■3──識別コードA‐037・060(2)
■
A‐060、個体識別名「
体が小さい
そんな、
たとえば──
──。
「実は、
緊張した面持ちの
どんな相談かと身構えていた私は、その思いがけない内容にしばし硬直して言葉を
「……昨日の模擬戦で、
おどおどとした目で問うてくる彼女に、私は腕を組んで
彼女たちのような年頃の(と言っても、実年齢は一桁だが)少女が欲しがる贈り物なんて、想像もつかない。ましてやこの「箱庭」という限られた空間で手に入るもので……となれば
深刻そうな面持ちで、
「……
そう
……恐らく、
ならば……と、そこで私は一案を思いつく。
彼女のそれは、感覚障害。触覚、温痛覚などの表在感覚を──今の彼女はほとんど、感じ取ることができない。
そんな彼女にうってつけの贈り物、それは──
「……マフラー、ですか?」
私の告げた案に、彼女は意外そうな表情でそう返す。
私の提案したのは、手作りのマフラーだった。
重度の感覚障害を持つ
現在は十一月。連邦北東部のこの辺りは、そろそろ本格的に寒くなってくる頃合いだ。彼女に渡す贈り物としては、悪くない選択であろう。
「……す、すごいです! それならきっと、
きらきらと純粋きわまりない
手編みのマフラーなら、必要なのは申し訳程度の編み物セットと毛糸玉くらいのもの。その程度であれば、上に要請するまでもなくどこかに貯蔵されているはずだ。
「ありがとうございます、先生! わたし、がんばります!」
タイムリミット二週間の秘密の戦いが、今ここに幕を開けたのである。
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