第2話 『ヴァンパイア・レスタト』

『ヴァンパイア・レスタト』アン・ライス著


『ヴァンパイア・レスタト』、


あたしはこれを読むと、

芥川龍之介の『羅生門』や、マイク・レズニックの『パラダイス −楽園という名の惑星−』を思い出すんだよ。


一つの物事に対して、幾人かの人物が意見を述べて、それが一致していないからだろうかな?


あたしはこういう話を読むと、

人間という生き物は、

客観的と言いつつも、主観的に物事を語る生き物なのだと感じるんだ。


人間は本当に感情で思うこと、言うことがころりと変わる。


あたしはそれで死にかけたことが何度もあるから、

人間のそういうてきとーなところは大嫌いだ。


主人公は吸血鬼だけれど、彼は人間だ。

考え方は人間と変わらない。

少なくとも、このお話の吸血鬼はね。



この本『ヴァンパイア・レスタト』の前の話『夜明けのヴァンパイア』は、

映画にもなった『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の原作で、現代のお話なんだね。

ヴァンパイアのルイにインタビューしたお話をドキュメントとして出版したという形態をとっているフィクションだけど(笑)


主人公のルイは、レスタトにヴァンパイアにされたいきさつと、ヴァンパイアになった後の生活をインタビュアーに話していたんだよ。


『夜明けのヴァンパイア』では、レスタトは暴君で悪役としてルイが語り、そのように書かれているけれど、

『ヴァンパイア・レスタト』では、主人公はレスタトで、レスタト本人の手記として書き出されているんだ。


レスタトは生きて現代にいて、有名なロックスターになっているんだね(笑)


彼は自分、レスタトによってヴァンパイアにされたルイのインタビューの内容から書かれた本を読んで、

ルイの語る言葉、自分を悪の吸血鬼としたことに対する反論という形を含んだ『ヴァンパイア・レスタト』というレスタト自らの物語を語りつつ、

ヴァンパイアの秘密に迫り、ルイ自らの立場を危うくしている彼への助けとなるような、暴露話としてこのお話を語り進めるんだ。


その様子から、レスタトは自分本位なところや、粗暴なところは在るけれど、

仲間としたルイへの態度や行動は、支配者としてではなく、家族、あるいは先輩という立場にあるように思えたんだ。


あたしがお話を語るレスタトの甘言に丸め込まれただけかも知れないけどさ(笑)

あたしはルイみたいな甘ちゃんなタイプより、多少扱いにくくても頭の切れるレスタトみたいなヤツが好みだから、仕方ないかな(笑)



まあともかく、

レスタトの語る内容は、レスタトによってヴァンパイアにされたルイの話に、勝るとも劣らない内容だったよ。


冗長だけど、史実を絡めつつ語られるお話って、やっぱり面白いよね♪(笑)

あたしはこういう話を読むのはとっても好きだよ。


現実にせよ、作り話にせよ、

本の中の登場人物たちと話をした気になるんだよね(笑)


人間は嫌いだけど、こういうふうに話を書ける人間はすごいと思っているよ。


外見も作りも、特に他と代わり映えのない、ちっぽけ生き物。

でも、内面は本当に多様性に富んでいる。


虫の群れのように結束して、戦いや、巨大建造物をつくるとかの成果を上げることもあれば、

たったひとりの心の世界で、ただ独りだけで、それに匹敵するほどのものを創り出したりもする。


相手の心を読めなくても、相手のことを真に理解することが出来なくても、

相手を助け、力を合わせ、物事を達成し、

相手を、世界を想像しながら、独自の多種多様なことを考え、創造性を発揮する。


面白い生き物だよね(笑)



ああそれと、みなはら!!

『パラダイス』、

あたし読みかけだったのに、人にあげないでくれる。

ちゃんと新しいの買ってよね!!(怒)


それとあんた、日本文学、もっと読みな!!


あんた(みなはら)は知識が偏ってて、あたしの読みたい文豪や詩人の本、全然読んでくれないんだから、

あたし、腹ぺこなんだからね!!


あんたのお話で、はったりで演技するの大変なんだよ(怒)

ググっての情報なんて、たかが知れてるんだからさ。


もっと勉強しなよ!!



−解説、感想−

ああ、わかったよ猫又。ちゃんと買い直してお前に渡すって。


あの本、もう絶版だから、

田舎は、あの手の中古本は入手しづらいんだよ。もう少し待ってくれ(苦笑)



稲荷狐の感想文の時みたいに、ちょっとした猫又との遊び(じゃれあい)を入れてみました(笑)


何だかんだで、狐と猫又とのつきあいは2年以上になりますから。

今回の感想文にしても、時折おこなう演技のトレーニングみたいな感覚が混じっています(苦笑)



余談ですが、

SF小説、マイク・レズニック氏の『パラダイス』は、フィクションの形を取っていますが、モチーフは実在する国のお話だそうです。

近代ケニア史、『パラダイス』はケニアのお話です。


パラダイスに出てくる人は、時に愚かで盲信的です。


パラダイスというケニアの楽園を、愚かな人間がどうしたか。

あの本にはそんな出来事が書かれていました。


あの本で書かれた人間の愚かさは、今の日本の愚かさと少しも変わりません。

自分はそんな風に思います。

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