第11話
在原親子、巣鴨親子との会談が終わって二日後の18時5分頃、零美と烏間の姿が都内の高級ホテルの一室にあった。しばらくすると部屋の扉がノックされる。
「はい?」
「有山尊です。」
「そう…『これらは二流の者である…』の続きは?」
「…『我々は一人で二人分以上の力をつけること。さすれば、どのような場合でも生存率は上がる。もしも、そのような実力がないのであれば、いかなる時も逃げること』、でしたかな?」
「尊さんのようね。烏間さん。」
「承知いたしました。」
扉を内側から開ける烏間。すると、スーツ姿の尊が現れる。
「お待たせして申し訳ない。私から招待させていただきましたのに。」
「しらじらしい言い訳は結構ですよ。どうぞお座りになったら?」
初っ端から険悪な二人。この会談の発端は昨日に遡る。
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昼下がり、零美は執務室で昨日までの情報や諜報により結果に目を通していた。すると、控えめなノックが響く。
「はい。どうぞ?」
「失礼いたします。」
そこにやってきたのはこの屋敷に勤めてそこそこのメイドである。
「奥様、紅い鳥がやってきましたが…どうされますか?」
「…あら、そう。通していいわよ。」
「かしこまりました。」
メイドは一礼して退出する。その退出の間に、机の上の資料を引き出しにしまう零美。すべての資料をしまい終わり、最終確認が済んだときにノックされた。
「いいわよ。」
「失礼します。」
そう言ってメイドが扉を開けると真紅の鳥が扉の隙間から部屋の中に侵入し、執務机の上に止まった。
「こうして直接話すのはお久しぶりね、尊さん。」
傍から見ると変ではあるが、美女が紅い鳥に話し掛けるという何とも珍妙な光景が広がっている。しかし、さらに珍妙なことが起きる。
『…お久しぶりですね、零美さん。ご機嫌麗しいようで。』
「ええ、そちらもお元気でしょうね。私と烏間さんがアジトで戦っていた時、離れた場所からのぞき見、とは趣味が悪いですよ。縁を切っているとはいえ、お嬢さんに嫌われても知らないわよ?」
『ハハハ、そこはのぞき見ではなく高見の見物と言ってほしいですね。それよりも…澪ですか。嫌われても別に構いませんよ。しかし、この前澪と手合わせしましたが…弱くて弱くて…そういえば烏間の腕は元に戻りましたかな?有栖院家の行く末が心配になり、夜も眠れぬ日々を過ごしてました。』
「ええ、お陰様で治りましたよ。それより一国の正規軍魔術部隊のトップともあろう方が眠れないなんて心配ね…眠れないのなら強制的に眠らせて差し上げましょうか?…二度と目覚めないでしょうけども。」
『そのご提案はうれしい限りですが…謹んで辞退させていただきます。なにせ、零美さんの綺麗な髪を焼いてしまうかもしれない。』
「フフフ…よく言うわねぇ。私に一度でも勝ったことがおありだったかしら?」
『昔のことです。それに最後に戦ったのはお互いが20前後の時でしょう。今ならわかりませんよ。』
お互い一歩も譲らぬ舌戦。零美とここまで言い合えるのはおそらくは有山尊、ただ一人であろう。ただ、尊は言えるだけの地位、そして実力も持っている。実際には零美の方が強いと目されてはいるものの、
「それで…この鳥を飛ばしたのは、烏間さんへの当てつけ?それとも電話の代わりかしら?そうだったら、随分と暇なのね…魔術元帥様は。」
少しの挑発を含め本題に入るように促す零美に対し、尊も本題に入る。
『まあ、細かいことは明日、18時にいつものホテルでお話しますが…よろしいでしょうか?』
「ええ、明日の18時ね。予定はないわよ?」
『内容に関しては、亨から聞いていますか?』
「人事とかの事後処理とカリキュラム変更についてかしら?」
『ええ、その通りです。』
「そう。わかったわ。」
『ではよろしくお願いします。あと、いつものごとくその鳥は自動的に膨張し爆発しますのでご注意を。それではまた明日。』
そう言うと紅い鳥が急激に膨張する。零美はため息をつく。
「…相変わらずね。暗殺したいのかしら、私を?」
このままでは爆発しそうな雰囲気であるが、突如膨張が止まる。
「尊さんは何がやりたいのかしら…私の“絶対零度領域”は自動発動なんだけど?この程度で殺せると思ってるのかしら?」
いぶかしむ零美。その目の前で紅かった鳥は収縮していき、消失していく。消失を見届けたのち烏間を呼び出す。
「お呼びでしょうか、奥様。」
「尊さんからお誘いがありました。」
「ほぉー、いつですか?」
「いつもの場所に明日の18時だそうです。」
「かしこまりました。」
これが昨日の話。
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「昨日は爆弾小包ありがとうね。爆発する前に消えたけども。」
「流石ですね。私の魔力残滓も消失してましたが…毎度律儀ですね。」
「あの紅い鳥に飛び回られた日には、あなたを有栖院家の総力を挙げて消し去ります。私もそうはしたくないのよ。」
二人は円形のテーブルをはさんで座るものの、円満には程遠い。
「まあ、遠隔地で自身の魔力残滓を起点に魔術を組み上げる技術もありますからね…仕方ないとは思ってますが。さてと…本題と行きましょうか。」
不毛なやり取りを切り上げた尊は居住まいを正す。それを見た零美もまた、にこりと微笑み話を促した。
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