第23話 世界を壊す、作戦会議その②DO

      ◇


 聖女との決戦当日、私達は作戦の最終確認を行うため、リビングに集まっていた。


 私達の最終目的は、元の世界に帰るゲートを開けること。

 世界を壊すのは、あくまで手段に過ぎない。


 私は作戦書を片手に、今日は男の姿をしているフリードに話しかける。

 日によって性別が異なる彼の存在には、まだ慣れない。

 しかし、かくいう私も昨日から男の姿のままだった。


「フリー……ド、さん。作戦の最終確認をお願いします」

「最終確認もなにも、各自指示された通りに動けば問題ないだろう?」


 私達の緊張をよそに、フリードはいたって落ち着いていた。


「でも、心配なので確認させてください。じゃあ、私が確認するから、アンとマホはわからないことあったら言ってね?」

「うん!」

「りょーかい」


 私達の作戦は、大きく分けて三段階だ。


一、 まず、聖教都にフリードさんが手配した魔族の大群をけしかける。

  その際、アンは形式上、私達の人質となること。アンの引き渡しは聖女と直接行

  う、と要求する。

二、 聖女が単身で出てきたら、私が全力攻撃。聖女の反撃を待つ。

  その間、マホは後方で待機。流れ弾や横槍が入らないようにする。

  私が競り負けていたら、アンは聖女から大天使の契約を奪い、力を削ぐ。

三、 聖女と私の力をぶつけあい、世界を壊し、歪ませる。

  元の世界へのゲートが開くはずだから、そこから三人で帰る。


 ――おさらいすれば、そんな感じだった。


「改めて見ると、おおざっぱだよね?まぁ目的が目的だし、仕方ないか。戦ってる間、凛には指一本触れさせないから安心して。リリエルなら、絶対守ってくれる」

「凛ちゃん、ピンチの時はすぐ合図してね?私も聖女様に、一泡吹かせちゃうから!」

「ふたりとも、ありがとう。じゃあ、先に行って、合流場所の近くで待機してるね」


 私達三人は、各々のやるべきことを再確認し、大きく頷いた。


 今までいろいろあったけど、今日でなにもかも終わりにする。

 ――この世界ごと。


 私は決意を胸に、ムーちゃんに跨る。

 アンとマホはもちろん、フリードも見送りに来てくれた。


「我々は後から転移魔術で追いつく。私の転移ではその竜は運べないからな。夕刻には魔族の侵攻(パレード)が始まるだろう。聖女が出てきたら、手はずどおりに」

「はい」

「あと――これを」


 フリードが大量の紙片を渡してくる。


「――これは?」

「人質を今日の夕刻に処刑する旨が書いてある紙片だ。聖女が引き取りにこなければ……だが。これを上空から聖教都中にばら撒きなさい。市民の目に触れさせておけば、万が一にも聖女が人質を見捨てることはない」

「縄で縛られてる私の写真が載ってるぅ……なんか、恥ずかしいよぉ……」

「はは、ほんとだ。一昨日に転写魔術で撮ってたの、これか。アンに殴られたっぽいメイクしてって言われた時は、何かと思ったよ」

「ふたりとも、ひょっとして楽しんでる?」

「これ作るのは結構、楽しかったよねぇ?」

「――ね。文化祭でゾンビつくったの思い出した」


 まさか、緊張してるのは私だけ?なんだか肩の力が抜けるなぁ……

 私は紙片を受け取り、気を取り直してムーちゃんに出発の合図をした。


「じゃあ、行ってきます」

「ぐる!」

「あとでねぇ!」

「がんばー!!」


 ムーちゃんが勢いよく飛翔すると、ふたりの姿はあっという間に見えなくなった。

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