第5話 避難

私はマスターに連れられて郊外の一軒家に引っ越して来た。


引っ越したって言うか避難して来たんだと思う。


多分あのマンションに居てはとても危険なんだ。


もしかしてだけども


考えたくないけど


あの若い夫婦は私と間違えられて殺されたの?


だったら哀し過ぎるし、私はあの夫婦にどうやって謝ったら良いんだろう。


赤ちゃんにもご両親にも・・・ごめんなさい




でもなんで?


なんで私が狙われなきゃいけないんだろ?


わからない。


マスターは知ってると思うけど、話してくれない。


だから私は知らない方が良いんだろうな。


今の私はただマスターを信じるだけだ。





その一軒家は一見普通の家に見えるけど、セキュリティは万全みたい。


マスター達の隠れ家的な所だって。


そこにはマサさんも翔さんも既に集まってくれていた。


「悪いなマサ、翔」


「何を言ってる。拳ちゃん、俺達は拳ちゃんのためなら何でもする気だよ。なあ翔」


「はい、拳さんの為なら俺、命も要らないです」


「ありがとう。マサ、翔。俺は良い仲間に巡り会えたよ」


私は三人を見てて羨ましくてしょうがなかった。


男の友情ってやつ?


本気で三人はお互いの為なら命さえあっさりと犠牲に出来るんだろうな。


同じ修羅場を何度もくぐり抜けてきた絆?


女の私には立ち入る事が出来ない世界のように感じて少し寂しかった。


それから三人はまた話し混んでた。


私は手持ちぶさただったけど、この三人が居てくれるんなら安心出来る。




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マスター

「今回も狙われたのは明日香だ。殺された夫婦は間違えられたと思う」


マサ

「しかし間違えて殺された若い夫婦は可哀想なだな」


「本当に可哀想です。その『男』は殺人鬼ですね。許せません」


マスター

「だから美和を殺したのは似顔絵のあの『男』だ。マサ、何か手掛かりは掴めたか?」


マサ

「それが似顔絵を元に探したんだが見つからないんだ。ただひとりだけ引っかかるんだが・・・まさかな?」


マスター

「ん? どういう事だ。似顔絵に似てないのか?」


マサ

「似ては・・・いる。が雰囲気が違い過ぎるんだよ」


「雰囲気って。それは個人の印象なんじゃないんですか?」


マサ

「しかしな。そいつはスポーツマンで爽やかで、誰からも好かれている奴なんだ。人望もある。殺人鬼とはかけ離れている。ちょっと考えられないくらいに」


マスター

「なあマサ。人は見かけに寄らないって言うぜ。人間なんて一皮剥けばわからないもんだ。翔、そいつを調べてくれるか?」


「はい、拳さん。うちの事務所のスタッフに24時間張り付かせますよ。結構優秀な奴が揃ってますから任せてください」


マスター

「ありがとう、翔。よろしく頼む。俺はもう二度と大切な人を失いたくないんだ」


マサ

「ああ、拳ちゃん。わかってる」


「明日香さんには指一本触らせません」




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その夜マスターの部屋から大きな声が聞こえた。


私は心配になって部屋を覗くとマスターがひどくうなされていたんだ。


私は直ぐにマスターにしがみついて

「マスター、大丈夫だよ。私はここにいるよ」って言った。


マスターは汗びっしょりだったけど、目覚めると

「ああ、美和。無事だったか? 良かった悪い夢を見てた」って言ったんだ。



マスター・・・


私は明日香だよ。


美和じゃないよ。


間違えるな・・・バカ



でも知ってる。


マスターの前の奥さんの名前は『美和』さんだって。


だから、私はそのまま何も言わずにただマスターにしがみつくしか出来なかった。

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