第13話・お泊まり会

玄関のドアを開けて自分の家に入ると、ハル姉が泣きながら抱きついてきた。


「だづびぃいいいいっ!!よぐがえってぎたわねえええええ!!」


「ハル姉…たかが1日離れただけだろ?」


たったそれだけでこの有様、修学旅行とかになったら絶対ヤバイことになりそうだ。


「おかえり!!私にする?私にする?それとも、わ・た・し?」


「部屋でゴロゴロする」


第四の選択肢を選んで部屋に入ろうとするが、その際もハル姉がずっとひっついたままだった。


「ぶー!折角夏休みに入ったのに、このままでいるつもり?もっと私とイチャイチャしなさいよ!!」


そう、俺らは林間学校が終わった直後で夏休みに突入した。だけど出されてる宿題の量が半端じゃ無いのでそれを早めに終わらせなければならない。


「そんなこと言われてもな…」


そんなこと言われても困る。普通に困る。そんな事を思っていると、インターホンの音が鳴り響く。


「ん?誰だ?」


ちょうど玄関近くにいたので誰かも確認せずにドアを開けた。そこに立っているのは、ミリアと摩耶の2人だった。


「よぉ、2人ともどうしたんだ?」


「今のハルナと達海を一緒にするのは、飢えたライオンの中に子鹿を放り込むのと同じだから監視に来た」


例えが凄すぎるな。じゃあ俺が子鹿でハル姉がライオンなんだろうか。


「あら、2人とも来たのね。私とタツはこれから用事があるからゴミ箱に帰ってくれない?」


「幼馴染だからって調子のってんじゃないわよ?達海のファーストキス奪ったの私なんだから」


「へぇ…言うじゃない」


ハル姉の後ろに龍、摩耶の後ろに虎が見える気がする。この時にも唯一冷静なのがミリアだった。


「なぁ達海、海に行かないか?」


「海?」


「あぁ、夏といえば海だ。達海と2人でいけないのがとても残念だが、この4人で…な?」


「それも良いな…」


林間学校が終わったすぐだが、別に疲れた事もないし、楽しい事なので喜んで参加させてもらうことにした。


「わぁった、参加する」


時々ハル姉に海に駆り出された事もあったので、自分の海パンはある。


「ありがとう…なら少し買い物に付き合ってくれないか?その…去年のサイズと合わなくなってしまってな…」


その言葉に少し顔を赤らめる。

だってしゃあねぇだろ!?そんな事言われちゃうと意識しちゃうじゃん!!ね!?


「お、おう…」


すると、俺の肩にポン、と手が置かれ、寒くないはずなのに背中に鳥肌が立つ。


「へいタツゥ、何2人で会話始めちゃってるのかな?」


「私の買い物にも付き合ってもらうからね?」


「あ……あい…」


半分泣きそうになりながら、俺はその言葉を絞り出すのだった。

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