第6話 調査

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『男』は自宅の部屋で一人で話していた。


「何故お前はあんな事をした」


「何を言ってる。お前が望んだ事だ」


「馬鹿な事を言うな。私はそんな事は望んではいない」


「俺はお前の分身なんだぜ。俺のする事はお前が望んだ事だ」


「お前は狂ってる。何故罪の無い人を殺す」


「俺は目の前に母さんに似た若い女がいれば殺す」


「何故だ。お前には人の心は無いのか」


「それはお前が一番良く分かってる事じゃないか」


「私が? 私はお前が何を言ってるのかわからない」


「お前は若い女に深い怨みがある。特に母さんに似た女は許せ無いと思っている。だから俺が代わりに殺してやった」


「馬鹿な事を言うな。俺は母さんを愛してる」


「だけど捨てられた事を怨んでる」


「違う・・・」


「違わないよ。だから俺が存在するんだから」


「・・・」


「最初に殺した女を覚えているか?」


「・・・」


「20年前。お母さんに良く似た女がいた。俺も殺すつもりはなかった。だけど、あの女は妊娠してた。何故だ? 俺達を捨てたくせに、また子供を産もうとしてた」


「何を言ってる。その人は母さんじゃなかっただろ?」


「だけど良く似てたから俺は我慢出来なかった。殺してやった。なのにまだあの女は生きている。だからもう一度殺さなければいけない」


「やっぱりお前は狂ってる」


「ああ、多分な。だけどお前も狂ってるんだよ」


「・・・」


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「翔、何か判ったか?」


「それがどうも・・・マサさんの言う通りでした。あの人は素晴らしい人です。とても殺人鬼には思えません」


「どういう事だ?」


「彼は普通の会社員で独身です。彼の生活は質素で、給料は生活費以外全て寄付かボランティアに使ってるようです。それも若い頃からずっとだそうです。休みの日には児童養護施設や老人ホームに慰問に周り、器用な手先を活かして手品を見せてるようです。何処でも彼の評判はとても良いみたいです。これがその写真です」


「なるほど、優しくて爽やかそうな男だな。似顔絵とは雰囲気が違うが似てると言えば似てるか?」


「ですよね。僕も殺人鬼にはとても見えませんが」


「う〜ん。どっかで見たことがある顔だが?」


「イケメンの顔って似てますから」


「なあ、翔。独身のまだ若い男が全く遊ばずにボランティアばかりしてるのって逆に不自然じゃないか?」


「僕にはわかりませんが、ボランティアが好きなんじゃないんですか?」


「それにしても少しは遊ぶだろ? 女にもモテそうだし。翔、悪いが何故彼がボランティアを始めたのか調べてくれないか? 」


「分かりました。さっそく調べて見ます」


「よろしく頼む」



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私はだんだん退屈してきた。


マスターとゆっくり過ごしたいのにマサさんや翔さん、翔さんの事務所のスタッフさんが入れ替わりやって来ては私を除け者にして話し込んでる。


家からはマスターと一緒じゃなきゃ出てはいけないと言われてるし。


あ〜あ た い く つ


お母さんはどうしてるかな?


多分泣いてるよ。


って言うか、さっき電話したら途中から泣き出した。


「早く帰って来て」だって。


もう寂しがり屋さんなんだから。


でもお母さんもそろそろ子離れしないとね。


私も成人したし、結婚したら一緒に住めるかわからないのにね。


まあ生まれてから今までずっとお母さんと二人だったから寂しいのもわかるし、私も寂しいんだけど、今の私にはマスターがいるし。


私とマスターが結婚したらお母さんどうするんだろ?


健太さんに会わないのかな?


でも今はお母さんの心配してる場合じゃないよね。


だって私、狙われてるみたいだし。


あの似顔絵の男だったらかなりヤバイと思う。


あの不気味な顔は忘れられない。


もう何人も殺してるみたいだし。


ほんと早く解決して欲しい。


解決したらマスターとイチャイチャするんだ。

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