光
ここ周辺だと本来の使い方ではないだろうが、紅一点、唯一の赤いトーテムの近くで俺は一人の女性と口論になっていた。
「『は?』じゃねーよ!いったい何人ここだけで殺したんだよ!」
「……ああ、悪いけど列の最後尾から並んでくれる?」
女性は尚も全く悪びれた様子もなく意味のわからないことを俺に言った。
もしかしたら、今俺は現在進行形で洗脳されているのかもしれないと思った。
「ふざけんな!誰がお前のいいなりになんか……」
「あなた良くわからないわね。用がないならさっさと帰りなさい。ここにいると貴方も段々頭がおかしくなってくるわよ?」
(貴方も頭がおかしくなるから帰れ?)
「これは、あなたが洗脳した人々から寿命を搾取している……みたいな状況ではないのですか?」
困惑のあまり自分でも驚くぐらい弱々しい口調で質問する。
俺はどうも話が噛み合っていないようなので現在の状況の説明を求めた。
「なるほど、貴方にはこの状況がそう見えたのね」
「詳しく説明するわ」
この女性が言うには彼女は、安楽死を望んでいる人間の安楽死を手助けしているらしい。さらに、緑のトーテムが色々な所に点在していたのは安楽死を希望する人間があまりにも多いからということだ。
この緑のトーテムが放置されるという異常な状況から愚直に快楽殺人犯の仕業だと思ってしまったことに反省しつつ、一瞬遅れてこれはこれで大問題なのではないかと気づいた。
もう快楽殺人犯が存在するというのは俺の勘違いだと分かったのだが現状はある意味快楽殺人犯がいるという状況よりも異常な状況だと少し遅れて気づく。とはいえ、そこまで興味はなく「先程は本当に申し訳ございませんでした」と謝罪し、その場を後にした。存在しない快楽殺人犯を特定しようとしていた自分を殴ってやりたいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます