第4話

摩耶の家にミリア、ハル姉と俺で集まって勉強会を開くことになった。リビングの席に座らされて、各々のテキストを開く。俺も一応とある国立大学を目指して居るので、結構真剣にやる。


「えっと…」


数学、国語、理科といった部類はまぁまぁ得意だが、俺が1番苦手なのは受験に1番必要な英語。こればっかりはいつも赤点ギリギリなんだわ。


「なぁミリア、この問題の文法なんだけどさ…」


隣の席に居るミリアに英語を習う事にする。


「ん?あぁこの問題か…まずは…」


ミリアのとんでもなくわかりやすい授業に感服を受けながら、スルスルと頭の中に入ってくる。


「すげぇ…ありがとなミリア」


「っ!?ど、どうってことはないさ。ほかに分からない問題はあるか?」


「…少し気がひけるんだが…」


その後もミリアに英語を教えてもらうのと同時に、ミリアの国語などを教えていく。

徐々にミリアとの距離が近くなってるように感じる。だって顔と顔との距離がマジで5センチくらいしかないんだから。


「ミリアァ?ちょ〜〜っとおいたが過ぎるんじゃないかしら?」


「抜け駆けは…許さない」


前方の2人からとんでもない殺気が飛んでくるが、ミリアはそれを真っ向から受け止めた。


「隙があったから突いただけ。騎士として生きるのなら当然のことだ」


あらやだ何このイケメン。言ってること意味ワカンねぇけど。


「確かにそうね。隙を作った私たちが悪いわ。でもこれはあくまで勉強、タツを誘惑するのはダメなんじゃない?」


「……ほら、達海の好きなクッキー焼いたから、食べない?」


ミリアとハル姉の喧嘩が始まりそうなところを、摩耶は何処からか取り出したクッキーの入った皿を出した。

以前摩耶が俺に作ってくれたクッキーなのだが、絶妙な塩加減が良くて何回か頼み込んで作ってもらったこともある、俺の大好物の1つだ。


「こ、これは…良いのか?」


「えぇ、いっぱい食べてね。それと分からない事があればなんでも聞いて?」


「マジか!すげぇ助か…っ!?」


背筋に冷たいものが走り、恐る恐る振り返ってみると、とんでもない眼光を放ったハル姉が居た。


「ねぇタツ〜、小学生の頃の『ハル姉だいすき〜!』って言ってくれたわよね?もう一回言ってくれない?」


「誰が言うかそんな恥ずかしい事!!」


確かに小学2年の頃か、そんな事言ってハル姉に抱きついた事があるが、昔の話だ。今はそんな事しない!絶対しない!!


「あら〜?良いのかしら?それならもうあのハルちゃん特製ハンバーグ作ってあげないぞ?」


「それだけはマジで勘弁してください俺の命に関わります!!」


1秒で土下座をかます。仕方ねぇだろ!?だってハル姉の作る料理はそこらのシェフより断然美味いし、俺もとっくの昔に胃袋なんて掴まれた。だからアレが食えないとなると普通に死活問題だ。


「ふふっ、見たかしら。これが義理の姉の特権よ!!」


ハル姉は何かに勝利したかの様に高笑いをしたが、俺にとっちゃ悪魔みたいな笑いにしか聞こえなかった。

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