第11話 再会と精霊
報酬は後日にしてもらいポチとエレノアはさっさと宿に戻ってきた。聞いていたからわかっていたこととはいえスフィアの事が気がかりだったのだ。
「おかえりなさいませ。」
宿の入り口で待っていたのは気持ち背の縮んだスフィアだった。その姿をまじまじと見つめると、
「自己魔力を消費したためにサイズダウンしています。」
とのことだった。
さて、今回の狩りの本来の目的だった料理用食材だが、肉が2種とハーブが少々だ。何が作れるだろうか…エレノアから聞くとどうやら煮たり焼いたりして食べるものらしい。
「シチュー、カレーとかの煮込み系…トマト煮とかもありか。焼くとなると…もうそのままソテー?串焼きとか??あーミンチにしたらハンバーグとかも出来そうかな…」
スフィアの無事を確認し安心したので、いろんな料理名を口に出しながら考えていると傍でじっとスフィアがこちらを見つめていた。どうやらポチから料理の知識を貰おうとしているらしい。
「初めて聞く名前…作ってみても?」
「もちろんだけど、作り方直接教えなくても作れるんだね。…キノコの時そうだったけ。」
「はい、魔力経由で知識を読み取っています。」
厨房に入りしばらく辺りを眺めていたスフィアは突然日が点いたように動き始めた。手際意よく野菜や肉を切り分け火を通していく。その手がピタリと止まった。
「あの…ここにない調味料は、どこかに売っていますか?」
「…なんですと?ちょと父に聞いてみるわ。」
何を作ろうとしていたかわからないがここの厨房に調味料が足りないらしい。待つ間もスフィアは別の調理を進める手を休めない。
「聞いてきたわよーほとんどの調味料が置いてあるって~ただ、いくつか香辛料が用意出来ないものがあって、ないのはそれだけ…って、もしかしてそれが欲しかったの?」
「多分、そうです。」
「ごめんねーその香辛料はこの辺じゃ売ってないからめったに手に入らないんだ。」
「残念です。」
残念といいながらも特に気にした様子もなくスフィアは料理を完成させた。
テーブルに並べられた料理は先ほどポチが上げていたものが並んでいる。シチュー、トマト煮、ソテー、串焼き、ハンバーグ…あとはサラダがおまけに用意されていた。どうやら作れなかったものはカレーのようでそれだけは目の前にはない。
「ほぅ…変わったものが多いね。」
完成した料理を試食しにソーマさんがやってきた。各自席につき一緒に食事を始めると…
「すいませーん。まだ宿泊まれますか?」
「あ、はいどうぞ。」
「2名食事つきでお願いします。いや~においに釣られてしまって…」
どうやらスフィアが作った料理の匂いに誘われて女性が2名、宿の利用にやってきたようだ。
「あ…ポチ?」
「え?ほんとポチだ。」
「……2人ともまだこの町にいたんだね~。」
数日前に分かれたアルタとエルザの2人だった。
「うん。まだ私達も駆け出しみたいなものだから遠出は出来ないのよ~」
「あ、お客様たちはお知り合いですかね?」
「はい、一度一緒にパーティ組んだことがあるんです。」
ポチは3人でパーティをしたときのことを説明した。エレノアもソーマも楽しそうに話を聞いていたが、そこで食事を出していないのに気がつき、厨房へと向かう。
「スフィア、ここにまだあるものもだしてかまわないかね?」
「はい、かまいません。」
「スフィアたくさん作ったんだね~」
「カレーが出来なかった分がシチューになってしまったので…」
あーなるほど。シチューが大量にあるのか…
出された食事を見てアルタとエルザが驚いた顔をした。
「…このシチュー白いわ。」
「おいしいからおっけー」
どうやら白いシチューはこの世界では珍しいものだったようで大変驚かれた。エレノアにいたっては「え、これシチューだったの?」とか言っていたくらいに。ハンバーグも驚いていた。肉を細かくすること自体がないことだったらしく喜ばれた。
みんなで楽しく食事を済ませた後、アルタとエルザはエレノアに部屋に案内されて姿を消した。ソーマとスフィアは片付けをしている。残されたポチは部屋へ戻り一度ステータスの確認をすることにした。
名前:ポチ
性別:男
年齢:16
職業:錬金術師(商人)
レベル:12
体力:92/92
魔力:528/1015
力:67
速さ:88
知力:511
運:72
物理防御力:43
魔法防御力:176
固有スキル:チュートリアル 鑑定2
称号:スライムに倒された男 精霊の契約者
*****
調合2 練成1 分解1 合成1 (生成) (操作)
*****
話術1 ストレージ増加2 開店1 値切り1 (経営) (雇用)
わ、5レベルも上がってる…フォースドベアがかなり大きかったと見える。……お?調合が2だ!新しいものが作れるな。それと…合成と値切りが使えるようになっている。
合成1…自分で作ったアイテムを組み合わせ新しいものを作る。
値切り1…5%安く買えるようになる。常時発動。
どっちもありがたいスキルだけど、相変わらず戦闘スキルじゃないんだよな…いいけど。
さて、なにわともあれ調合が2になった!早速作ってみよーっ
調合可能アイテム一覧
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・ポーション…材料:ベルペル草×2
・毒消し薬…材料:ギルギル草×2
・痛み止め薬…材料:ギルギル草×1、スライム玉
・???…材料:プルポム草×2
・???…材料:プルポム草×1、ベルペル草×1、スライム玉
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えーとたしか…プルポム草2個のがステータス増加剤S。もう1個のはなんだったかな…まあ作ってみればわかるよね。
名前:ステータス増加剤S
効果:全ステータスを半日ほど2倍にする。効果は重複しない。
名前:魔力ポーション
効果:魔力を10%回復する。
…あ、これがあるとソーマさん魔力足りるようになるかな?と…そうだ合成も見てみるか。
合成可能アイテム一覧
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・???…材料:ポーション×1、ステータス増加剤S×1
・???…材料:魔力ポーション×1、ステータス増加剤S×1
・???…材料:ポーション×1、魔力ポーション×1
・???…材料:ポーション×2
・???…材料:魔力ポーション×2
・???…材料:ステータス増加剤S×2
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わー…なんか多いな。でもまあ使えそうなのもあるかもだし、やるか…
名前:体活剤
効果:体力を半日かけて30%ほど徐々に回復する。
名前:魔活剤
効果:魔力を半日かけて30%ほど徐々に回復する。
名前:体魔力ポーション
効果:体力と魔力を20%回復する。
名前:ポーション+
効果:体力を20%回復する。
名前:魔力ポーション+
効果:魔力を20%回復する。
名前:ステータス増強剤S+
効果:全ステータスを半日ほど3倍にする。効果は重複しない。
ふむ…ストレージの消費を抑えられるくらいかな…問題はステータス増強剤の重複のところだけど、2倍と3倍は同時に使えるのかな…試したいけど今数持ってないから実戦で試すしかないかな~
よし、レベルも10超えたし、明日ポイズンスライムを今度こそ1人で倒してみよう!
「………」
「…」
「…?」
部屋の明かりを消しベッドに転がり、天井を見ていた。どこかからか話し声が聞こえてくる。たしかアルタとエルザの部屋は2階だとか言っていた。でもこの声は下からじゃなく上から聞こえてきている。
上…上はスフィアの部屋だよな…
天井に向かってノックをしてから扉を開く。
「スフィアどうかしたの?」
「御主人様…とくに変わったことはないです。」
…いや、そういうけどスフィアの目の前に1人いるんだけど、誰?
「その人は…?」
「人…?」
「ん?えーと…そちらは誰?」
スフィアの目の前に立っている人物についてたずねた。人と言ったら首を傾げられたからだ。
「ノームです。」
ノームと呼ばれた人物は少し小柄な少年に見える。そして先ほどからなぜかこっちをじっと見つめている。
「…彼がいいな。」
「御主人様ですか?大丈夫だと思いますけど本人の許可を得てください。」
2人?で会話を進めているみたいだけど、そこにどうやら俺のことがまぜられている。何かしたかな…?
ノームと呼ばれた少年はこちらを再び見つめている。
「すまぬが、私と契約を結んでくれんか?」
「契約ですか?」
「うむ。元契約者から開放されて精霊の住処に戻るところだったのだが、おぬしを見たら気が変わったのだ。」
さらに精霊と契約か…レベルも上がって魔力には余裕があるが、どうしよう。
「えーと…ノームと契約すると何が出来るんだ?」
「ふむ、土と自然に関する魔法の代行と、魔力さえもらえれば単独で採取も出来るぞ。」
「なるほど…契約に伴いこちらが渡すのは魔力以外にはあるのか?」
「そうだな…たまにはどこかに観光にでも行きたいかの。」
観光か…ずっとこの町にいることはないと思うからよさそうだな。
「スフィア、精霊の同時契約とか問題ないの?」
「魔力があれば問題ないです。」
「ノーム契約しよう。俺は魔法が使えないから助かるんだ。」
両手をお互い出して握るとノームからポチへポチからノームへと温かいものが流れていった。スフィアと契約したときと同じだ。周りから見ると男2人が手を取り合っている光景なのだが、まあ他に人はいないから気にしないでおこう。
「さて、よろしくねノーム。」
…と契約したのはいいが、普段はどうしておけばいいんだ?スフィアは部屋があるけど。
「ん…呼ばれるまで消えているか。」
一言いうとノームは姿を隠した。ある程度こちらの考えが分かるようだ。よし、今度こそ寝るか…と思ったのだが気になることが1つあった。
「精霊の住処って…どこにあるんだ?」
「住処ですか…ここから行けます。」
壁にある扉をスフィアが指さしている。ポチが手をかけ開くと中は真っ暗だった。スフィアが開きなおすと今度は真っ白だ…
「ここから行けます。私は住処への案内人なので。」
うん。割と初めて聞いたなその言葉。
「はー…じゃあ他の精霊もここから出入りしてたんだな~」
「今他の精霊はほとんど住処にいますね。契約できる人が中々見つからないようです。」
えー…2精霊契約してる俺はどうなのよ?まあ助かるからいいけどね……
精霊の住みかを覗きこみながらスフィアと話をしていると、その奥から熱を感じた。それはさらに熱くなってきたので、扉から下がることにした。
「み、みつけたーーっ」
中から赤い髪をして羽と尻尾の生えた女の子が飛び出してきた。
「契約!契約して!」
「無理。というか誰?」
「火の精霊サラマンダーちゃんですっ」
自分でちゃんとかいうのかよ…
「契約お願いっ」
「だから無理…」
「なんで!」
「今契約したばかりで、3体目はもっと魔力増えてからじゃないと厳しいからだよ。」
「わかった待つ!」
待つといったが中々帰る様子がない。
「…」
「……」
「……そろそろ上がった?」
「上がるわけないだろーーーっ」
火の精霊は脳筋…と心の中にメモをした。
「とにかくもう寝るから…」
そういうとポチは自分の部屋へとおり、ベッドへダイブした。この夜は今までで一番寝苦しい夜だったのはいうまでもない…
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