とても平和な魔王城④……になるはずだった?
「朝決まった時間に起こしてくれるのはありがたいんだけど……こう、やること無いとなぁ。人間との
魔王ゼロは自室に籠って一人ぼやきながらコーヒーを
(うーん。今日はどんな暇潰しでもしようかなぁ)
ゼロはコーヒーをもう
今は見込みのあるS級冒険者をゼロの一軍隊と戦えるレベルに育てるのが趣味となっている。が、これも配下の者がやってしまい本当に暇である。
「ああ……。何か起こらないかなぁ。俺の知らない何かがぁ。ま、そんなの起こるわけないよな」
ゼロはもはや口癖のようになっているセリフを言う。いつもはこんなこと言った所で何かが起こった試しは無いし、何かが変わったりしたことは無かった。
だが、今日は違うようだ。勢いよくゼロの自室のドアが開かれる。メイドのルビが慌てて入って来た。
「魔王様! 緊急事態です!」
「ん? 何?」
(ルビでもこんなに取り乱すことは今までで無かった。とりあえず……)
ゼロは自室に『結界』を張る。この結界内の『時間は止まっている』と言っていい状態になっている。厳密には違うがここでは割愛させてもらう。
ルビはとっさの結界の展開に驚く。長年ゼロのメイドを務めているルビであっても結界の展開スピードと、この結界の能力がどんなものか見破れないことに。そんなルビを気にせず、ゼロはコーヒーカップ右手に淡々と状況を聞く。
「それで? 何が緊急事態なの? ……ああ、この結界内に入れば外の時間は気にしなくていいよ。外の時間は止まってるから。だからゆっくり、落ち着いて、順序立てて状況を教えて」
「……………へ、は、はい。……では、まずこちらの魔王城目掛けて何かが飛んで来ています。その飛来物はおそらく生物と断定。ただ、その速度が飛行と速度に自信のあるウイングウェザードラゴンの3倍の速度です。そして撃墜を試みようとしたところ、水対空にも強力な技を持つブルーオーバーの攻撃を弾き返されました。今、それはあと数秒後に魔王城から目視で確認できる範囲に到着致します」
「謎の敵……ということか。いや、敵と断定するはまだ早いな。……………よし、見に行こう」
ゼロは残りのコーヒーをイッキに飲み干しカップを机に置き席を立つ。
(お? なんだなんだ。なんか楽しいことが起こる予感!)
ゼロはテンションが上がっていた。今までに無い状況。今までとはひと味違う展開に。いつもは魔王城到着前に配下の者が潰してしまうか敵の情報が丸解り状態でゼロの元に辿り着く。だが、今回は違う。配下の者が向かうより早く、迎撃する前に何の情報も無く魔王城まで……いや、ゼロの元まで辿り着く。こんなことは無かった。成し得ることができる者が存在していなかったと言っていい。
この状況に浮き足立ってルビも一緒に転移させてテラスに行く。転移する間際に結界を解いておき、外の時間を進める。
ゼロの自室の時間も動き出す。
誰もいなくなったこのゼロの自室でコーヒーカップの中にコーヒーが残っている。
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