第12-3話 再戦(3)

「搦め手を含めれば容易く仕留められると踏んだが、中々しつこいね」

「しつこいのはてめえだろ。世界征服のために一国をキノコ塗れにするとか悪質すぎるわ」

「……それはプロセスの一つに過ぎないよ」

「?」

 リオンはわずかに、悲しそうな表情を浮かべた。

「よし、もう十分だ」

「おい、くそ!?」

 リオンは弾けるように近距離から離れたと思うと、そのまま『漆黒の異空間』外の崖の上へと降り立った。何を企んでやがる? 俺は上空に広げていた異空間を俺の周囲数メートルほどに変更した。

「交戦して理解した。君は思った以上に厄介なようだ。僕と拮抗するほどの実力があることを認めよう。けれど、僕にも使命がある。……あの封印が解けるまで、もう時間は残されていないんだ。悪いが、信念を曲げさせて貰うよ」

 そう言うとリオンは飛翔し、掌に野球ボールほどの大きさの光の固まりを作った。ふわりと手放されたその光球は、さらに上空へと舞い上がると、まるで太陽の光を吸うかのように、ブクブクと大きく膨れ上がる。そして、直径数十メートルほどの大きさになった次の瞬間――その光球は勢いよく破裂した。

「――なっ!?」

 光の欠片がまるで割れた硝子の破片のように周囲へと飛び散る。当然、俺達に背中を向けていた魔術師兄やいまだ身動きを取れずにいる魔術師弟にまで襲い掛かる。

「く、そっ!」

 咄嗟に異空間の形状を再度上空を覆うように形変える。だが、この一瞬じゃあ、さすがに戦場全体を覆うほどの大きさは作れねえ。特に一番離れてるヤツ――魔術師弟に向かって、光の欠片が飛んで行ってやがる!

「ひ、ひえええええええ!?」

 くそ、時空操作は間に合わねえ! なら……ッ!

「なんとか、間に合ったか」

 魔術師弟の頭部目掛けて飛んできていた光の刃を、俺は片手で握り潰した。

「さすがだね。救うべき者がいれば全て救おうとする。君は確かに勇者だった」

 リオンの声が聞こえてきた。彼の肩には、リーゼが背負われていた。

「姫さんッ!」

「ゆ、勇者様!」

「それでは、目的のモノは確かに頂いていくよ」

「おい待て! お前の目的はボールだろ! 姫さんは置いていけ!」

「いいや、返せないね。僕の真の目的は……正当な手続きを持ってリーゼ姫を殺すことなのだから」

「なん……だと……!?」

「それじゃあ、さよならだ。もう会うことはないだろう」

「おい、待て! り、リーゼえええええ!!」

 俺の叫び声も空しく、リオンは姫さんを抱きかかえたまま、光の速度でこの場から姿を消した。

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