第41話 国王陛下は風邪でも動じない
翌日、ヨシュアさんにお願いして医者を呼んで貰った。
私は居ない方がいいかなと思ったけど、ヴィゼル様に行くなって言われた。
「行くな」だって。可愛い。
今はお医者さんがヴィゼル様を診ている。
……あー上裸ヴィゼル様すてきぃいいいい ちょっとダルそうなのもすきぃぃぃぃぃいい(心の叫び)
「……で、どうなんだ」
「風邪ですね。二、三日安静になさっていれば良くなりますよ」
「……二、三日……」
ヴィゼル様はぼそりと呟くと、とんでもないことを言った。
「それってどこまで許されるんだ?」
……ちょ
「ヴィゼル様……」
ヨシュアさんが呆れてため息を吐く。
「……そうですね……致すのはちょっと……」
「あの、真面目にお答えして頂かなくて大丈夫です」
私は苦い顔で言った。
……漫画だと今顔に縦線が入ってるよ、絶対。
「何だ梨花。大事な事だろう?」
こんのデリカシー侵略陛下!
あなたは領地だけ侵略してればいいのよ!
「ふふっ」
何故かヨシュアさんが笑った。
♦
「あーヴィゼル様のせいで寿命縮みましたー」
「勝手に縮んだ貴様が悪い」
私はタオルをべしんと投げつけた。
「……痛いではないか」
「あらそれは失礼致しました」
私はとことこ寄ってきたコハクを撫で回す。この子最近寝てばかりだったのでちょっと久しぶり。ひと回りくらい大きくなった気がする。
「全く……私の姫はどうして欲しいんだ?」
「知りませんわよそんなの」
つんとそっぽを向く。
「生憎と私はベッドから出られない。だから無理矢理貴様を抱けない」
いぇーい、ベッド最こー。かみー(棒)
「……で? 私にどうしろと言うんですか?」
どこまでもズルい私の国王陛下は、片手を差し出して微笑んだ。
「おいで」
に゙ゃー(ノックアウト)
「ヴィゼルさ……」
ぴょん。
「にゃー」
私より一足早くヴィゼル様に飛び込んだのは他ならぬ(?)コハクだった。
「ん? 起きたのか。良い子だな」
「にゃ〜」
ズルい! 私だって撫でられたい!
「……梨花、どうした」
「〜〜〜っ!! もう、いいです!」
我儘なのは分かってる。けど、だって。
……ヴィゼル様のいちばんがいい……!
やがて彼はコハクを離した。
「……随分と物欲しそうな顔をするんだな、貴様は」
ヴィゼル様は両腕を広げて言った。
「梨花、おいで」
「……っ♡♡♡」
弱い。私ヴィゼル様にとことん弱い。
「ヴィゼル様……!」
ぎゅっと抱きつく。
「ようやく落ちたか。やっと喰えるな」
「……」
何やら蠢く手に危機感を覚える。
「ヴィゼル様……さっき、致すのはちょっと……って」
「ああ。仕方ないから致すのは我慢してやろう。だが貴様を苛めるのは致していないことになる」
この人……っ
「私に何をされたいか、言ってみろ」
「……添い寝」
「阿呆」
「何でですか!! したいです! 添い寝!!」
女の夢でしょうが添い寝!
「それは後でだ。ほら、言え。分かっているのだろう?」
……むー。
「……う、ヴィゼル様に……」
「……触られたいです」
我ながら変態だと思う。けどキスだと風邪移るかもしれないし。うん。そう。絶対そう。
「そうか。ならばさっさと脱げ」
「何で脱ぐんですか?!」
「当たり前だろう? 触ってやらんぞ」
別に私は良いですけど。
「ほーら、脱げ。無理矢理脱がせてやろうか?」
耳元で言われると背中がゾクッとする。
「うぅ」
仕方ないので上着を脱ぐ。
「よし、良い子だ」
ヴィゼル様は私の首にキスをした。
「ひぇ?!」
そのまま舌で首筋を舐められる。
つぅ……っとなぞられてくすぐったい。
「や、やっ」
今度はかぷ、と歯を立てらてた。
「……言っておくがな、梨花」
ヴィゼル様は私を押し倒し、不敵に笑った。
「貴様には嫌だとか駄目だと言う権利はない。……黙って私に喰われろ」
そんなぁ(嬉)
彼の唇は鎖骨に降りる。
手は身体を優しく撫でてゆく……。
と、その時だった。
突然ドアがノックされた。
「ヴィゼル様ぁー、大丈夫ですかぁ? お見舞いに来ました!!」
「帰れ」
ヴィゼル様はボソッと呟く。しかし次の瞬間には、何かを思いついた様な顔をした。
「ヴィゼル様……?」
彼は私を毛布ですっぽり覆った。
王様の毛布は厚手で大きいから外が見えなくなる。
「静かにしていろよ」
ヴィゼル様はそう言って外に声をかけた。
「入れ」
……?!
え、私、ここにいるの?! しかもほぼ裸で?!
「失礼しまーす」
ぱたぱたという複数の足音が近づく。
すぐにバレちゃうよこれ……!
しかし、私はふと気付いた。
そういえば、ヴィゼル様の布団って厚いから凹凸もよく分からないんだよね。
そして気が緩むと、もう一つ気付いた。
……さっきから身体に当たってるのって……
……ヴィゼル様の脚!!!
脚! 脚綺麗……無理かっこいい。
「ヴィゼル様ぁ、具合はいかがですか?」
「ああ、何とも…………ッ」
「ヴィゼル様?」
私はヴィゼル様の脚に抱きついた。変態でごめんなさい。でも好きなんだもん。
えへへー、しゅき。
「ああ、別に」
そろりと彼の手が伸びてくる。
ふに、と頬を
そのまま手はすすす、と移動して、頭を撫でられる。
「ヴィゼル様、今日は随分とご機嫌が良さそうですわね」
「……そうか?」
私はヴィゼル様の手と自分の手を絡めた。
彼の手に頬を擦り寄せる。
至福〜。
「…………ふっ」
「ヴィゼル様……っ?!」
「い、いいい今……笑ったわ!!」
ヴィゼル様は指で私の唇を撫でる。
そのままくちゅ、と口内に侵入してきた。
「……はぁ、ん、ふぅ」
どうしよう……声、抑えなきゃ。
口の中を好き勝手に掻き回されて唾液が溢れる。
「……んぅ……」
「──そういえば、ベアトリクス嬢がこの間ヴィゼル様が知らない女の人と歩いていたって言っていましたけど……本当ですの?」
「さあな。私は女と歩くことは少ない。来賓と勘違いしたのだろう」
「そうですよね。良かったですわ」
指は二本に増やされて、激しく口内を弄ばれる。
ぐじゅり。淫乱な音を響かせて。
「……っ、ん♡」
布団の中は息がしづらい。勝手に荒くなる息を必死で抑える。
……ヴィゼル様の指……っ
「はぁっ、はぁっ……ふぅっ」
「……すまないが、私はまだ本調子ではない。貴様らに移す訳にもいかないから、またの機会にしてくれるか」
「ええ、勿論です。お邪魔致しました。お大事にしてくださいませ」
ぱたん、とドアが閉まる音で私は我に返った。
布団が剥がされる。
「……ぷはっ」
「待たせたな、変態」
うわぁ……この人怒ってる……知ってたけど。
「なあ、おい。随分と良さそうにしていたな?」
「う……ごめんなさい」
唾液で濡れている唇を吸われる。
「許さん。淫乱な貴様には仕置きをせねばな」
お仕置き……
なんて良い響き。
「ほら、先程の続きだ」
かぷり、と鎖骨に歯が立てられた。
「ひぇっ」
「貴様はどこが弱いんだ? ……まあ、全て知っているが」
そう言って弱い所を焦らすように触ってくる。
「やだっ……もう、意地悪しないでくださいっ」
ヴィゼル様はニヤリと笑って耳を噛んだ。
「断る。たっぷり苛めてやらんと貴様は良い子にならないからな」
「っ♡」
「貴様は耳元も弱いのか?」
優しく舐められると身体の力が抜ける。
「やぁ……もう、無理……」
「まだだ、梨花。……今日は私が満足するまで離さないからな」
駄目だ、好き。
「うぅ……♡」
「ほら、私の上に乗れ」
そして下から散々苛められた。
「やだ……上やだぁっ」
「貴様は上になるのも弱いんだな。覚えておこう」
……こうして一つずつ弱みを握られてゆく。
私はますますヴィゼル様から離れられなくなるのだった。
そして、ヴィゼル様は約束通り添い寝してくれた。
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