葛藤


「生きる理由……生きる理由……

趣味は……動画見るぐらいか。

得意なことをもうちょい突き詰めれば趣味になるかもな……

俺の特技は……「何時間正座してても足が痺れないこと」以外思いつかねえ!」

現在、村山に生きる理由を聞かれて「死にたくないから」以外の答えを探しているのだが中々思いつかない。他の人だったらぱっと出てくるんだろうな。などと考えていると考えたくなくなってくる。流石に趣味、正座というのも変だし足が痺れないというだけで別に楽しくはない。運動は子供の頃はできる方だったが外に出るのを面倒くさがっていたらいつのまにか平均以下になってしまった。

ふと窓の外を眺める。夕方にしてはかなり明るい。

「俺の人生とは対照的だなー……」

人と話すのは嫌いではないが俺の話は大半の聞いている人間を真顔にする力を持っているし大体活発に話すようなグループは頻繁にどこかに遊びに行ったりグループで食事をしたりしていて俺には合わない。俺はこう見えて友達と色々な所で遊び回るというのはあまり好きではない。この国は民主主義国家だがそれは言い換えれば「正しかろうと間違っていようと多い方が正しい」という理論とも言える。その影響かは分からないが大人数で遊びに行くと少し変わった意見、言動、時には注文や食べるものなどといったものだけで簡単に悪者、「ヤバイやつ」のように思われてしまう。ちょっとした好奇心でイカスミスパゲッティなどを食べた暁には良くて変人扱いだ。中々答えは出ず、俺はいつも通り動画サイトを開く。その中で「生きる理由が見つからないと言う君へ」という動画を見つけた。今までの俺ならスルーしていたと思うが今日は藁にもすがる思いでその動画を開いた。で、ふて寝した。「人間は行きているだけで尊い」とか「甘えるな」とか「俺の若い頃はな……」という話をひたすら聞かされる10分間だった。ちゃっかり低評価ボタンに触れる。四桁にも登る低評価数を一増やすことしかできない自分の無力さを感じてしまう。精神的な意味で窮地に立たされている若者はこういう時どういった反応を見せるのだろうか。俺の場合はふて寝したのだが。外ではカラスが鳴いていたが、なんだか俺を侮辱しているようにも感じられた。



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