第27話 心の支え「はるかちゃん」
ここで特記しておきたいのは、武庫川の「はるかちゃん」という顔も知らない小学2年生の女の子の事である。
いつも山口先生はなりゆきの病状の事を聞いたとき、彼女の名を出してわれわれ夫婦をはげましてくれたのである。
彼女も麻疹からなりゆきと全く同じような炎症をおこしていた。
ただなりゆきより、比較的軽い症状で「脳炎」と「肺炎」だけであった。
しかし不運にも彼女の場合は、病院に連れてきたタイミングが遅かったのである。
病院に運びこまれた時にはもう脳はパンパンにふくれ上がってて、どうしようもなかったそうである。
西宮から国道171号線で渋滞の中を救急車で運ぶ時間が致命傷となったそうだ。
彼女もまた、大急ぎで両親の許可をとる暇もなく麻酔薬ラボナールで眠らせ、なりゆきと同じような治療を施したそうである。
眠らせてから起きるまで約3ヵ月ほどかかったが、いまではリハビリをしながら元気に車椅子で小学校に通っているらしい。
やはりその子の両親も麻酔から起きてくるまでの3カ月間は、毎日祈りながら悲痛の思いで待ち続けていたらしい。
最初に起きた時の第一声はよく聞きとれない言葉で「ウンチ」と言ったそうである。
ウンチをしたかったのではなく、この子はもともと「ウンチ」という言葉が好きだったそうである。
気になった知能のほうも、あれだけ脳が腫れていたにもかかわらず、損なわれてはいなかったらしい。
ただ言語と下半身の機能だけが不自由だったそうだ。
しかしこの子の存在が、どれほどわれわれを勇気付けたかはおそらく「はるかちゃん」本人も知らないことであろう。
人間というものは目標が無ければ「悪いように悪いように」考えこむものである。
本当に彼女がいなかったら、われわれの神経はどうなっていたかわからない。
「はるかちゃん」とそのご両親のかた、本当にありがとうございました。
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