一年生編

第1章:入学と再会

第1話

魔術と科学が発展した世界は人口の増加を招いた。その結果、各国は資源の安定供給のために、力を用いて互いに牽制をし始めた。牽制のために各国は、魔術を使える魔術師の開発、育成や科学技術を発展させるであろう頭脳の持ち主の発掘などにこぞって参画した。そして結果として、2つの大きなグループが出来上がった。1つは中華連合を中心としたグループ、もう1つは旧合衆国・北アメリカおよび北部南アメリカ連合を中心としたグループである。しかしながら、日本はどちらのグループにも所属しない方針を続けていた。安保条約は2030年に破棄され、しがらみがなくなったのも一因だと言われるが、実際は高水準の魔術師、ならびに科学力により、一歩も二歩も進んでいるため、と言われている。


この日本では四大エリート校の一つと言われており、入ることがエリートの象徴であるともいわれる国立魔術学院。四大エリート校は、ほかに国立学術院、国立騎士学院、私立櫻雄学園がある。私立櫻雄学園の学費は高額で、一部の富裕層の子息のみが通っているのが現状である。2060年4月これら四大エリート校は、15歳の新入生を迎える入学式の日を迎えた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ここがクラス発表の場所か。有川ありかわとおるは…5組か。俺の魔術行使の成績なら、上出来だな。…んっ?」


目の端に女子生徒たちを見た亨。その女子生徒たちのうち一人に亨は見覚えがあった。


(なぜ、同じ学校にいる、来栖燦くるす あきなら櫻雄になるはずなのに、なぜ、警備が手薄な方にしたんだ?)


当の燦は亨に目もくれず、というよりは気付かずに二人の先輩と共に入学式の会場に向かう。それを見て、亨は思い出したようにクラスが張り出されている掲示板に目をやる。そして、入学者の1組に燦の名前を見つけた。


(…やはりか。首席で受かったんだろうな。そのくらいできるからな、あいつの実力なら。…というより、もう一人知り合いがいるのかよ。こいつも、こいつで何でこの学校にいるんだよ…)


その視線の先は1組に固定されており、そこには在原夏樹ありはら なつきとあった。


(くそっ、俺の悠々自適な学生ライフが崩壊する画しか見えない…。非日常は学外だけで十分だというのに…)


掲示板の前でこれからの学生生活に対し鬱になりながらも、亨は入学式の会場に足を向けるのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 入学式は滞りなく進み、平穏無事に終了した。入学式の終了後はそれぞれの教室へと移動となった。ホームルームが行われ、必修授業の時間割や選択授業の説明が行われるらしい。教室の席順は五十音順であり、ア行の亨は出席番号1番であった。


「入学、おめでとう。このクラスの担任を務める落合恒彦だ。担当は魔術戦闘だ。クラス替えは前期終了時と進級時と一年に二回ある。一つでも上のクラスに上がれるよう、頑張ってくれ。」


少し、いかつい男が亨の担任であった。


(…魔術戦闘が担当だと?そんな実力は無いように見えるんだけどな。まあ、俺も人のことは言えないな、魔術が苦手なのに魔術戦闘やるわけだし…。でも、それにしても内包魔力が少ないような…)


分析に入ってしまう亨。しかし、単位などの学校生活についての説明が始まり、分析を途中で打ち切らざるを得なくなった。


「さて、授業についてだが…必修科目は必ず履修し単位を取得しなければならない。単位取得基準は今配った資料に載っているので熟読しておくように。もし、これらの単位を落とした場合は留年となる。ちなみに、留年した場合、来年は10組で迎えることとなるので気を付けるように。続いて、選択科目に関してだが、必修科目の時間割に被らなく、そして重複しなければいくつ履修しても構わない。ただし、一年で二つは履修、単位取得が必要である。単位数もまた、資料に載っている。これを見ながら考えるように。選択科目の選択は、明日から3日間受け付ける。最低限の履修で、空きコマを作るのもよし、満遍なく講義を入れるのもよしだ。ちなみにだが、成績下位者はこの空きコマを使って担当教員と時間を合わせて補習をすることも可能だ。うまく使うように。さて、最後に時間割を配布して終了する。」


配られた時間割はなかなか大変そうな時間割であった。1日8限まで授業のコマは用意されていた。しかし、6、7、8限のほとんどは空きコマとなっており、選択授業のための部分のようだ。全員にいきわたったことを確認した、落合は解散を宣言し教室を後にした。

 亨も帰ろうと準備をし始めると後ろの席の男子と右隣の席の女子から声をかけられた。


「初めまして。伊藤雄二、て言うんだ。よろしくな。」

「あ、あの、私、柿沼鼓、と言います。よろしくお願いします。」

「…えーと、伊藤君に柿沼さんね。俺は有川亨です。よろしくお願いします。」

(なぜ、話し掛けてきたんだ…?)

「いや、これから席も近いし仲良くしようと思ってな。」

「なるほど。そうだね。ずっとぼっちは流石に辛いな。」

「そう言うこと。ところで、有川君と鼓はこの後何か用事ある?」

「私は特に何もないですよ、雄二くん。」

「俺も別段何も…」


答えかけたところで端末のバイブレーションが鳴る。その内容を確認した亨は返信をしてから、二人に対して続ける。


「何もないわけではないんだけど、一時間くらいなら空いてる。」

「なら、どっかで昼飯でも一緒にどうだ?」

「なるほど、いいですね。行きましょう。」

「俺は構わない。どこにする?」

「駅近のファミレスでどうだ?」


雄二の提案に乗り、3人はそのファミレスへと向かった。

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