第11話 街に到着
大きな街には入る前に簡単な審査を受ける必要がある。
相棒から聞かされていたが、この街はそうでもないらしく、俺たちはノンストップで街に入る事が出来た。
「相棒、この街の名前は?」
「えっと、グレイス・シティだって。まずは宿探しだね。もうじき日が暮れちゃうから」
「そうなんだよ。これが苦手なんだよなぁ」
俺はため息を吐いた。
「この街なら宿はたくさんありそうだけど、全部当たってたらそれこそ朝になっちゃうね。地図には『猫だと大変だろう。案内所を使え』って書き込んであるけど……あれかな?」
街の出入り口付近に『?』と書かれた看板を出している小屋があった。
「へぇ、そんなのがあるのか。あの苦労した最初の街にもあればよかったのによ!!」
「あれは僕のミスだよ。ごめん」
相棒がため息を吐いた。
「気にすんな。それより、急いだ方がいいだろう」
「そ、そうだね。急ごう」
俺たちはその小屋に飛び込んだ。
「おや、変わったお客さんだね。猫は猫だよね?」
「た、多分な……」
人間の基準で勝手に呼ばれているので、正しいも間違えているもなかった。
「コホン。ご用件はなんでしょうか?」
オバチャンのいきなり人が変わったかのような口調と態度に、一瞬唖然としてしまったが、俺は素直に用件だけ述べる事にした。
「俺たちが泊まれる宿があれば教えて欲しいんだ」
「猫が泊まれる宿ですね。あまり拘らない宿でしたら、ここから歩いてすぐにありますよ。オーナーが『うちの扉を叩く者は、一切宿泊を拒否しない』っていう変わった人なんです。
オバチャンが引き出しから紙を取り出して俺に渡してきた。
「それが地図です。迷わないとは思いますが『赤い火吹きドラゴン邸』という看板がありますので」
「分かった、助かったぜ」
俺たちは案内所からでて、宿に向かった。
「えっと、地図だとこっちか?」
「それじゃ街から出ちゃうよ。貸して」
相棒は苦笑して俺から地図をひったくった。
「あっちだよ、よく見たら看板も見えるし。全く」
相棒が笑った。
「しょうがねぇだろ、次図なんて見た事ねぇんだからよ。
「それで、よく一人旅に出ようと思ったね……」
「魔法があるからいいやって思っただけだ。しかし、我ながら無茶を考えたものだな」
俺は歩きながら苦笑した。
門のま前は広場になっていて、それを突っ切った先に宿があった、。
「よし、ここか」
「うん、叩く扉がないけど、間違いないよ」
俺たちはそっと中に入った。
「おいおい、なにを遠慮してるんだ?」
宿の中にいた兄ちゃんに手招きされ、俺たちは慌てて中に入った。
「色々回って散々な目に遭ったかもしれんが、ここは当然猫でも受け入れるぞ」
「そ、それは助かる。なにせ、デカい街は宿探しが大変でな」
「だろうな。まあ、ゆっくりしていってくれ。色んな客がいるから。全室猫用出入り口完備だ。部屋は二階の201号室だぞ」
「分かった。よし、階段登るぞ」
「うん」
俺たちは宿の二階に移動した。
初めて見たが、猫用出入り口とは扉に穴を空けて、なにか勝手に蓋が閉まるように舌だけという感じだった。
「どれ、俺が先に入るから、バックパックを押し込んでくれ」
「ああ、そうだね。そうしないと向こうが埋まっちゃうから。分かった」
俺は相棒が押し込んできたバックパックを二つ引き込んで適当に床に転がし、続けて入ってきた相棒と笑みを浮かべた。
「これ、なんか面白いな。全部こうだといいんだけどな」
「ああ!?」
いきなり相棒が声を上げた。
「また、宿代を請求されなかったよ。まだ開いてなかったけど。晩ご飯はここの一階にある食堂だね。たくさん食べないとね」
「食堂っていうか飲み屋だけどな。まあ、いいか」
俺は相棒の背中叩いた。
「そうだな、疲れたしガッツリ食ってやろうぜ」
俺はランプで明るい部屋をみた。
「ベッドが二台あるって事は、二人部屋か。そう考えると狭いかもしれねぇけど、俺たちには広すぎるな」
「そりゃ僕たちが狭いなんて感じるような部屋に、人間が入れるとは思えないけど」
相棒が笑った」
「それもそうだな。よし、歩き疲れて眠いな。メシの前に一寝しようぜ」
「うん、賛成。さすがに足が痛いよ」
相方が床に伸びるように転がった。
「また、お前が先かよ。いいけどよ「
俺が苦笑したとき、相棒の寝息の音が聞こえてきた。
「寝るの早いな。まあ、お疲れ!!」
俺は相棒の体に身をくっつけ、腰の杖を手に周辺の様子に神経を尖らせたのだった。
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