■3──識別コードA‐037・060(7)
■
月下の鳥籠、造花の庭園。
中央に置かれた白いティーテーブルに、今日は珍しく、
今日は確か、他の子たちと
彼女のいないティーテーブルに腰を下ろして、私は一人、端末を起動する。
「箱庭」の聖女たち。皆、症状が改善する様子はないが──それでもその進行自体は緩慢で、今はまだ、問題ない。
白衣のポケットを探る。硬質な、細いものが指先に当たる。
ガラス製の、小さなアンプル。
「108」とだけ書かれた簡素なラベルの貼られた無色透明のそれを、月明かりに照らして眺めて──すぐに仕舞う。
プロトコル108。「
成分は伝えられていないが一アンプル分を体内に投与するだけで簡単に、そして安らかに、彼女たちの命を奪うことができるという。
使ったことは、まだない。使わないままに過ごせればいいと、思っている。
……甘い考えだ。そんなことは、分かっている。
問題を先送りにしているだけ。そんなことは、百も承知だ。
けれど、それでも──できればこのまま、先送りにしたまま過ごせていければいい。
彼女たちを救うことなんてできない。そんなことは分かっている。
けれど、ならばせめて。
……「このまま」がずっと続けばいいと。
いつの間にか──私はそれを、願い続けていた。
十二月二十五日。
永きに
──生存中の「
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