第16話

「王様ゲームをしましょう」


「は?」


夕食を済ませた俺らは、各々好きなようにやっていた。俺は摩耶とミリアと一緒にモン○ン。そしてハル姉は…勉強かと思ったらロクでもねぇことをしてたようだ。


「ルールは簡単!!いつも王様の命令にはなんでも従ってもらう!!だけど長期に影響が出るのはダメ!例えば「結婚して」とか「死んで」とかはNGね」


それを聞いた途端摩耶とミリアの空気が冷えていくのを感じる。何か声をかけたかったが、ここで声をかけたらまずい気がするので辞めておく。


「まぁまぁそんなに落ち込みなさんな。だけど、キスとかならオッケーなのよ?」


「「っ!?」」


「オマケに10秒間ハグとか」


「「っ!?!?」」


「どう?やる?」


「「やる!!」」


「俺はやらねぇから、じゃ…ぐほぁっ!」


さりげなく立ち去ろうとしてゲーム離脱を図ろうとした俺だが、背後からミリアに押し倒され寝技を決め込まれる。


「待て待て、お前が居なければ意味がないだろう。お前からキスをしてくれるチャンスなんて殆どないかもしれんしな」


「離せミリア!!なんかやばい匂いがすんだよこのゲーム!!」


下で暴れてミリアを引き剥がそうとするが、体制が悪いせいで全く引き剥がせない。


「暴れるな。暴れたらキスするぞ」


「なんだよその強姦魔ミテェな言葉!」と言いながらもここで暴れればキスされるのでおとなしく暴れるのを辞める。


「よし、ではゲームを始めようか」


………

……


「おっ、私が王様だ」


ゲームに参加させられた俺は、大人しくクジを引く。そこには3番の文字がある。大丈夫だ。名指しじゃなけりゃ大丈夫。


「じゃあ〜、3番の人が2ターン後まで私の椅子になること」


「ごふっ!!」


大丈夫じゃなかった……そうだ。冷静に考えりゃ確率は三分の一。じゃんけんみたいなもんだから全然大丈夫じゃない…。


「ほら3番、早く来なさい」


「ハル姉…マジで覚えてろよ…」


大人しくハル姉の場所で四つん這いになると、座られる。こんなのドMしか喜ばないだろう。


「ふふっ、良いわねこれ。何かに目覚めそう」


辞めろよマジで。ハル姉がSに目覚めたら手がつけられなくなるレベルじゃなくなる。本格的に俺の貞操も危なくなる。


「むっ…ほら!さっさと次のゲームに行くぞ!!」


ハル姉が割り箸を回収して、再び俺らが引き抜く。次の俺の番号は2番だった。


「あっ…私だ」


「摩耶か」


摩耶なら安心……そう思いかけた瞬間、俺の脳裏に浮かぶ光景。林間合宿での覗きに加え俺に強引にキスして来た。一歩間違えれば犯罪者の摩耶に安心なんて出来るはずがない。


「じゃあ…1番から3番までの人が10秒間私の胸に触れる事」


「ぶふっ!!」


「成る程、同性になら胸を触られても良い。だけど異性になら好きな男子以外には触られたくない。これは、この状況でのみ発動出来る命令。流石摩耶だわ」


「冷静に分析すんな!!嘘だろ!?マジでやるのか!?」


「当然。それともタツは、こんな簡単なこともできないの?」


ハル姉は摩耶の大きくとも小さくもない胸を揉みしだく。


「っ」


男にとってそれは刺激的な、とてもけしからん光景だったが10秒経つと手を離した。


「さぁタツ、今のようにやってみなさい」


「出来るか!!」


女子の胸を揉みしだくなんて出来る訳がない。だけど王様の命令は…絶対だ。

摩耶は少し顔を赤らめながら俺に近づき、髪を指で弄る。


「ど、どうぞ」


男にとってかなりマズイ事になりそうだ。今も理性を抑えるのに精一杯なのに。


「言っとくけど、あとで通報とか辞めてくれよ?」


「…うん」


少し遅れながらも返事をして、俺は摩耶の胸に掌を重ねた。


「んっ」


摩耶が色っぽい声を出すと同時に、掌から感じる鼓動の音が早くなる。マシュマロのように柔らかい感触に時間を忘れそうになる。

そして…次第に口を摩耶に近づけ…


「っ!?」


口を押さえて摩耶から遠ざかる。当然胸からも手を離し、赤くなる顔を抑える。


(俺…今何をしようとした?)


間違いなく理性が崩れかけていた。もしこの場に摩耶しかいなかったら…俺は自分がどうなっていたか分からなかった。


「達海」


「なんだ?んぐっ!」


摩耶の声に冷静を取り戻しながら答えると、俺の唇が柔らかいもので塞がれる。近くには摩耶の顔があり、シャンプーのいい香りがした。


「んっ…んむっ…ぷはっ」


摩耶の顔が遠ざかると、俺たちの顔は真っ赤に変化していた。


「ふふっ…達海がしたそうだったから、私がしてあげたの。感謝してよね?」


「ま、摩耶…お前!!」


怒声を放とうとするがそれは否定できない事であり、それを諦める。


「は、ハル姉!!とっととやってくれ!」


強引に話を変えて、ハル姉にそう告げ、少し顔を膨らませてこちらにジト目を向けられた。


「タツ、今度私にもね?」


「するか!!」


そして、俺らは割り箸をハル姉の元に戻してシャッフルして、再び引き抜いた。

俺の番号は1番だった。


「おっ、王様は私か」


王様はミリアだった。

随分とまぁ…俺に王様が回ってこねぇこったな。


「ふむ…私は達海と一緒に寝たいのだが、達海、お前は何番だ?」


「言う訳ねぇだろ…」


勿論寝ると言う意味が夜の営みをするってわけじゃ無いだろう。それだとルール違反になるからな。でも普通に寝ると言っても、女子と寝るなんて…ねぇ?


「摩耶、ハルカ、お前らは何番だ?」


「2番」


「3番よ」


俺はこの世が終わりが見えた気がした。

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