第13話 精霊付き

 ダンジョンから戻ると今日は帰るのが早かったので食事の時間はまだ先であった。その空いた時間で今日の荷物整理をする。帰る前にギルドによって分配はしたのだが、調合に使いたいものを買い取ったのでたいしてお金にはならなかったが新しいアイテム、ポンポン草とボンボン草を手に入れることが出来たのでまあいいだろう。



   名前:ポンポン草

  レベル:1

属性タイプ:土

   説明:調合の材料


   名前:ボンボン草

  レベル:1

属性タイプ:土

   説明:調合の材料



 たしか調合レベル2にまだ1つ作ってなかったアイテムがあったな…



 調合可能アイテム一覧

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・ポーション…材料:ベルペル草×2

・毒消し薬…材料:ギルギル草×2

・痛み止め薬…材料:ギルギル草×1、スライム玉

・ステータス増加剤S…材料:プルポム草×2

・魔力ポーション…材料:プルポム草×1、ベルペル草×1、スライム玉

・???…材料:ポンポン草、ボンボン草

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 2種類とも使うのか…



 名前:火炎瓶

 効果:投げると燃える。



 えーと…錬金術師での初攻撃手段…になるのか?燃えるか~…消す方法がないと使えない気がするな。一度被害がでなさそうな場所で試してみるか。


 その後ノームが持ち帰ってくれたプルポム草でステータス増加剤Sと魔力ポーションを作り、魔活剤とステータス増強剤S+を合成した。ストレージ増加が2になっていたことにより、アイテムが200→350持てるようになったのでかなり余裕が出来、巾着の数も増え最大1500のアイテムが持てるようになった。これはかなり大きい。


 明日はダンジョンじゃなくフィールドで火炎瓶を試すことにして、そろそろ食事も出来たことだろうと1階へとおりていった。


「忘れてました!宿代の更新どうしますか?」


 1階におりるとエレノアの第一声がこれである。うん、すっかり忘れていたよ。まだ他の町へ行く予定は今のところないので、今度は10日ほど宿代を払っておくことにした。

 食事を済ますと再び部屋へ戻る。するとそこにサラマンダーが転がっていた。


「…あが…った?」

「あ、すっかり忘れてた…」


 先ほど作った魔力ポーションを巾着に30本入れて渡した。これで多少はもつと思うが、ほんと大人しく住処に帰ればいいのにと思う。


 そのあとポチは汗をふき取るとベッドにダイブした。


 ……お風呂とか入りたいよな。まあこの宿にはないんだが。お金をためて家でも手に入れるか…?まあ買えるほど稼げるかわからないが。


 そんなことを考えていたらふっと昼間のダンジョンのことを思い出した。2人で転がりエルザの顔が近くにある…


 いやいやいやいや…相手はあのエルザだぞっ散々俺を馬鹿にすることばかり言ってた!


 考えると顔が熱くなるのを感じた。両手で顔を押さえ身悶える。絶対に違うと自分に言い聞かせながらベッドの上で転がりまくったあげく、そこから落ちた。


「…そうやると魔力上がるのか?」


 半目でサラマンダーがこちらを眺めているがそれは無視してベッドに戻ると、布団を頭から被り出来るだけ考えないようにして眠ることにした。




▽▽▽▽▽




「あー眠い…」


 余計なことを考えすぎてよく眠れなかった。冷静になって考えるとエルザはやっぱありえない。嫌いとかかではないがそういった対象としてみるのも違う気がする。

 身支度を整え1階に下りるとアルタがすでに食事を始めていた。エルザはいつもどおり起きるのが遅いらしい。


「おはようポチ。今日はどうするの?」

「今日はフィールドで、新しく作れるようになったアイテムの実験をしようかと。」

「そっか、じゃあ私達はダンジョンにでも行って来るわね。」


 アルタか…

 

 じっとアルタの顔を見つめ少しだけ近づいてみる。キョトンとした顔でこちらをアルタが見ているが気にしない。


 まあこのくらい近づいても別になんともないな…


「あーそういえば…」


 突然アルタのほうが近づいてきておでこをくっつけた。すると顔が赤くなるのに気がつく。


「熱はなさそうね。」


 いや、熱を測っているのはわかっているのだがどうもこれは落ち着かない。でも安心もした。エルザだけじゃなかった…


「あーーなにしてるのよっ」


 それを見ていたエレノアがこちらにやってきた。アルタから引き離すようにポチを抱き寄せた。


「うちの宿はこんなことをするところじゃありませんーー!」

「いや、エレノアまず離してくれ…」


 エレノアに抱きしめられているポチは丁度胸の辺りに顔をうずめていた。それほどエレノアの胸はないがそれでもこれはまずいだろう。なんかいいにおいするし。


「へ?…………わひゃっ」


 あわててポチを突き飛ばし赤くなっている顔を両手で押さえた。もちろんポチの顔も赤くなっていた。


 あーうん…あれだ女性にたいする免疫が低いからか俺は…


 呆れ顔でアルタがこちらを見ている。


「んーなんだこれ?」


 この状況がわからず今おりてきたエルザが食堂を見渡している。


「俺はもういくよ!」

「う、うん。いってらっしゃいー」


 ろくに食事もとらずポチは宿を飛び出していった。その後ろからあわててサラマンダーが追いかけてきている。スフィアは掃除をしていて留守番になってしまった。


 町中をぶらぶらと歩く。宿での状況についていけなかった結果だ。歩いていると『エルフの微笑亭』と言う看板が目にとまった。


「どっかで聞いた名前だな…」


 足を止め看板を眺めていると、中から女性が2人飛び出してきた。


「いらっしゃいませーっ『エルフの微笑亭』へようこそー」


 出てきた女性は同じ顔をしたエルフで、どことなく知り合いに似ている気がする。両側から腕を取られ建物の中へと引きずりこまれた。


「え…ちょっ…」


 身長が足りないせいで足が宙に浮いた状態で連れてかれたポチは逃げることが出来なく、カウンターの前で降ろされた。腕を急に開放されたポチはその場で尻餅をつく。


「お客様、何日お泊りでしょうか?」


 立ち上がってお尻を撫でていると先ほど腕を掴んできた女性の1人が声をかけてきた。無理やり連れ込んでおいてこの仕打ちは酷いものである。


「あーここ宿なのか…」

「はい、何泊でしょう?」

「泊まらない、じゃあ…」


 それだけ言って宿から出て行こうとすると、先ほどまで笑顔だった女性が怒った顔でポチの腕を掴んできた。


「何が気に入らないのでしょう?」

「…全部。そもそも宿他で取ってるし。」

「どこの宿なのかしら、この宿のが待遇いいわよ?」

「いちいち言うわけないだろう?」


 今度こそ宿から出てポチは再び歩き始めた。


 そうか、聞いたことあると思ったらエレノアの姉の宿か…姉は双子何だな。


 歩いてきた道を少し引き返し冒険者ギルドにやってきた。フィールド出る予定だったがまだ町から出ていないので、先に家のことを調べてみようと思ったのだ。


「家ですか?それでしたら不動産をたずねればいいと思いますよ。」


 どうやら普通に不動産で取り扱っているらしい。地図を開き確認するとこの町の不動産は3軒。一番近いところはここから南へ向かった南門よりやや北東あたりだ。

 早速不動産屋に足を踏み入れると壁にいくつも紙が貼り付けられていた。どうやら建物をそのまま販売している情報のだったらしい。丁度いいとばかりにポチは壁に貼ってある物件を眺めることにした。


「訳あり金貨20枚…50枚…ほぼ新築金貨80枚…なるほど。」


 余程いい家とかを買わなければがんばれば買えそうな金額をしていた。土地だけとかも売っているみたいだが、そこに新たに家を建てるとなるとますます高くなる。


「お客様どういった物件をお探しで?」

「ん?いやまだ買うわけじゃないんだけど…」


 声をかけてきた店員だと思われる女性に、相場を見に来たことを話した。


「なるほど…料金の支払いは分割などもありますよ。…ちなみにお客様のご職業は?」

「職業が家とどんな関係が??」

「ここで販売させていただいてます家は普通の家だけではなく、店舗と兼用な家もありますから。」

「店舗…あーなるほど。」

「ご理解いただけたようで。」

「えーと…錬金術師と商人なのだが…」

「それでしたら錬金術で薬を作って店で売ると言うことが出来店舗兼用がお勧めですね。」


 店員はファイルを1冊取り出し渡してきた。どうやらこれが店舗兼用の物件の一覧らしい。受け取りページをめくる。先ほど壁に貼ってあった金貨20枚の物件と50枚の物件が目に付いた。これも兼用物件だったようだ。


「あーそちらはですね…」


 説明によると20枚のほうは飲食店と兼用な物件らしく。建物の半分は店になっているということだ。50枚のほうは店舗部分が1/5程度でちょっと物を販売するのに向いているらしいのだが、さらに精霊付きのため少し高めになっているとか。


「あのこの精霊付きなんだけど、この家に付いているってことなのかな?」

「はい、そう聞いていますね。何でももう長いこと買い手がなくて精霊も今にも消えてしまいそうだとかで、精霊つきの家にしてはかなりお安くなっています。まあ…精霊に気に入られなければ買うことも出来ないんですけどね。」


 今にも消えてしまいそうな精霊付きの店舗兼用物件か…


「ねえノームどう思う?」

「そうだの…仲間としては助けて欲しいとこだが…」


 チラリとノームはサラマンダーのほうを見た。


「…え?契約の話??」

「ノーム悪いけどプルポム草の採取をまたお願いしてもいい?」

「わかった行ってくる。」


 よくわかっていないサラマンダーはおいておき、ノームを見送るとポチは店員さんに一言こういうのであった。


「金貨50枚の物件、分割で買います!」

「…え、現物を見なくていいの?」

「構いません。」

「んー…やっぱり一度見てもらったほうがいいわ。精霊と契約出来ないとそもそも無理だし…ね?」


 店員さんに連れられ精霊付きの家にやってきた。場所は南門から北へ伸びた広い通路の真ん中あたりに位置している。商売をやるのにかなりいい場所とも言えよう。東と西の冒険者ギルドの丁度真ん中あたりになる。


「中々いい場所だね~というかこの通りに初めてきたんだけど、消耗品や食品、武器防具とかお店があるんだ…」


 さて、問題はこっちだな…


 目の前にある建物を眺める。精霊つきの物件で、2階建てで思ったよりも大きな家だ。正面の入り口から入るとそこが店舗部分らしく、奥にカウンターが見える。それ以外は特に棚などは何もない。


「見ての通りここが店舗ですね。実際に店にするなら棚や台などの用意が必要になります。」

「ぜんぜん綺麗ですね…」

「はい、精霊がいますので掃除は行き届いておりますよ。」

「あーそうか。」


 店舗部分の入り口が西…そのすぐ南側にもう1個扉があるな、従業員用の出入り口ってことか。じゃああとは別に住居部分の入り口もあるのだろうな。


 そんなことを考えつつ回りを見ているとカウンターの奥にある、住居部分に繋がっていると思われる扉からこちらを見ている人物を発見した。どうやら精霊のようだ。


「…だれ?」

「こんにちは君と契約をしたくてきたんだよ。」


 精霊は幼女のような見た目で、肩まで伸びた金髪にウェーブがかかっている。ずいぶんと魔力を消費しているようで、元気もない。ゆっくりと扉から出てきてポチの傍までやってきた。終始こちらをじっと見つめている。


「ほんとに私と契約してくれるの…?」

「君がいやじゃなければ。」

「ありがとう…私はルーナ…あなたは?」

「俺はポチ、だよ。」


 両手を繋ぎ魔力の繋がりを感じる。彼女は嬉しそうに目をウルませていた。


「あれ…私まだ契約してない…なんで?」


 最後に聞こえたのはサラマンダーの声だった。ルーナの消費された魔力の回復のために一度にポチの魔力が消費され少しの間ポチは意識を失った。次に目を覚ましたときにはおろおろと困っている、不動産屋の店員さんが目に入った。

 それから一度不動産屋に戻り、物件の契約を済ませた。支払いは30日に一度直接取りに来てくれるそうで、手付金に金貨5枚を払った。明日からしっかり稼がないと大変だ。

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