死闘の先に

「っはぁ..はぁ...ッ!」

荒い息を無理やり抑え込み空へ意識を向け直す。既にどれだけだったのかは分からない。問題は決め手にかけることが1つ。そして...空の機動力に対抗するために装備を最低限にしたのが仇となり、もう残りはマガジン1本分しかない。それに比べて空の武器はファイティングナイフが2本。2本のナイフをうまく使って弾丸の軌道を逸らしたりしながら接近してナイフで攻撃してくる。ナイフとなるとこっちと違って弾切れということは当たり前だが存在しない。つまり拮抗した戦いのように見えて現在はこっちが圧倒的に不利。残りの弾で決めきれなければこっちには体術しか残っていない。相手にナイフがあるとなると正直どうしようもない。空と俺の体術の技術は悔しいが空の方が高い。そんな中でナイフが空にはあるとなると...。決めきるしかないな...。M9はマガジン1つにつき15発...。チャンスは少ないが正気がないわけじゃない。脳へかかる負荷は増えるが能力によってかけているブーストを2倍から3倍へと引き上げる。空の動きがかなり遅くなったように見える。しかし、それでも動きは鋭い。油断したら一瞬でやられるだろうな。気を引き締め、トリガーを引く。空はこちらへと走ってきていた。真っ直ぐと正面から頭ではなく胴体の中心へ向けて1発、その後全く同じ軌道に一発隠すよう打ち込む。そしてほんの少しだけ間隔をあけてから、回避方向を潰すように左右にそれぞれ1発。これができるのは能力があってこそだ。空は予想通りどうせ1発弾くのならと正面から向かってくる弾丸をナイフで弾く。そして...残念ながら同じ軌道で放たれ隠れていたはずの弾丸も2本目のナイフで弾かれた。ここまでは予想通りだ。反応速度を上げる能力がなければ全く同じ軌道に撃ち込まれた弾丸なぞ普通は認識出来ないのに気づいているのは流石と言わざるを得ない。流石今まで派遣された暗殺者を虐殺してただけはある。だがもちろん俺もこんなので殺せると思ってるほど楽観主義者ではない。本命の弾丸は隠した弾丸ではなく左右に放たれた弾丸。その2発の弾丸は裏路地ということでたくさん通っているパイプなどをうまく使いまるで意志を持っているかのごとく跳弾し、空へと襲い掛かる。計算速度をここまで上げているからこそようやく計算できる軌道である。しかも帰ってくるのは明らかに空の視界の外。そこから更に正面から銃弾を左右に避けられて軌道から外れられないよう腕の辺りを狙いながら弾を使い切るつもり撃ち込む。これで決まらなければ負けだ。空ももう決着を付けるつもりなのかそれとも俺の考えを読み取ったのかさらに加速して来る。しかしそれでもナイフが届く一瞬前に弾丸が空を撃ち抜く...はずだった。


加速された俺の動体視力でその一瞬に起こったことは完璧に捕えられた。弾丸が空を捉える少し前、空は一気に踏み込みタイミングをずらし予想より一瞬早く俺の首にナイフが飛んできた。それにより弾丸が届くのとナイフが届くのが同タイミングになった。俺は必死にナイフを避けようとし、体を仰け反らせようとした。その時、突然弾丸がなにかに弾かれたように地面へと落下し、俺に届くはずのナイフは俺と空の間に現れた謎の男によって阻まれた。その男は黒いローブを羽織っていた。そして、

「そこまで。」

「...は?」

どういうこと?正直思考は加速されているのにも関わらず一瞬理解出来なかった。この男は決着のタイミングを見極め、両者の最後の一撃を阻んで勝負をここまでだと終わらせようとしているのだ。ちなみにここの時点で残りの弾丸はもうそこを尽きていた。

「いやぁいい勝負を見せてもらったよ。」

「あの...貴方は...」

「あぁ自己紹介が遅れたね。私の名前は神島 龍司と言うんだ。よろしく。」

「...何故止めた。俺たちは覚悟を決め命の奪い合いをしていたのだぞ。」

空は殺気立った声でそう言った。男いや神島さんの背中で見えないが恐らくナイフを構えてるのだろうということは声色だけで容易に想像できた。

「いやそれは知っていたさ。何せ最初から全て見ていたからね。」

「だったら何故だ。」

「これほどの腕の者達がここで消えるのは勿体ないからさ。」

「...は?」

さっきから俺は混乱するばかりだ。思考加速があるのにも関わらず状況に乗り遅れてる感じだ...。

「だからといって止めてどうする?止められたところで俺たちは殺し合いを再開するだけだぞ。」

「そんなことは分かっているさ。なんの意味もなく勿体ないからという理由だけでは止めやしないさ。」

「ほう?その理由は?」

おいてけぼり感がすごいのだが?私も当事者なのだが?ねぇ?

「君たちの腕を見込んで我らがレジスタンスにスカウトさせてもらうよ。」

To be continuous...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る