第8話 狩って狩って狩りまくる再

 精霊のスフィアを連れポチはダンジョンのテントへ足を向ける。テントにはいつものように受付を管理している人がいた。


「ん?そっちの子のカードは??」


 あ…精霊ってギルドに登録できるのかな…すっかり忘れてたけど。


「えっと…持ってないというか作れるのかわからないというか…」

「んん~?どういうことだ。」

「精霊なんですけど。」


 受付の男は不思議そうな顔をしている。精霊という言葉を知らないのか、精霊かどうか判断出来ないのか、対応が分からなくて困っているのだろう。


「うーん…ほんとに精霊ならダンジョンに入っても問題ないのだろうが、鑑定出来ないからわからんな~」

「鑑定か…」


 『鑑定』を使って確認してみる。反応なし…


《カンテイレベルガタリマセン。コノカンテイニハカンテイレベル4ガヒツヨウデス。》


「うーん…僕の鑑定だと見れないみたいだな。」

「鑑定レベルいくつなら見れると出てる?」

「4ですね~」

「あーじゃあ人間じゃないことは確かだな。それならダンジョン専用のカード用意してやるから少し待ちな。」


 男はなにやら取り出し作業を始めた。ダンジョンの利用だけを許可するカードというものを用意してくれているらしい。


「ほい、出来たぞ。後は本人がこのカードに魔力を流してくれ。」


 受け取ったカードをスフィアに渡し、魔力を流してもらった。



ダンジョン専用身分証明書

  名前:スフィア

  種族:精霊

攻略階層:0



 書かれている内容はとても簡単なものだった。まあ出入りするためだけのカードなのだろう。


「よし、それを貸してくれ。」


 カードを渡すとスフィアも受付がすみ、これで2人そろってダンジョンに入れることになった。




 ◇◇◇ レアス地下1階 ◇◇◇


「ここがダンジョン、という場所…」


 初めてきた場所にどことなくスフィアが嬉しそうな声を上げた。今まではあの宿とソーマさんの買い物について歩いたことくらいしかなかったようで、新しい知識が増え目をキラキラとさせている。


「あの、御主人様は、ここで何を?」

「ああ、モンスターを倒してアイテムを集めるんだよ。」

「モンスター…集める。」


 首を左右に動かしまわりを確認する。スフィアはスライムを指さした。


「これが、モンスター?」

「そうだよ、スライムって言うんだ。」

「こっちは?」


 今度はキノコノコを指差している。表情にそれほど変化かないがスフィアは嬉しそう見えた。


「それはキノコノコ。モンスターだよ。というか人以外はほとんどそうだと思っていいんじゃないかな。」

「なるほど…」


 1人納得したスフィアはしゃがみこみスライムをつつきだした。つつかれたスライムはというとまったく気にした様子もなく、普通に好きに行動をしている。スフィアが触れても攻撃されたと認識していないようだ。


「さてと…」


 まずはキノコノコに向き合い攻撃回数を確認するとこからだ。1撃入れ様子を見る。足が生えそのままこちらへ向かってきた。どうやらまだ倒しきれないらしい。2発目の攻撃を与えるとキノコノコはキノコになった。


 ふむ、まだレベルが足りないのか…じゃあ今日もスライムだけかな。いや、2発なら姿が変わるの待たなければいいんじゃないか?


 次は2回連続で攻撃を入れるとあっさりとキノコに変わった。


 これならキノコノコも狩れる!今日は気にせず全部狩ろう。


 昨日と同じようにまずはどんどん狩りまくる。それから落ちているアイテムを集めストレージに放り込む。しばらくはこの作業を黙々と続ける。するとそれを見ていたスフィアがアイテムを拾い出した。


「拾ってくれるの?」

「え、だめだった?」


 どうやらスフィアはポチの行動を見て学習していたようだ。それならばとポチは昨日作った巾着を1つスフィアに渡した。


「この中に拾ったアイテムを入れてくれるかな?」

「わかった…入らなくなったらどうする?」

「入らなくなったら交換するから僕に渡して。」


 頷くとスフィアは巾着にアイテムを集めだした。それを確認してからポチはまた狩りを再開する。ポチが狩りスフィアがアイテムを拾うこの流れをしばらく続けているとストレージの中が一杯になった。


「スフィア、少し休憩ね。アイテム整理が必要になった。」

「はい。」


 返事をするとスフィアはまたスライムをかまっている。今度は捕まえてぷにぷにとヌイグルミのように扱っている。ではまずストレージの内容を確認しようか。 本が4冊、生物『魔法3』、痛み止め薬1本、、スライム玉21個、キノコ1個これが前回のもの。巾着(ベルペル草×30)、巾着(ベルペル草×30)、巾着(ベルペル草×30)、巾着(ベルペル草×30)、巾着(ベルペル草×30)、ベルペル草116本、キノコ12個、スライムヌイグルミ5個、ナイフ3本、ギルギル草15本、毒消し薬2本、ポーション4本、スライム玉10個これが今回のアイテムだ。


 普通に多いな…


 確認が終わるとまずはヌイグルミを巾着にする。次にベルペル草を全部ポーションに変え、拾ったポーションと合わせて237本、痛み止め薬を4本、毒消し薬8本を作った。


 そして巾着に詰めなおすと…巾着(ポーション×30)、巾着(ポーション×30)、巾着(ポーション×30)、巾着(ポーション×30)、巾着(ポーション×30)、巾着(ポーション×30)、巾着(ポーション×30)、巾着(スライム玉27個)、巾着(痛み止め薬4本、毒消し薬8本、本が4冊、生物『魔法3』、キノコ13個)、ナイフ5本、巾着(空)となる。まだ218の空きがある。


 すごいな…実質190の枠に300も巾着で枠が増えたってことだからそりゃ多いよね。


 200の枠を全部巾着にすると…1800ももてるようになるらしい。もちろん巾着に入らないサイズは無理だが。


 うん、巾着は最大でも180個までにして、20個は大きいもの用に開けておこう。


「スフィア休憩終わりにするよー」

「ん…わかった。」


 抱えていたスライムを開放し、スフィアは立ち上がる。まあそのスライムもそのまま狩ってしまうのだが…


 狩りを再開したポチはスライムとキノコノコを狩り続ける。またストレージが一杯になるまで狩る予定だ。今回はスフィアが手伝ってくれているのでそのくらいで程よい時間になるだろうと判断した。巾着袋は残り1個だったためすぐ一杯になり、ヌイグルミがでたら袋にする。それまではスフィアがもてるだけ拾い持ってきてくれる。そんな感じで移動しながら狩り続けたのだ。


 現在一番奥の広間で狩っている。ここだとたくさんいて狩りやすい。いなくなったらまた通路を走りぬけ広間までくる繰り返しだ。


 キノコに攻撃を入れると初めて1撃で落ちるのを確認。レベルが上がったのかもしれない。そんな油断があったのだろう。今狩ったキノコが広間の最後のモンスターだったことにすぐきがつかなかったのは。いつの間にか広間でモンスターが沸くペースより倒す速度が上がっていたのだ。部屋が一瞬くらくなる…


「あっやばいスフィア、ボスが出てくる下がって。」


 もちろんスフィアを下げたからといってポチが1人で狩れるかは分からない。まだ一度も1人で狩ったことがないし、そもそもポイズンスライムのレベルは10だ。レベルが上がったとはいえせいぜい5か6になったくらいだろう。


 ナイフで攻撃するしかないけど…やれるかな…


 回復薬はたくさんある。即死さえしなければもしかしたら倒せるかもしれない。不安はあるがボスを出してしまった以上放置するわけにもいかないのだ。ポチは身構えた。その横をすっと1つの影が歩いていく。


「スフィア!?」


 スフィアが歩いていく先にポイズンスライムが現れた。目があるのかは知らないが、ポイズンスライムの視覚を奪うかのようにスフィアが抱きついく。


「御主人様。これでこの子は動けない。」

「え…?あ…」


 スフィアに抱えられもぞもぞとポイズンスライムが動いている。


「くすぐったい…」

「えーと攻撃していいのかな?」

「うん。そうしないと、ご主人様が…危ない。」


 ゆっくりとポイズンスライムの背後に回りこみナイフを突き立てた。もちろん1回では倒せない。倒れるまで刺して刺して刺しまくる。15回ほどナイフを突き刺すとポイズンスライムは倒れ、アイテムをドロップした。


「はぁ~~びっくりした~」


 その場で尻餅をつき座り込む。今頃になって震えがやってきた。ポチは震える両手を見つめ生きてることを実感する。スフィアと一緒に来ていなかったらどうなっていたことか。


「スフィアありがとう…」

「はい。御主人様の恐怖が…消えてよかった。」

「恐怖?」

「はい。」


 どうやら精霊には契約者の感情が伝わっているようだ。


「ふむ…まあ今日はこれでアイテム整理して戻ろうかな。」

「疲れも見えるので、それがいいかと。」


 ストレージを開きアイテムを確認すると、キノコがぼちぼち溜まりだしていることに気がついた。


 確かこれって食材だよな…エレノアに渡してもちゃんと調理してくれるだろうか?キノコだと…キノコ鍋とか焼きキノコ?キノコ炒めに、肉詰め…茶碗蒸しに入れるのもいいな。


 キノコ料理をあれこれと考えているとスフィアがなにやら考え込み始めた。


「どうした??」

「料理…ですか?いろんなレシピ。」

「そういえばスフィアは料理できるの?」

「掃除しか教わってません。…が今キノコ料理のレシピをいくつか、覚えました。」


 え、教えるってこういうことなの??


 頭の中で考えたことをどうやら丸ごとレシピとして持っていったようだ。つまり希望する料理を色々考えれば全部スフィアが作れるということになる。


「味は…自信ある?」

「教えられたままの再現になります。」

「精霊って色々できるんだね~」

「いえ…属性を持たない私は真似しか…出来ないのです。」


 スフィアの言い方だと他にも精霊がいて、属性というものがあるように聞こえる。


「他にも精霊がいるんだね。」

「はい、この町にノームがいます。他の子達は精霊の住処で呼ばれるのを…待っています。」

「ふぅ~ん?」


 誰かが呼ばないと出てこないってことなのかな?


 雑談をしながらアイテム整理が終わるとダンジョンの外へ向かい2人は数時間ぶりに外の空気を吸う。今日は昨日より早く外に出たらしくまだ空が赤いくらいの時間で、薄暗いところからでたポチは少し目を細めた。


 ダンジョンを後にした2人はそのまま冒険者ギルドに向かい、一部アイテムを残しお金に換金した。


 巾着(ポーション×30)、巾着(毒消し薬10、痛み止め薬10)、巾着(スライム玉30)、巾着(本が4冊、生物『魔法3』)巾着袋7個、キノコ20個。これが今残してあるアイテムで、今日は金貨5枚銀貨25枚の稼ぎだった。たくさんもてるって効率いいのだと実感した。


 宿に戻ると早い帰りに驚かれ、まだ食事の準備が出来ていないと聞かされ、これは丁度いいとばかりにスフィアの料理を披露してもらうことになりキノコを提供した。その日の夜はキノコづくしの食事となり流石に偏りすぎてるなーとは思ったが、他に教えていないので今日はこれであきらめよう。ソーマさんが魔力が回復をし始め夜一緒に食事が出来たのは大きなできごとだろうか。


 部屋に戻り今日のレベルの上がりを確認すると、



   名前:ポチ

   性別:男

   年齢:16

   職業:錬金術師(商人)


  レベル:7

   体力:60/65

   魔力:328/703


    力:44

   速さ:78

   知力:376

    運:68

物理防御力:31

魔法防御力:155


固有スキル:チュートリアル 鑑定2

   称号:スライムに倒された男 精霊の契約者



***** 錬金術師アルケミストスキル *****

調合1 練成1 分解1 (合成) (生成) (操作)


***** 商人マーチャントスキル *****

話術1 ストレージ増加1 開店1 (値切り) (経営) (雇用)



 レベルとステータスが全体的に上がっている。後新しい称号が増え、スキルレベルはまだどれも上がらなかった。


 まあ調合が1つ上がるまでは…というかポイズンスライムが1人で狩れるようになるまでは、もうしばらく地下1階から進めそうもないな。


 …とポチは思いながら布団に入った。もちろんスフィアは今日もそこらで掃除をしている。

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