レジスタンス

「ふぅ。ありゃ気づいてやがるなぁ...。すぐ移動しねぇとなぁこりゃ...。」

あ...れ...?

あんな速い蹴りを入れられたのに俺は死んでない。それどころか体のどこも痛まない。神経が麻痺して痛みを感じないのか?そう思いながら体を動かしてみる。

...

あれ?普通に動くぞ?それにさっき誰かの声が聞こえたし...。俺は体を起こした。

「おっ大丈夫か?すまねぇな。できればバレたくなかったんで、ちょっとスピード出したんだが、バレちまった見てぇだ。体は大丈夫か?」

「は、はい。大丈夫です...。危ないところをありがとうございました...。」

あの状況で助けられた?つまりあの蹴りよりも素早く助けたってことか?

...化け物だろ。

でも、実際生きてるってことは助けてもらったってことなんだろう...。

「大丈夫なのか。よかった!...で、お前これからどうするんだ?」

「え?」

「え?じゃねぇよ。お前普通に顔覚えられただろうから、普通の生活にはもう戻れないぞ?」

「あ...。」

「なんだ...。何も考えてなかったのか...。なんだ?あのまま死んで終わりのつもりだったのか?」

「いや...そういうわけでは...。」

しまった...。完全に記憶が蘇って、目の前が真っ赤に染まって、怒りのまま行動してしまった...。

「...これからどうしよう...。」

つい口からこぼれた。

「はぁ...。本当にプランなしか...。」

「アハハハハ...。」

マジで笑えない状況になってきたぞ...。隠れるにしてもどこに隠れりゃいいんだよ..。

「...。よしっ!」

「?」

「お前、俺と一緒にこい。」

「!?」

「お前、行く所もなけりゃ出来ることもない。そうだろ?」

「...ですね...。」

「さらに言えば、できれば下のあいつに...その..なんだ..復讐って言ったらいいのか?1発殴ってやりたいっていうのか?まぁざっくり言えばあいつに用があんだろ?」

「はい。」

「その為には力をつける必要がある。違うか?」

「そうです...。でも、俺にそんな力...。」

「付けられる。」

「は?」

「付けられるって言ったんだ。お前には付けるだけの才能がある。そして、俺にはお前に付けさせてやるだけの能力がある。」

「??つまり?」

「俺がお前の師になる。」

「はぁぁぁぁぁぁ!?」

「どうだ?やるか?」

「いやいやいやいやいや、俺はそんな力...。」

「ある。さっきのを見てて分かった。」

「え?」

「さっきお前自覚ないだろうが能力使ったろ。」

「能力?俺が?」

「あぁ。使った。ちょっと手を貸してみろ。」

「?」

...俺は恐る恐る手を前に出した。すると目の前の男は俺の手に自分の手を重ねた。

「うん。やっぱりあるな。『盾を作る能力』が。」

「な、何を馬鹿な...。」

「俺は人に触れることでその人の能力を知ることが出来る能力がある。ややこしいがな。」

「...なるほど?」

嘘とは思えない。あの状況から助け出すほどの力を持つこの男なら能力を持っていたとしてもおかしくはない。だが...1つ、気になったことがあった。

「あの...。」

「なんだ?」

「触れることで能力が分かるなら、何故助けた時に能力が分からなかったんですか?」

「あぁそのことか?」

触れることで能力を知ることが出来るなら、助けた時にはもう俺の能力を知ることが出来たはずだ。何故、それをしなかったのか...。

「まず、お前は一つ勘違いをしているな。」

「?」

「俺はお前を助ける時にお前には触れてない。」

「え?じゃぁどうやって...。」

「簡単だ。俺にはまだ力がある。俺は水を操る力がある。つまり、俺は水でお前を助けた。だから、お前には触れてない。」

「...能力が2つ...ですか?...」

「ん..まぁ正確に言えば水を操るのは能力じゃないし、能力は3つあるし、出来ることはもっと多いからまだ1つ分すらお前には教えてないんだが...何でもない忘れてくれ。」

...は?え?まだまだ隠し玉があるのか?

...化け物かよ...。

「でだ!重要なのはお前がどうするかだよ。」

あっ話しそらしたな。

...真面目に考えて恐らくこの男は嘘は言ってない。そして、この男は実際に力を持っている。

...彼女を取り戻すための力が手に入るのなら...。

「お願いします。俺に修行をつけてください。」

「...いい目だ。目標をしっかり持ったいい目をしている。任せろ。必要な力はしっかりと付けてやるさ。」

「よろしくお願いします。」

「さてと、まずは自己紹介だな!」

あっ...そういえばまだだった...。

「俺の名はクロウ・マリンズだ。よろしくな!」

「僕の名は、神島 龍司です。お願いします。」

「さてと!ここにはもう用ないし、下の黒服がこっちに来かねないし、さっさと移動するかな。お前じゃ付いてこれないだろうから、俺に掴まれ。落としていったりはしないから安心しな。」

「?はい。わかりました。」

よく分からなかったが俺はしっかりとクロウさんにしがみついた。

「よしっ!行くぞ!」

...そう言った次の瞬間にはもう山奥にいた。

正直、状況が理解できないまま俺の修行は始まった...。


〜2年後〜

キン!キン!キン!

「今日こそ、超えてやるからなぁ!」

「やれるもんならやってみな!」

キン!キン!キン!...


「はぁ...はぁ...はぁ...」

「今日も俺の勝ちだな。」

「あぁあ、ダメだダメだ!勝てる気がしねぇ!強すぎるんだよほんと。」

「だいぶお前も強くなったよ。」

「...まぁ...強くはなったけど...一向に差がつまんないな...。」

「いやいや、詰まってきてるさ。」

「詰まってきてる気がしないんだよ...。」

「まぁ...それはそれとして...。」

「ん?なんだよ。」

「そろそろ頃合だな。」

「...つまり..。」

「そろそろ俺の元を離れて、目標に向かって動き出す頃だ。その力は充分についた。」

「...本当に今の俺で足りてるのか?」

「あぁ、お前は国を相手取るのに充分な力を手に入れた。...頑張ったな。たった2年で...。」

「...あぁ...。ってん?」

「どうした?」

「国を相手取るってどういうことだ?俺の目標は話した通り奴隷として連れていかれた俺の友達、望実の奪還だ。最悪国を相手取ることになるとしても真っ向から向かい合う必要は無いはずだろ?」

「あぁなるほど、お前知らないのか。」

「えっ?なにが?」

「お前があの日殴りかかった相手。」

「ん?貴族だろ?」

「ただの貴族じゃない。国王だ。」

「...は?マジ?」

「マジ。」

「はぁぁぁぁぁ...。運がねぇよほんと...。」

「確かになぁ。運ねぇな。お前もその望実って子も。」

「...どうするか...。貴族から奪うためのプランは考えてたんだが...国王ともなると...。」

「そうだな...。1つ案を出すなら...。レジスタンスだな。」

「レジスタンス?革命軍か?」

「あぁそうだ。最適解だろうな。一応1人で奪い返す程の力はついてるが...。正直、成功率は低い。さらに言うなら奪ったあとも追われ続けることになる。となると、残った解は」

「革命...だけか...。」

「そうだ。そうすれば勝率も上がり、奪い返したあとも、追われる心配はない。」

「確かに残った解はそれだけか...。でも、師匠がいれば余裕なんじゃ?」

「あぁ...それは無理だ。」

「え?」

「確かに俺の力なら、国を落とすことも不可能じゃない。だが、色々な事情でそれはできなくてなぁ...。」

「そうか...じゃぁ1から仲間を集めるしかないわけか...。」

「そうなるな...。まぁ、邪神とかでも出てくれば話は別なんだけどな。」

「?よく分からねぇが分かった。邪神が出てくるようなことがあれば助けを呼ばせてもらうよ。」

「そうか。じゃぁそんなことがあったら、俺に連絡してくれ。そんなことはないだろうけどな。」

「あぁ。その時は頼むよ。」

「任せろ。」

「じゃぁ俺は行くよ。」

「頑張れよ。」

「あぁ、必ず取り返す。」

...そうして俺はレジスタンスを結成すべく旅立った。


〜レジスタンスのアジト〜

「まぁそんなこんなでレジスタンスを結成したというわけだな!」

「へぇそんなことが...。」

「『へぇそんなことが。』よりもっと気にすべき点があったろ...。」

「え?」

「え?じゃねぇよ!龍司さんは2年でここまで強くなったって言ってたんだぞ!」

「...マジっすか。」

「あぁ...正直今話してた俺もびっくりな早さだが、本当だ。師匠がよかったとしか言えないなぁ...。死ぬかと思ったけどな。修行中何度も。」

「へぇ、大変だったんですねぇ龍司さんも。」

「...あれ?由美?いつからいたの?」

「ん?龍司さんの話始まった頃から聞いてたよ?」

「気づかなかった...。」

突然話に混じってきたのは、山川 由美、俺と空の幼馴染だ。

「由美、聞いてたのか。」

「いけませんでしたか?龍司さん。」

「いや構わないよ。」

「なら良かった。」

「話に集中してたから気づかなかった...。」

「ところで龍司さんの過去の話聞いてたら気になったんだけど、大地と空が龍司さんにあった時はどうだったの?聞いたことないから気になっちゃった!」

「お前ら、話してなかったのか?話してないってことはレジスタンスに入った理由もってことだろ?」

「はい、実は話してなくて...。」

「大地に恥ずかしいからやめろって口止めされてたからな。自分からは話してなかったんだよ。」

「恥ずかしい〜?どんな理由なの?」

「聞かれたからもう話すしかないよな?大地。」

「...そうですね...。諦めて話します...。」

「楽しみ!」

はぁ...話したくはなかったんだけどなぁ...。龍司さんに言われたら話すしかないじゃないか...。それに多分俺が言わなくても龍司さん話すだろうし...。

「はぁ...。あの時は大体一年前くらいか...。いや、入った理由を説明するならもう少し前、一年半前のことから話すとするか...。あれは、俺と空と由美が軍役検査で能力を調べた時のことだ...。」

To be continued...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る