第49話 新たな……

 全員が納得出来ることをやって、部屋でゴロゴロしているうちに、時刻は夕方になった。

「少し早いですが、私は下で飲んでいます。切り替えないといけません」

 ランサーが立ち上がるとウダヌスも立ち上がった。

「私がご一緒しても?」

「はい、構わないですよ。子供は部屋で遊んでいて下さい」

 ランサーとウダヌスが部屋から出ていった。

「子供っていわれてもねぇ。人間風にいえば私もケニーも今年で二百四十才だよ。大人なんだけど、一応」

 コリーが苦笑した。

「に、二百!?」

「よ、四十!?」

 俺と相棒の声が綺麗の揃った。

「あれ、エルフが長寿な事知ってるでしょ。いくつだと思っていたのか、お姉さん気になるな」

 ケニーが笑った。

「桁が違うぞ。どうみたって、遙かに若く見えてるぜ!!」

「う、うん、異種族の年齢は分からないけどね」

 困る俺たちに二人が笑った。

「そうだろうね。この瞬間が一番楽しい!!

「そう、母ちゃんのランサーの方が若いんだよ。まあ六十……」

 コリーの言葉が終わる前に、血相を変えてすっ飛んできたランサーの跳び蹴りが炸裂した。

「こら、余計な事いわない!!」

 一声吐き捨てるようにいって、ランサーは再び出ていった。

「イタタタ……次は斧が飛んできそうだから、これ以上はやめよう」

 あまり痛くなさそうに、コリーは淡々といった、

「……何で分かったんだ。まさか、こいつらにも呪縛を?」

「……それはないね。変な力は感じながら」

 俺と相棒は苦笑した。

「ってことで、ランサーの年齢は聞かない方が身のためだからね」

 何事もなかったかのように、コリーは笑みを浮かべた。

「いや、別に興味ねぇしな。どうせ、全員俺より上だ」

「うん、さすがに七才以下はいないでしょ?」

 相棒が笑みを浮かべた。

「少なくとも、うちのパーティにはいないね。他は知らないけど」

「まあ、いても困るか!!」

 コリーの言葉に、俺は笑った。


 時刻は夜となり、俺たちは先に飲んでいたランサーたちと階下で合流し、晩メシの時間となった。

 形だけメシを食べていたウダヌスが不意に顔を上げ、宿の出入り口をみた。

「誰かきます」

「ん、誰かって?」

 俺も食事の手を止めた。

「相棒、いつものアレだ」

「はいはい、周辺探査ね」

 呪文を唱えた相棒が小首をかしげた。

「僕らと同じで人間基準なら異種族なんだけどね。今まで感じた事がないパターンだよ。この魔力パターンは」

 相棒の声に、ランサーやケニー、コリーが食事の手を休めて、そっと自分の武器に手を掛けた。

「おいおい、落ち着けよ。相棒、間もなくか?」

「うん、フラフラしながらこの宿に近づいてる。あと三十秒もあれば到着だよ」

 相棒が頷いた。

 三十秒あればということか。ランサー、ケニー、コリーは出入り口で武器を構えた。

「大げさだって。相棒、どうだ?」

「うん、くるよ」

 相棒の声と同時にフラフラと宿に入ってきたのは、人間の女性というよりは少女という感じが一人だった。

 よほどの目に遭ったのか、服はボロボロで歩いているのもやっとという感じだった。

「これはマズいです。医者を呼ばないと!!」

 斧を床に放り捨て、ランサーが叫んだ。

「コホン。僕が診るよ」

 微妙に不機嫌な様子で、相棒が咳払いをしてから立ち上がった。

「ああ、そうでした。ムスタ、お願いします」

 どこか気まずそうにいったランサーに、相棒は苦笑した。

「うん、見たところ外傷が多いけど、どこかに寝かせよう」

 相棒の声に促されて、ケリーが少女に肩を貸し、ソファの一つに寝かせた。

「……助けて」

 少女からそんな掠れた声が聞こえた。

「ここは病院じゃないけど、この様子なら大丈夫だよ」

 相棒は笑みを浮かべ回復魔法を使った。

 荒かった少女の息が整い、どうやら寝てしまったようだった。

「うん、これで起きれば治るよ。事情を聞くのはそれからだね」

 相棒が笑顔を浮かべたのだった。

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