偵察者のぼやき

結局「死にたくないから」以外の『生きる理由』は思いつかなかった。






そして、俺は不気味なトーテムに手をかざした。

「村山、本当にありがとう……」





「何故、あなたは安楽死を希望するんですか?」

俺は、列に並んでいる人間一人一人に聞いていった。

その答えは十人十色だったが、どれもわざわざ死ぬ必要がある程のものとは思えなかった。

彼女は、人々の暮らしは年々豊かになっているというのに自殺志願者は殆ど減っていないと嘆いていた。澤部が「生きる理由が死にたくない以外にない」と言っていた時はコイツ正気か?と思ったが澤部と同じ境遇の人間は少なくないらしい。

列の最後尾の人間がその生涯を終えたところで街中のトーテムが全て光の粒子となって消えた。

実験終了らしい。中嶋から「人間って殺人に快楽を見いだす生物だっけ?」とメールが送られてくる。



コイツ、実験中ほぼ見てなかっただろ。






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