第45話 事件発生
寝てしまったケリーとコニーを宿におき、俺たちは街の見物に出かけた。
「コーベットとムスタは知っているでしょうけど、この街は城を除けば普通に大きなだけの街です。屋台の買い食いくらいしか、面白いものはないですよ」
屋台を冷やかしては、ランサーが笑った。
「いえ、それでも十分です。これ、美味しいですね」
心の底から楽しそうに、ウダヌスが買い食いを楽しんでいた。
「まあ、楽しいならいいや。ランサー、この時間でも城の近くには行けるのか?」
「はい、中に入れないだけで、外側には近寄れますよ」
俺の問いにランサーが答えた。
「じゃあ、そこで屋台で売ってるもの買って食おうぜ。人混みは苦手だ」
「分かりました。では、適当に買っていきましょう」
ランサーが適当に買い込み、俺たちは城の側に移動した。
「デカいよなぁ。近くでみると、余計にデカいぜ……」
「コーベットらしいね。無駄にデカいとか好きだし」
相棒が笑った。
「まあ、そういうところが男の子ですね」
ランサーが笑みを浮かべた。
「さすが、一国の王といったところでしょうか。城が小さいとナメられてしまいますので」
ウダヌスが小さく息を吐いた。
「よし、この辺は人が少ないぜ。買ってきたものを食おう」
街中は賑やかだったが、城周辺は鳥の鳴き声か聞こえるほど静かだった。
「これはいいことを知りましたね。ここは誰でも自由に入れる場所ですし、休憩にはもってこいです」
ランサーが笑みを浮かべた。
「俺もこれならいいや。いい街じゃねぇか」
俺は熱々の蒸かしたジャガイモに挑みながらいった。
「そう、いい街だろう?」
城から誰か出てきたと思ったら、お騒がせ国王だった。
「どこからここにいると聞いたんですか?」
ランサーが苦笑した。
「それは、城に寄りかかってジャガバタを食べている者がいると聞いたからな。他にそんなヤツはおらん。私にもくれ」
国王は俺が苦労して攻略していたイモを取り上げ、余裕で食べ尽くしてしまった。
「こ、この野郎。俺のイモになにしやがる!!」
「食うのが遅いのだ。冷めてしまっては、美味さ半減どころではない。もはやゼロだ。だから、私が救出したのだよ」
国王は勝ち誇った目で俺を見下ろした。
「くっ……これだから猫舌は」
「コーベット、どっか怪我したの?」
相棒が回復魔法を使った。
「そうじゃねぇよ。二重に負けたんだぞ、国王とイモにな。ちくしょう、なんて日だ!!」
「……ああ、いつもの無駄な負けず嫌いか」
相棒が俺の頭を撫でた。
「勝ち負けじゃないから。ね?」
「お、お前は保護者か!!」
「なにか文句でも?」
相棒が意地悪な笑みを浮かべた。
「……間違ってねぇかもな。よく分からんが」
それまで微かな笑みを浮かべていた国王が、一つ咳払いをした。
「まあ、ちょうどいい場所にいたな。城の書物庫で騒ぎになっていてな、見た目は普通の本なのだが、触れたり開いたりするといきなり牙を剥いて暴れ出すのだ。それが何冊もあって、死者こそ出ていないが怪我人が増える一方なのだ。このままでは困るので、至急殲滅して欲しいのだ。宿にいる二人には使いを出しておいた」
「本が襲うか……。ブックミミックだな。本の姿をしてるだけの、れっきとした魔物だぜ」
「うん、珍しいね。そうそういないんだけど」
俺はランサーをみた。
「書物庫って事は、俺の攻撃魔法で破壊するわけにはいかねぇ。あれを倒せるだけの威力まで上げたら、普通の書物までダメにしちまう。ここは、ランサーたちの斧や剣、弓じゃねぇとダメだ」
「えっ?」
ランサーがきょとんとした。
「つまり、攻撃魔法が一切使えないって環境って事だ。頼んだぜ!!」
「うん、僕がサポートするから、片っ端から破壊しちゃって」
相棒が頷いた。
「どうやら話はまとまったようだな。これも魔王の嫌がらせかもしれん。宿からの二人が合流し次第、よろしく頼むぞ」
国王は大きな笑みを浮かべたのだった。
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