第46話 本の魔物
「なに、城で魔物が暴れてるって!?」
「急いできたよ。どんな状況なの?」
しばらく待つと、ケニーとコリーが武装して駆けつけてきた。
「おう、見た目は普通の本だが、触るといきなり襲いかかってくる。ブックミミックってやつだ。何体いるかは分からんが、俺の攻撃魔法は使えねぇ。まともな本までダメにしちまうからな。あとはまず、現場を確認してからだな」
「コーベットの魔法なしでか……」
コリーが小さく息を吐いた。
「なに、一体一体は大して強くねぇ。一撃叩き込めば大人しくなる。パニックにならなきゃ問題ねぇさ。それじゃ、いくぜ」
「うむ。書物庫はこちらだ」
国王が俺たちの前に立ち、城の中に入った。
ひたすら広い城の中を走り、立ち止まったのは「書庫」と書かれた部屋の前だった。
「他にも地下書庫があるのだが、そちらは異常なしだ。一般的に使われるこちらを狙ったようだ」
もはや、犯人は魔王だと決めてかかている様子の国王だったが、否定する要素はまるでなかったので、そのまま聞き流した。
「今は立ち入り禁止にしておる。鍵は私が直接管理してるからな」
国王が扉の鍵を開けた。
「では頼んだぞ。私はここで待っている」
「はい、分かりました。では、皆さん。今回は私やケニーたちが頑張る時のようです。いきましょう」
斧を片手にランサーが書庫に入り、ケニー。コリーが続いた。
「よし、相棒だ。周辺探査よろしくな!!」
「うん、もうやってるよ。この時点で、もう三十体見つけた。これは大変だよ」
いってるわりには、むしろ楽しそうにいって。相棒が入り俺とウダヌスが続いた。
背後で書庫の扉が閉じると、あちこちでカサカサという音が聞こえた。
「ブックミミックは一度擬態を解くと、元に戻れねぇんだ。このカサカサいってるのは、戻れなくなったブックミミックが飛び回る音だぞ」
「飛ぶ……ですか?」
ランサーが肩越しに鋭い視線を向けてきた。
「そりゃ飛ばなくてどうやって襲うんだよ。相手は本型だぜ。とぶたってぎこちないもんだがな。噛みつくか体当たりか、それ以上の攻撃はしてこねぇ」
「分かりました。それでは、まずは元に戻れなくて彷徨っているものから倒していきましょう」
ランサーが斧を構え、ケリーが剣を抜き、コリーが矢を弓につがえた。
「相棒、何体いる?」
「全部で四十五体だね、通路をフラフラしてるのは、十体」
相棒が周辺探査で細かい数をはじき出した。
「十体なら大丈夫か。今から音を立てて呼び寄せる。とにかく斬りまくればいい。いくぞ」
俺は呪文を唱え、パンという派手な音を立てた。
すると、本を見開きで開いて、バサバサと音を立てながらブックミミックたちが集まってきた。
「……なんだ、この程度か」
ランサーが呟き、微かな殺気をはなった。
そこに、十体のブックミミックたちがつっこんできたが、まずはコリーの矢に墜とされ、残った僅かなブックミミック経ちもランサーの斧とケニーの剣の前にあっさり破壊されて床に転がった。
「その調子だぜ。あとは、書架で素知らぬ顔をしているヤツだけだ。コイツは触らねえと出てこねぇから面倒だが、相棒の探査魔法で場所は分かるから、いきなりでビックリしねぇようにな」
「あの、私もこれで加わってよろしいですか。前からやってみたかったのです」
ウダヌスが棍棒片手に笑みを浮かべた。
「んだよ、楽しみやがってよ!!」
俺は笑った。
「これで、最後!!」
ランサーの斧に捉えられ、ここに住み着いていたブックミミックどもの最後の一体が倒された。
全員無事だが、軽傷程度は負っていた。
「ちょっと待って……。うん、もういないね。傷を治そう」
相棒が回復魔法を唱えた。
「これで、一件落着ですかね。早く宿に帰って夕食といきたいところです」
ランサーが笑みを浮かべ。俺たちは書庫からでた。
「よし、帰ってきたな。これが今回の報酬だ」
国王が指す出した小さな革袋をランサーが受け取った。
「あとで山分けです。久しぶりに暴れましたね」
「うん、スッキリしたよ!!」
ケニーが笑った。
「私は腕が落ちてない事を知ってよかったよ」
コリーが笑みを浮かべた。
「まあ、暇つぶしにはなったな」
俺は笑った。
「それでは、帰りましょう」
「またなにかあったら頼むからな。よろしく」
国王の声に押されて、俺たちは城を出た。
宿に帰って、もうメシという時間だった。
「冷めてしまいます。早く頂きましょう」
ランサーの声で、俺たちは手早くメシを食べた。
「それでは部屋に戻りましょう」
「ああ。コーベット。ちょと待って下さいね」
ウダヌスが俺を引き留めた。
「どうしたんですか?」
ランサーが不思議そうな顔をした。
「いえ、大した事ではありませんし、すぐ終わります」
皆が不思議そうな顔で階段を登っていくと、ウダヌスあ小さく息を吐いた。
「先ほどの魔物ですが、有毒でしたね。あえて伏せたのかと」
「ああ。あれな。ブックミミック・ポイゾナって亜種でな。牙から毒液を出すんだ。それは相棒も分かっていて、防御魔法と一緒に解毒魔法もつかっていたんだ。下手に毒があるなんていったら、みんな固くなっちまうからな」
俺は笑みを浮かべた。
「なるほど、わざとでしたか。分かってるはずなのに、なぜかいわないので疑問だったのです」
ウダヌスが笑みを浮かべた。
「そういうこった。さて、部屋に戻ろうぜ」
「はい、そうしましょう」
ウダヌスが頷き、俺たちは部屋にもどったのだった
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