第12話 レアス地下2階

 ◇◇◇ レアス地下1階 ◇◇◇


 今日は朝食を済ませると予定通りダンジョンに来ている。あいかわらずスフィアがついて来ているのだが、さらに今日はアルタとエルザも一緒だ。2人は森へ行く予定だったそうだが、どうやら今森は低ランク冒険者が入れる状態じゃないらしい。それでポチがさくさくとスライムを狩りながら進んでいるのを2人は眺めている。


「数日会わなかっただけでずいぶん強くなったのね~」

「ん、そうかな?」


 たしかにスライムやキノコを1撃で倒せるようにはなっているが、そもそもここはまだ地下1階。現在地下7階まであるのだから本人から見ればまだまだだろうとは思っている。


「ねえポチ、それよりこれはなに?」


 もう1人一緒にダンジョンに入って来ているものが近くをうろついていた。


「なんか元気ないよ?というか死にそう?」

「……」


 昨日契約をしてくれとやってきたサラマンダーだ。おとなしく精霊の住処とやらにいればいいのだろうに、なぜかついて歩いている。


「ああ…なんか俺と契約したいらしい精霊だよ。」

「精霊ねぇ…」

「死にかけじゃない?」

「やっぱりそうみえるか??」


 一晩契約もしないままいたせいで、自己魔力とやらを消費しているのだろう。


「うーん。魔力ポーションとか効果あるかな…」


 ためしに渡して飲んでもらうと、多少は回復したのか顔色はよくなった。でも縮んでしまったサイズが元に戻らない。


「ふむー…」


 だからといって気軽に契約は出来ない。ぎりぎりいけるだろうが、そんな状態では自分で魔力が使用でいなくなってしまうのだ。いくつかレベルが上がるまでは無理だろう。


「そうだな…ノーム。」


 目の前に男の子があわられた。ノームだ。


「プルポム草を集めてきて欲しいんだけど、頼めるかな?」

「かまわないが、どの程度だ?」

「じゃあこの袋3つ分で。」


 ノームは袋を受け取ると再び姿を消した。どうやら取りに行ってくれるようだ。


「わー…今のも精霊かしら。」

「うんそうだよ。というかスフィアも精霊なんだけどね。」


 名前を挙げられたスフィアは相変わらずスライムと戯れている。話を聞いた2人は顔を見合わせ、


「会ったときから変だと思ったけど、精霊がこんなに周りにいるとか異常よね…」

「まあそれがポチなんだねきっと。」


 という感じに納得してくれた。


 さて、本来の目的である地下1階の広間にやってきた。


「レベルが10超えたからポイズンスライムを1人で狩ってみたいんだ。手を出さないでね?」


 まあそれだけじゃなく、ステータス増加剤の重複確認もついでにやるつもりだ。まずはステータス増加剤Sを使用する。




   体力:92/92 (184)

   魔力:928/1015 (2030)


    力:67 (134)

   速さ:88 (176)

   知力:511 (1022)

    運:72 (144)

物理防御力:43 (86)

魔法防御力:176 (352)




 わー…普通の戦闘職と同じくらいの強さになってそうだな…


 重複できないと書いてあったのでステータス増加剤Sは使わず、ステータス増加剤S+をさらに使ってみる。これがどうなるのかが知りたかったのだ。




   体力:92/92 (184)→(552)

   魔力:928/1015 (2030)→(6090)


    力:67 (134)→(402)

   速さ:88 (176)→(528)

   知力:511 (1022)→(3066)

    運:72 (144)→(432)

物理防御力:43 (86)→(258)

魔法防御力:176 (352)→(1056)




 えっと…2倍に上がった数字からさらに3倍になってる…効果が半日とはいえこれはやばいんじゃないのか…?


「ぽち、まだポイズンスライムださないの?」

「あ、ごめん。ちょっと試したい薬があって確認してたんだ。じゃあ今から出すねー」


 周りのスライムとキノコを全滅させ、ポイズンスライムが出るのを待つ。少しだけ待つとポイズンスライムが現れた。他の人のところに行かないように急いで目の前に出る。ちゃんとポチを認識したようだ。まっすぐに突進してきたので盾で受けとめる。ステータスが上がっているせいか大した衝撃を感じない。それを確認した後、距離をとり『練成』でポイズンスライムを檻に閉じ込めると背後に回りこみナイフを刺すと2回ほどの攻撃でポイズンスライムは倒れた。


「え、ちょ…その檻は反則だわ~」

「攻撃2回…アルタより強いわ。」

「……上がった!?」

「上がってないよ。」


 今回スフィアはおとなしくしてくれてた。契約してるとこちらの状態がわかっているのかもしれない。あまりにも簡単にポイズンスライムを倒せてしまい、少し物足りなく感じたポチは今回初めて地下2階へと足を踏み入れた。



 ◇◇◇ レアス地下2階 ◇◇◇


 地下2階は1階に比べて少し薄暗い。足元が少しだけ見にくく、2メートルぐらい前が見えない。


「アルタとエルザはこのダンジョンはどこまで降りたことが?」

「私達?まだ地下3階までだね~」

「3階のボスにチャレンジを迷ってるとこ。」


 ふむ…Eランク冒険者でそのくらいなのか。…あれ?


「ねえ、そういえばランク上がるとろこだって前言ってたけど上がったの?」


 2人は嬉しそうに冒険者のギルドカードを出してこっちに向けている。どうやら無事Dランクへと上がることが出来たらしい。


 さて…地下3階。ここには何がいるんだろう…


「冒険者の先輩がこの階層の説明もしちゃおうかしら。」

「先輩…ぷっ」

「ちょっエルザ何がおかしいのよー!」


 アルタとエルザがじゃれあっている。その様子をほほえましく眺めていると、前から何かが飛び出してきた。


「わ…ポイズンスライムだっ」


 あわてて盾で攻撃を受け止めそのままナイフで切り倒す。どうやらこの階層では普通にポイズンスライムが出るらしい。


「えっと…ごめんポチ。」

「先輩…ぷっ」

「……」

「…はっ上がった!?」

「…まだ。」


 時々思い出したかのようにサラマンダーが反応ある。まあそれはいいのだが中の様子がいまいち見えないのだから、早くどんなモンスターがいるのか教えて欲しいものだ。


「もうまじめにモンスターの話戻るよー?」


 今度はエルザもふざけずにおとなしくしてくれるようだ。


「はい、まず見ての通りポイズンスライム、スライム、キノコノコ、そしてグールです。」

「グール…屍食鬼ってやつか。」


 急に難易度が上がった気がするな…


「気をつけてくださいね?」

「何を気をつければ…」

「グールは男女いて別の生き物に姿を変えてることもあるからですよ。」

「…あれとかか?」


 少し進んだところに見知らぬ女性がこっちを見てニコニコして手を振っている。それを指差した。エルザが前にでてなにやら瓶に入った液体をその女性にぶちまけた。するとドロッと皮膚が溶け出し内側から緑色の皮膚が見えている。



   名前:グール♀

  レベル:11

属性タイプ:毒属性、悪魔

 アイテム:グールの爪、ポンポン草、毒消し薬、グールのぬいぐるみ、生物『悪魔1』



「わー…今の液体なに?」

「これ?いわゆる聖水というやつね。」


 なるほど、聖水をかけると化けの皮がはがれるってことか。…と余分なことを考える前にグールを倒さないとね。


 前に出て盾を構える。するとグールも正体がばれたことに気がついたらしく、こちらに向かって走り出した。グールの爪が伸びその爪を上から下へと振り下ろす。それを受け止めそのまま蹴りをいれ距離をとると裏からアルタが弓を引いた。さらにその矢にエルザが聖水を振りかけている。その作業を確認したあと矢を放った。グールの胸の中心辺りに刺さるとドロッと崩れ落ちその残骸はすーっと消えていった。


「爪とポンポン草ね。」


 ドロップアイテムを拾いつつアルタが確認していると、いつの間にかポチの横に犬が尻尾を振っていた。


「…犬?」

「ちがうわね。」


 おもむろにエルザが聖水を犬に振り掛ける。やはりグールだったようだ。ドロッと溶け出したと思うとすぐにこちらに飛び掛った。急ぎエルザを庇いつつ一緒にその場から飛びのく。半分転がりつつ避けると『練成』で檻に閉じ込めた。でもそれも強度が足りなくあっさりと壊される。


「もうこのレベルからもたないか…」

「ポチほら…」


 一緒に転がりすぐ目の前にエルザの顔がある。少しドキリとしたが今はそれどころではない。エルザはポチのナイフに聖水を振り掛けてくれたようだ。そのままナイフを前に突き出すとちょうど向かってきていたグールにあたり、横に二つになった。その後は最初のグールと同じでドロドロに溶け消えてしまった。ドロップはボンボン草のみのようだ。


「あれ、今の雌じゃなかったのかな。」

「ドロップが違うから雄ね。」


 横からエルザが覗き込んできた。再びすぐ近くにエルザの顔があり顔が熱くなるのを感じる。


「……エルザ近い。」

「あら…?ポチ顔が赤い。熱でもある?」


 ますますエルザの顔が近くなりおでことおでこをくっつけてきた。熱を測ろうとしてるのは分かるのだがなれないことにポチは気が動転している。


「ちょっとエルザなにしてるのよ!!」


 アルタの方向からはいまいち状況がみえず2人の顔が近づいてることしかわからない。


「…あ。ポイズンスライム。」


 振り向きざまにエルザはアルタのほうを指差し教えてあげたのだがまにあわず、ポイズンスライムはアルタに体当たりしてきた。


「わっ…えー…」


 あわてたアルタはすぐナイフを取り出しポイズンスライムをなんとか倒したが、最初の一撃で毒をまた受けてしまったようだ…


「毒消しは…私はないわよ。」

「森に行く予定だったから私もない…」


 2人はポチのほうを見た。赤い顔をしたまま動きが止まっていた。


「エルザ何したのよ…」

「え、熱を測っただけよ。ちなみになかったわ。」

「御主人様…ダンジョンでそれは危険。」


 さっきまでその辺でポイズンスライムを捕まえて遊んでいたスフィアが、ポチの頭に手刀を入れた。


「スフィア痛い…」

「毒消し薬ありますか?」

「あーうん、あるよ。」


 ストレージから毒消し薬を出すとアルタに渡す。


「あ、アルタでいいんだよね??」

「なんだちゃんと話聞いてたじゃない~」

「あたってたのか…またアルタの気がしたんだよね。」


 どこか納得しない顔をしつつアルタは毒消し薬を飲むと、また狩りが再開された。それからは順調でとりあえず片っ端からエルザが聖水をまき少しでも変化のあったのを倒していく。


「聖水をかける以外にグール見分けれないかな…」

「とりあえずこいつらは動きと見た目は真似るけど会話は基本できないわよ。」

「ふむ~…」


 まあ対策はそのうち考えるか…


 そのまま進むと同じく広間にでた。ここのモンスターを処理したらボスがでるだろう。


「地下2階、ここのボスは何かな?」

「「スケルトンね。」」

「骨?」

「骨。」


 スケルトンにもどうやら聖水が効くのでそれほど苦戦しないということで、このままボスをだしてしまおうという話になった。




   名前:スケルトン

  レベル:15

属性タイプ:闇属性、悪魔

 アイテム:スケルトンの骨、ポンポン草、ボンボン草、スケルトンのぬいぐるみ、属性『闇3』



 呼び出したスケルトンを鑑定する。それはいいのだが、どうみてもスケルトンは3体いる…


「1人1体ね。」

「ん、エルザも1人で狩れるの?」

「聖水が効く相手ならある程度は。」


 聖水をそれぞれの武器、盾に振りかける。もう目の前までスケルトンが迫ってきている。エルザがすかさず聖水をスケルトンにもぶちまけた。一瞬スケルトンの動きがとまる。そこへエルザが杖で殴りかかった。


「よいっしょっ」


 スケルトンはばらばらに崩れ落ちる。その崩れ落ちた骨から小さな丸い生き物らしきものが這い出てきた。さらにそれに聖水をかけ杖で殴り倒す。


「本体はその小さい生き物か…」


 スケルトンの攻撃を盾で防ぎつつエルザの様子を眺めていた。それに見習いナイフで切りかかり骨を崩して小さな生き物にナイフで突き刺す。ちなみにアルタは矢で正確に本体に攻撃をして一撃で倒している。

 3体倒してもドロップは草ばかりで微妙だったが地下2階のボスを倒せてポチは満足だった。


「……上がったでしょ?」

「まだだめだよ…」


 サラマンダーは魔力が足りないせいか元気がなく同じことしか聞いてこない。まあノームがプルポム草集めてくるのを待っててくれ…

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