双極の紡ぎ手 ソアラ・エクシア
千の音、千の唄を紡いできた私だが、一度だってその唄を唄ったことはなかった。
私にその力、その資格がないことがわかっていたからだ。
星よ、貴様は知っているか。
唄い手たちが何を想って唄うのか。
踊り手たちが何を想って踊るのか。
それはここにある全て、そしてここにない全てだ。
過去も現在も未来も、家族も友人も仇も他人も、動物も植物も大地も空も天候も、全てを背負い、全てを想い、唄い、踊り、そして神々の奇跡を願い、祈り待つのだ。
ちっぽけな存在の、吹けば飛ぶような願いなど、神々にとってどれほどの価値がある。
願いそのものに価値などない。
願うことそのものに、計り知れない価値があるのだ。
そしてそれが、星を腐らせた。
願うことが優先され、奇跡は陳腐になった。
くだらない唄、吐き気を催す踊りが蔓延した。
彼らが持っていたあの輝きはもはや、どこにも存在しなくなったのだ。
現在を見つめすぎた奴らは、過去を振り返ることを忘れ、未来を見通すことを諦めた。
想いの無い生き物が作る何が素晴らしいことがあるのか。
だが星よ、今の私には、想う気持ちがある。
唄うことができる。
歪みきった間違いを直し、彼らの純粋さで溢れている世界を作り直すのだ。
取り戻すのではなく、新たに作るために、そのために全てを終わらせたいのだ。
始まりとともに終わりが、終わりとともに始まりがある。
それこそが私の想い、願い、祈りの根幹だ。
揺るぐことのない信念だ。
星よ、双極の紡ぎ手ソアラエクシアが、ここに唄うぞ。
星、貴様の終わりと、そして新たな創造を。
さあ共に、滅びゆこう。
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