。
「では、エルフの誰かに許可を貰ってくれ。人は許可無しで入ると面倒なことになる。」
エルフの誰かか…ソーマさんはどこにいるかわからないからエレノアかな。たしかダンジョンの3階にむかったはずだ。まだいるならだが。一度行ってみるか。
◇◇◇ レアス地下3階 ◇◇◇
魔石に触れ地下2階に移動した後そこから1つ下り地下3階へとやってきた。初めて足を踏み入れる場所だ。少し警戒しながら足を進める。ポチがいる場所から少し先にモンスターがかたまっているのを発見。
名前:レイス
レベル:16
属性タイプ:霊属性、悪魔
アイテム:レイスの布きれ、フヌウ草、痛み止め薬、レイスのぬいぐるみ、属性『霊1』
レイスは新しいモンスターだな…あとはグールとスケルトンか。
気づかれない距離から確認をすると、とりあえず火炎瓶を投げつけてみた。レイス以外は全部倒れたようだ。近づいてきたレイスにナイフで対応をする。腕を振りぬくと何も手ごたえがない。
「あれ…?」
再びレイスにナイフを振るとレイスの体を素通りした。
「もしかして霊属性は当てられない…?」
レイスもこちらに寄ってくるだけで攻撃すらしてこない。先ほど鑑定で確認したとき確かにドロップアイテムの表示があった。ということは倒す方法はあるということだ。再び火炎瓶を投げてみる。するとレイスはあっさり倒れた。
「属性がいるってことかな…たしかナイフは属性がなかったし。」
レイスが落としたアイテムを拾う。少しめまいがした。
「……?」
ステータスを確認すると体力が減っていた。レイスから攻撃を受けた覚えがない。不思議に思いステータスを確認しながらレイスに近寄ってみると、ゆっくりと数字が減るのを確認した。
「やばっ…」
あわてて火炎瓶でレイスを処理し、ポーションを飲む。ポチの体力の最大値は現在138。それが先ほど98にまで減っていた。レイスは近寄るだけで危険なモンスターだったのだ。
「初めてポーションの味を体験したわ…栄養ドリンクみたいだな。」
3階は長く狩れる狩場ではなさそうだな…
◇◇◇ レアス地下1階 ◇◇◇
1階に戻るとすぐボス部屋のところに3人がいた。最初にポチに気がついたのはアルタだった。
「あ、ポチ。そっちの仕事は終わったの?」
「うん、きりがついてね。それでエレノア、エルフの里への許可が欲しいんだけど。」
「エルフの里かーちょっとまってね。」
エレノアはストレージから1つのペンダントを取り出した。
「はい、これ付けてって。」
「これは?」
「エルフの里で作られているものだよ。それを見せれば問題ないと思う。」
編まれた紐の先に緑色の石がついていた。
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