第8話 『天にひびき』

『天にひびき』

やまむらはじめ


―――

「音楽…

ううん

音っていうのはさ

只の空気の振動だよね

ある空間にある瞬間に生まれ

そして消えてゆく

跡かたもなく…」

―――


これは、天にひびきの主人公のセリフだよ。


あたしはこの物語の中のセリフ。

音楽をなぜやっているのかという問いかけへの答えが心に残るんだ。


この言葉から始めて、

こうして音として発せられて消えてしまう音楽が、

聴き手の心へ残ることが楽しいという答えへと繋げる、

あの一連のセリフ回しが好きなんだよ。


あたしがこの主人公を面白いと思って好きになった瞬間だね(笑)




天にひびきは、

オーケストラの指揮者を目指す音楽大学の少女と、

幼少期に、彼女と一度出会い、その音楽の才能に魅せられた、

少女と同い年の、主人公の少年の物語なんだ。


二人は大学で再邂逅する。物語はそこから始まるんだよ♪


まあ簡単にいうと、

音楽もの青春グラフィティーなんだけど(笑)




芸術って面白いよね♪

音楽、劇とかの、ライブで行われるものは、

その場限りの出来事が相手の感情を揺さぶって、

時に相手の人生を変えてしまうような事や、

それを相手に一生刻み込んでしまうような事を起こすんだ。


まるで一瞬の光を、相手へと永遠に焼き付けるような事が起こせるんだからね♪



まあ、芸術や文芸も同じなんだけどね(笑)

たとえ記録された情報-絵にしても本にしても-、最初に見た時の印象はやっぱり特別だよね。


そうして人は、その分野へとはまり込んでゆく。

そう…、あの感覚はたまらないよね♪

あたしも少し絵を志したことがあるから……。


あの、魂に刻みこまれて自らの内に溶けこんでいく感覚は、なんとも言えない…。

うん、解る気がするよ(笑)



絵でも音楽でも、もちろん文章でも、

研ぎ澄ましたものは、みんな同じなんだ。


それぞれの分野に関わらずに、積まれた研鑽は、

その全てが、並び立つような強さを持って、

心に食い込んで鷲掴みにしてくるような印象を、受け取る側に与えているよね。


鋭く胸の内へと、切り込み、突き刺さり、魂に刻みこまれてゆく。


何でだろうね?


何だろう…。そうして感動を与えるっていうのは…。



もしかしたら、波…、なのかな?

感情の波の受け渡し。


見ることも聴くことも同じもの。


光や音って波長を受け取ることだから、

神経という電気信号がそうして見聞きした波を、魂という心の内へと受け渡し、伝えて、

作品として研鑽され、刻み込み研ぎ澄まされた、創作者の感情という想いの波を受け入れて、

その想いという波を、受け取った魂の内で増幅し、その心へと響かせているのかな?


その響きは消えてしまわずに、心を震わせ続けているんだよ…。ずっとね。



ホントかは知らないよ(笑)

あたしがちょっと思いついただけの、てきとう理論だからさ♪



でも、ロマンチックだね(笑)

そうやって、相手の心を震わせることができるってさ♪



天にひびき。

あたしには響いたよっ。想いがね♪



−あとがきのようなもの−

 毎度ですが、猫又は饒舌なんです。

こちらが書くことが無くなってしまう(¨;)


 まずは、

自分はやはり猫又が語るように、初めて作品に触れた瞬間を重要だと感じて、特別だと思っているところがあります。


 その反面で、絵や文章に一回では読み切れない、何回も読み返して気付く輝きがあるとも思います。

作品へ込められた想いが奥底に沈んでいることも、複数回読み返した後でやっとそこに至る、そういった物語の深みにも出会っているからですね。



 作品は炭酸水のように、はっきりした味付けで、すっと消えてゆくものと、

干物のように、何度も繰り返し味わいながら感じて、残り続けるものがある気がします。


どちらも好きで楽しく読みますが、たぶん重きを置くのは後者です。

ですから、自分自身が書きたいのは、おそらく後者なのでしょうね。よくわかってはいませんが(笑)



 あとは、

天にひびきで、自分が好きな文中の言葉は、二つです。


―――

「指揮者ってのはさ

いつもそばに自分の楽器オケがある訳じゃないんだから」


「でもだからこそ

だからこそ強くつよく

自分のなか

音楽を奏でておかなくちゃなんないんだ」

―――



―――

「お前の中にも音楽は鳴ってんのかな」


「そりゃもちろん!」

―――



 ひとつめは、主人公への少女の言葉。


 ふたつめは、主人公の問いかけに答える、少女と同じ指揮科の同級生からの言葉ですね。



 自分はあまり人には語りませんが、物語には音楽が流れているものだと思っているのでした。←音痴にもかかわらず(笑)


やはり、シーンや流れのなめらかな繋ぎや、場面転換を意識してゆくと、そうなるのでしょうね。


 全然別の時期の友人だったり、親しくなった相手から、

既成の曲を組み合わせて作った、ー自分自身が書いた、彼ら彼女らの物語作品のための-オリジナル・サントラ(サウンドトラック)テープを頂いたりしたことが、何度かありました。


 ああいった創作をするひとたちには、テーマとしての音楽を決めることは、当たり前のことなんですね(笑)←誰が始めて、どうやって広まっていったんでしょうね? それとも、サツマイモを海水で洗うニホンザルたちみたいに、全国複数箇所で同時多発した現状なのでしょうか(苦笑)


 面白いものです。

確かに自分も何か既成の曲をテーマソングと決めて、それを聞きながらお話を書く方がノって書けたりもしますし、

物語を長期間中断する場合も、テーマとする曲を決めておくと、創作再開がスムーズだったりすることはあります。


 音楽、歌や曲が、思い出やその時の感情を記録する補助をしているのは何度も体験しておりますので、

やはり物語のなかで、テーマやテンポコントロールをする音楽というものの役割は大きなものなのでしょう。←たとえそれが表面に出てこない、文章や絵の外にあるものだとしても、音楽は伝わるのでしょうね。


 文字や線という記号と同じように、音という記号は、組み合わせ、積み上げて、想いという感情を伝えることが出来ます。

音楽も文章も絵画も、等しく並び立つ、感情と切り離せないもの。

そのどれもが、他を表現して伝えることができるのでしょうね。想いや感情を仲立ちとして。


 まだまだ知らないことで世界はあふれている。

知りたいこと、やりたいこと、盛りだくさんですね(笑)


世界も人間も面白いです!

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