「死ねない聖女と、死にたがりの私。」(3)


     *


 それからほどなくして、あの人はあっさりと、満足そうな顔をして逝った。

 何もかもが怖くて――ずっとずっと死にたいと思い続けていたはずの私は、なのにまだ、ここに生きている。

 あの人から沢山のものを受け取って。

 あの人に沢山のものを託されてしまったせいで、まだ死ねずに、ここにいる。

 ……恋とは、呪いのようなものだ。

 一度落ちてしまうと、死んでも死ねなくなる呪い。……あまつさえその呪いは、当人たちだけでなく周りの人間までも巻き込むらしい。つくづく、はた迷惑なことだ。


『九重もいつかきっと、分かるよ』


 そう言った彼女の言葉を、ふと思い出すことがある。

 バカなことを言ってくれたものだと思う。私たち兵器に、恋なんてありえない。

 やはりあの人は、「故障」していたのだろう。そう思うその一方で、私はこうも、思うのだ。

 ……恋をすると、どうなるんだろうと。


 ――。

 そして――あの、清星節の夜。

 私はあの人に、出会った。

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