第11話 呼吸停止

朝11時


山口先生

「このままでは脳に酸素が供給されてない状態です。本人の負担を軽くするために昨日も説明したように、一旦呼吸を止めます。処置のあいだはこの部屋から出ていって下さい」

主治医に促されて私は妻とじいちゃん、ばあちゃんと病室を出た。


「いよいよ、なりゆきは強力な麻酔で眠らされてしまうんだな」と思うとなにか今生の別れのような気になってまた涙があふれてきた。


おばあちゃん

「ああ・・・なんでこんな事になってしまったんかな。うちの孫がこんな事になるなんて夢のようやわ、悪い夢でも見てるんかいなあ」と言った。


妻はもう半狂乱状態であった。

それぐらいひどい形相であったのだ。


「ちょっと、喫茶店で話しない?」


「ああ、かまへんよ」


「私はもう覚悟ができました、なりゆきはもう死ぬか、多分重度の小児マヒになると思う。そうなってもこの十字架は一生背負っていくつもりになったわ」


「おまえだけやない、これは二人の十字架や。しかし、今までドラマかひとごとのように思っていたのが自分たちの子供に来るとはなあ・・・」


「今から郵便局の保険の内容調べとくわ。重度障害の場合の保障金額も」


「だけど昨日たしかにうわごとのように、なりゆきはしゃべったんやけど、あれは夢やったんかなあ?でも看護婦さんも一緒にきいていたんやけど・・・」


「人間は死ぬ前に、いきなり立ち上がったりしゃべりだしたりするそうよ。その類じゃあない?」


「・・・」

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