カルト
この日の夜、もう少しで20時になるというのに昼間のように外は明るかった。
俺は家から唯一、確認できるトーテムを窓から覗いたが驚いたことに緑色のまま放置されていた。
死体は残らないため何人殺されたかは分からないが
このような状況になると快楽殺人者が出てくるというのはドラマやアニメなどでは最早お約束とも言える展開だがやはり現実でもこういう奴が出てくるものなのか……
俺は自分の利益のために他人を蹴落としている奴を見ても何も思わないが相手に危害を加えること自体を目的に誰かに危害を加える人間が大嫌いだ。何故かこの手の人間はどこに行ってもいるし何故か減らない。俺は、普段こういう柄ではないのだが快楽殺人を働いたと思われる人物を特定することを決意した。
あれから数分、緑のトーテムの周りを探したが当然もう快楽殺人者は居なかった。
その代わりにいくつか緑色のまま放置されたトーテムを見つけた。あのトーテム一つなら単純にあのトーテムから被害者の寿命を採り忘れただけで普通に寿命を延ばすために殺人を働いている可能性も僅かだが考えられた。しかし、これにより疑惑が確信に変わった。「必ず見つけてとっ捕まえてやる」と一瞬思ったが手を出すことは俺には出来ない。もっと勇気と実行力があればと時々思ってはいたがここまで強く思ったのは今回が初めてだろう。
あれから更に30分程度が過ぎた。かなり家から遠いところまで来たが、まだ周りには緑のトーテムが沢山ある。これで犯人が一人という方が無理があるだろう。
俺は、このままだと埒が明かないのでタクシーで緑のトーテムと赤のトーテムの境目の近くまで先回りすることにした。タクシーの中からも周囲をある程度確認できるので現行犯逮捕……といっても警察は現在手を出せないらしい上に俺もみだりに干渉する勇気はないので見つけても殺人をやめるように懇願するぐらいしか出来ないのだが。
しばらくすると、目の前にはにわかには信じがたい光景が広がっていた。一人の女性がトーテムの近くに立ちその近くには行列ができている。その女性の前で、列の先頭の人間は赤のトーテムに触れている。しかも自分から。その女性の目はどこか悲しそでとても好んで殺人を行なっているようには見えなかった。もしかしたら聞く耳ぐらいは持ってくれるのではないかと思い慌てて運転手にここで降ろしてもらうよう伝えた。
タクシーから降りて数分後、遂にかなりの人数を列に並ばせてトーテムを使って殺したであろう人間の目の前まで来た。
「俺が来るまでに何人殺したんだ。あと、お前別に寿命が欲しいわけじゃないだろ」
特に最後の方は口調が荒くなってしまったかもしれない。
「……え?」
その女性は少しも悪びれずキョトンとした顔でこちらを見ていた。
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