第6話

「いやぁ、タツと買い物なんて久しぶりね?」


俺は今現在、ハル姉と一緒にショッピングモールに来ている。道端でばったり会ったから俺についていくらしい。


「そうだなぁ…ってか…俺に向けられてる視線がいてぇ…」


ハル姉と俺じゃ釣り合いが取れてないなんてレベルじゃない。月とスッポンどころかダイヤモンドと砂つぶみたいなもんだ。


「ふふっ、じゃあ私たちはカップルに見られてるわけね?」


「多分そうだろうな…」


「ふふっ…」


ハル姉は普段見せない超ニヤケ顔を見せて、俺の腕に抱きついた。


「おい…!?何してんだよ…!?」


「えー?だって今はカップルなんでしょ?」


「言ってねぇよ!」


「うーん…でも私はタツとデートしたいなぁ…」


その時に俺の脳裏に過ぎったのは、あの3人に告白された光景だった。


「……なぁハル姉…」


「なーに?」


「ハル姉はさ…俺の事好き…なんだよな?」


それを念のため聞いておくと、ハル姉が俺の腕を握る力がほんの少し緩んだ。


「…えぇ、好き。大好き」


「なんで俺なんかを好きになったんだよ。ほら、俺って頭も運動も平凡だし、金持ちってわけでもねぇ…顔もあんま整ってる訳じゃねぇし…」


「そうね。確かにタツは平凡、ザ・平凡だけど、舐め回すような目では絶対見ない」


俺にはその意味が良く分からなかったが、ハル姉の顔は、少し怯えた様子だった。


「中学校の頃…男子の目が極端に変わったわ。ほら、私ってばその…胸が少し大きいから…」


「っ…まぁ…否定はしねぇ…けど…」


若干恥ずかしがるそぶりを見せるハル姉に、俺も恥ずかしくなって目を逸らした。


「私へ向けての男子の噂話は、正直とても気持ち悪かったし、その目も気色が悪かった。だけどタツは、そんな事一切しなかったから…多分その時から…いや、多分もっと前から、タツに惹かれてったんじゃないかと思うわ」


ハル姉はそう言って笑い、俺の腕から手を離して少し離れて俺と対峙した。


「タツは将来、絶対私に告白するわ」


なんでそう言い切れるんだよ。と言いたいところだったが、それを言う暇を与えてくれなかった。


「だって私が本気で好きになって、本気で堕とそうと思ったんだから。絶対に、逃げられると思わないでね?タツ」


ハル姉は妖艶な悪魔のような微笑を浮かべた。


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