第6話 戦慄のアイスクリーム

 「あんたは、いったい1日にいくつアイス食べるの!?」と妻が言う。

 ええっ、と俺はたじろぐ。そんなに食べたかな?そう言うと妻は目と口と鼻の穴を全開にして言う。

 「朝顔1つ、昼1つ、夜1つ」

 それは、あんな顔して言うほど大変なことなのかな?

 しかし、妻に逆らったら恐ろしい。俺は怯える。

 「分かったよ。1日1つにするよ」

 「そういうことを言ってるんじゃないの!」

 ????????

 何だなんだナンだナンダnanda?

 「じゃあ食べないよ」

 「ほっんっとにわからない人だね!一生食べないでいられるのかい?」

 「一生って・・・」呆然とする。

 アイスクリームを一生食べない。あり得ないことではない。そもそもアイスクリームなど無い時代だってあったのだ。でも、食べない、絶対に食べないということが現実にあるのだろうか。大体なんでこんな話になったのだろう?

 アイスが悪いのか、俺が悪いのか。

 なんでアイスを食べるのか?考えてみると難しい。生死には関わらない。いや、糖尿病の人にはカロリーが高いから良くないのかな?でも、糖質オフというのもあるぞ。それに俺は糖尿病じゃない。でも、甘いものは麻薬みたいなもんで、脳が欲するようになる、つまり中毒になるとも聞いたような気がする。シャブ中ならぬアイ中。アイチュー、愛チュー、なんかかわいい。

 いやいや、そんなこと言っている場合ではない。アイスだ。問題はアイスなのだ。ん?「問題はアイス」ん?これは問題なのかな。question?

 アイス自体に罪は無い。「無い」と言い切って大丈夫か?この世に絶対なんてものはない。そう思いしらされてきた。良かれと思ってやったのに。涙がこぼれる。

 何だか変だぞ。俺は何を考えねばならないのか?

 わからない。わからない。人間は必ず死ぬ。死ぬまでにアイスはいくつ食べるのだろう。

 でも、そんなことは考える価値があるのか?俺はアイスを食べるために生きてるんじゃない!

 しかし、しかし、何のために生きているんだ。しかし、鹿死。鹿も死ぬのだ。何だこりゃ。

 俺はどうなってしまうのだろう。

 翌日、仕事から帰ると妻が言った。

 「アイスたくさん買ってきたわよ」

 俺は戦慄した。

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