第2話
「はぁ…マジ疲れたぁ…」
今日1日で野郎どもに連れ回されて大変だった。ノソノソと学校の玄関に向かって歩くと、俺のロッカーの前で既にハル姉が待っていた。
「久し振りに、一緒に帰らない?」
「ハル姉…別にいいけど」
断る理由も無いし、俺は全然構わない。ロッカーの扉を開いて靴を取り出そうとすると、俺が身に覚えのない紙がある事に気がつく。
「…は?」
それを取り出してみると、そこにはこう書かれていた。
ーーーーー
荒山達海くん、貴方のことが好きです。私と付き合ってください。屋上で待ってます
ーーーーーー
間違いない…これは、ラブレターって奴だ。
「な、ななななな、なん、なん、なんっじゃこりゃあああああああっ!?」
ラブレター!?ラブレターだとぉ!?名前は……書いてない…だとすると、彼女は屋上で待ってるかもしれない。
(いやぁ…でもよく考えろ。嘘告白っつう可能性も無くはない)
でもこのまま放置しておくのも、なんか悪い気がする。
「は、ハル姉!悪い!教室に忘れ物したから取り入ってくるわ!」
「……えぇ、いってらっしゃい」
ハル姉は不気味な笑いを浮かべ、俺のことを見送った。
………
……
…
「はぁ…はぁ…はぁ…」
俺のクラス平均の体力じゃ、屋上まで登るのに息が上がってしまう。金属製のドアを開いてみると、そこにはひとりの女子生徒が、夕焼けをバックに立っていた。
「あ…来てくれたんだ…」
「お前……摩耶か?」
「……うん…」
作り笑いを浮かべて、摩耶は俺と距離を縮めに来た。
「ここに来たってことは、私がこれから何をするか分かってるんでしょ?」
「……」
それは分かってしまう。だってラブレターまで渡されたんだが、よっぽどの鈍感主人公じゃない限り分かってしまう。
摩耶は深く深呼吸して、顔を少し赤らめながら告げた。
「私は……達海の事が…好きです……私と…付き合ってください……」
「ま、摩耶…」
言いやがった。
俺は摩耶の覚悟を無駄にしたくないと同時に、『断る』のは、俺の義務なんだと言い聞かせる。だけど…口が動かない。告白を断るのって、とんでもなく覚悟のいることだった。
「…俺…」
「待ちなさい!!!」
「待て!!」
突如俺の後ろから響いた2つの声。その正体は、ハル姉とミリアのものだった。
「タツ、よく聞いて……私もタツのことが、ずっと前から好きだった。だから、私と付き合ってほしい」
「いや、私と付き合え達海、絶対に幸せにすると約束する」
「あ…え?はい?」
俺の脳は混乱の極みに達してる。だってそうだろ!?学校3大美女に告白されるって何そのありえない状況!?
「確か、3年の南さんと同級生のミリアさんよね?もしかして、貴女達も達海の事が?」
「えぇそうよ!それにアンタなんかよりもよっぽどタツのことを理解してる!体重身長血液型、好きな食べ物から嫌いな食べ物、体を洗うとかまずどこから、パソコンのどのフォルダにどんないかがわしい画像があるかまでね!」
「おい!何俺のプライバシーバラしてんだ!」
普通そんなん言ったら一般の女子高生ドン引きだぞ!?いやもう俺の学園生活終わったわ!!
「ほぉ…ならこの私に喧嘩を売ると?」
「はぁ?何言ってんの?そっちこそ私のタツを奪おうとしたんだから覚悟はできてるわよね?」
ハル姉とミリアが喧嘩を始めそうなので割って入ろうとすると、「じゃあ」と声が聞こえる。
「じゃあ、先に達海を墜とせた人が彼女、それでいいんじゃない?」
「おいなんだよそれ!だいたい」
「いいわねその勝負、乗ってあげる」
「私も乗った」
俺の意思は全く尊重されず、こうして強引に3人の勝負が決定してしまったのである。
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