第13話

今日一日の感想を言うと、全く授業に集中出来なかった

しかも、男子に一日中睨まれるオプション付きだった

しかし、それはしょうがないだろ!

誰も沖村さんに教科書貸そうとしなかったんだし、俺の隣には姫路さんしかいない

結果として不可抗力である

まぁ俺がもしこの立場でなかったら確実に文句を言っているが...それは関係ないんだ!


先生の中身はあまり無いのに嫌に長い話を聞きながら、俺は今日起こった事を思い返し、早く帰りたいと思っていた


「よーし、じゃあ気をつけて帰るように、気をつけ、礼」


先生がそういうと生徒が徐々に散っていった


俺も帰るか

今日は壮介も用事があるって言ってたしな、

と、忘れるところだった


「姫路さん、今日はありがとう、めっちゃ助かったよ」

すると姫路さんは何か待っていたような様子で

「全然良いよ、仁君の役に立てたなら私も嬉しいな!」


な、なんて良い人なんだ!

こ、こんな良い子に邪な感情を抱いてたなんて...

そりゃぁファンクラブも出来るわ


「それでね、仁君がよかったらなんだけど、この後「ねぇ、沢村仁、今からついてきてくれない?」」


姫路さんが何か言おうとしていた所に話しかけてきた沖村さんに俺は困惑した

なぜ俺に話しかけてきた?

少なくとも朝は俺に限らずみんなに好意的ではなかったぞ?

この際、思った事言った方が早いな


「何ですか?沖村さん?

俺は沖村さんについて行って何されるんですか?」

ちょっと冗談っぽく言ったがこの問いかけでも十分聞きたいことを聞き出せるはず...


「特にこれと言ったことはないけど、教科書を返すのと、私に校内を案内してもらいたいの」

特にこれと言った反応もなく、淡々と述べていく沖村さんに気をとらわれていたが、サラッと大事な事を聞き落とした気がするな...

「あの、聞き間違いだったら申し訳ないんですけど、俺に校内を案内しろって言いました?

俺、一応男子なんですけど良いんですか?」


そう、これだ!

俺が引っかかっていたのは


教科書を返すのは全然わかるんだ、むしろ向こうから返してくれる方が助かるが、確か沖村さんは朝、男子には案内されたくないって言ってなかったか?


「沖村さん、朝何か言って無かったけ?」

「待て待て、なんで沢村なんだ?」

「ま、まさか沢村くんの事気になってるんじゃ」

など外野で何か考察しているが、かくいう俺も思考が定まらないでいた



「別にあなたなら良いわよ、早く来て」


それだけ言うと彼女は早くしろと言わんばかりにずんずんと先に歩いて行った

それこそ周りの目など少しも気にせずに


マジかよと思いつつも俺は先にいく沖村さんについていくように少し小走りした




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しばらく沖村さんについていくと沖村さんは中庭に着いたくらいで歩くのをやめた


「で、今度はちゃんと話してもらうけど、なんで俺を呼んだんですか?

別に俺じゃなくても、他の人でも良かったんじゃないですか?」

そういうと彼女ば感情が無くなった、いや、元から無いような目をしながら言った


「あなたについてきてもらったのは、素の私を見ても優しくしてくれたから

他の人はこういう態度を取ると差し伸べた手を引っ込めてしまう人がほとんど」


まぁ確かにあの後話しかけたのは、俺だけだったような気がするが


「沖村さんは女優ですよね?

映画とかと大分印象が違いますが、演技とかで素を隠せば良いのでは?」


「それは無理、あれは偽りの私だから

作られた、出来上がったものになりきるのは出来るけど、何かを繕うための、表面上の物になるのは無理

私には感情がないから...」

そういう彼女の顔は、そんな大事な事を話しているのにも関わらず、表情を少しも崩さない事に信じるほかなかった


「なんでそんな大事な事を俺に言ったんですか?

自己紹介で言わないって事はみんなには知られたくないって事だとは思うんですけど」


「別に私は知られてもいいけど、マネージャーに知られるなって言われているだけ

そしてあなたに言ったのは、学校生活を手伝って欲しいから

前の学校では一人だと何かと不便だったから」


そういう事か...

別に俺が手伝う義理はないが...




「わかりました

俺で出来ることがあるなら協力します」


「お願いするわ、それと同い年だから敬語は使わなくても良いわ、沢村くん」


「わかったよ、沖村」


今の話を聞いて断れるわけもなく複雑な事情に足を踏み入れてしまった





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