第5-4話 VS白銀のスクール水着!(1)
「ンァー! 貴様一人で俺たち兄弟を相手にするつもりカァァン? 脳髄引きずり出シて殺してヤァァルぅ……ふぅ、不気味な衣装だな」
お前の精神状態の方が不気味だわ。
「お兄ちゃん、見た目で判断したらダメだよ! あれに僕は凌辱されたんだ!」
「ああ、お前のオリハルコンを片手で破壊したのだ。全力で当たらざるを得まい。弟よ、アレをやるぞ!」
「分かったよ!」
言うと、魔術師弟が呪文を唱え始めた。現れたのは……無数の鋼鉄の槍。全力というのは伊達ではないらしく、小恋夜が迎撃したときのざっと三倍の数がある。さらに、今度はそれらは止まってはおらず、上空を縦横無尽に飛び回ってやがる。兄がサイコキネシスで操っているのだろう。攻撃対象は……俺たち全員のようだ。
「なら、全部落とすまでだ」
一歩下がり、姫さんたちの前に立ち、地面に彼女らを囲う円を刻む。そして、四方八方から飛んでくる鉄槍を拳で迎撃する。鋼鉄の槍は俺の拳先に触れるだけで光の粒となって消えた。そのまま、超速度でサイコキネシスで操作された槍を殴り、いなし、叩き落とし、残り三つ、二つ、一つ……!
「これで最後だ!」
ラストの鉄槍を破壊するのと同時、何かに掴まれたかのように俺の全身が動かなくなった。こいつは、サイコキネシスか!?
「ふっ、捕まえたぞ」
不可視の力が俺の全身を締め付ける。圧縮される力の渦に巻き込まれて瓦礫がプレスされて潰されてゆく。常人なら数秒と持たずぺしゃんこになる圧力だ。だが、
「効かねえよ」
「なっ!?」
俺は両腕に思い切り力を込めて、身体を包んでいた不可視の力に反発する。それだけでまるで発泡スチロールを破壊するかのように、不可視の拘束を振りほどく。表情で仰天を露わにいした魔術師達。その隙を見逃すはずがねえよな? 俺は瞬時に魔術師兄の懐へと移動した。そして、こいつが身構えるよりも早く、その首筋に手刀を加える。
「ぐぁっ!?」
俺の手刀は魔術障壁を容易く突き破り、魔術師兄は敢え無く床に崩れ落ちた。ピクリとも動かねえが、ひとまず意識を失っているだけのようだ。ん、上手く手加減はできたようだ。
「お兄ちゃん! ……ひ、ひぃ!?」
その叫び声が収まるよりも早く、続いて俺は魔術師弟の眼前へと移動する。速度差から考えて、まるで瞬間移動してきたように見えたのだろう。その上、先日のトラウマも蘇ったのか、魔術師弟は眼球を虚ろにきょろきょろと動かして、口元から涎を垂らしていた。
「悪いが、少し眠って貰うぞ」
心神喪失状態のところに手を加えるのは心が痛むが、急に精神が復活して姫さんたちに危害を加えられても困る。俺は魔術師兄にやったようにこいつの首筋へと手刀を放とうとした……その腕が――何者かによって掴まれた。
「なんとか間に合ったようだね」
俺の腕を掴んでいたは、魔術師達と同じローブに身を包んだ青年だった。しかし、先ほどまでの魔術師達とはレベルの違いが感じられる。現にゴーレムの全体重を受けとめ、オリハルコンをも砕いたはずの俺の手がびりびりと痺れていた。
「ぼ、ボス……! どうして貴方が!?」
「僕と同じ力を感じたからね。気になって来てみれば案の定だ」
「お前と一緒だと? そのローブの下から感じるエネルギー……お前、まさかその服の下は……ッ!」
「ふっ、気づいてしまったか」
青年は伝統的なローブを脱ぎ捨てた。その下から現れた紺色の衣装は……!
「女子のスクール水着、だと……!」
俺が着ているのと同じ、女子のスクール水着だった。
しかし、衝撃はそれだけでは終わらなかった。
「貴方は、まさかリオンお兄様……!?」
「なに!?」
青年はその言葉に応えるように優しく微笑んだ。
言われてみれば、確かにこいつの容姿はリーゼと似通っていた。紅蓮を想わせる燃えるような緋色の髪。水晶のような瞳もまた紅く、肌は美しいほどに白い。年齢は二十代くらい。背丈は高く、百八十センチは優に超えているだろう。さらにその顔つきはハリウッド映画に出ていてもおかしくないくらいに整っている。平たく言えば、イケメンである。
しかし、このイケメンスク水野郎が姫さんの兄貴だってのかよ!?
「お兄様! よかった、生きていたのですね……! でも、ボスというのは……? それにその衣装、どうしてお兄様が組織の服を着ていたのですか……!?」
「見た通りだよ。僕が秘密組織ディベルトヘルズ教団のリーダーなんだ」
「そ、そんな……!」
その言葉を聞いた姫さんが、膝から崩れ落ちる。
「では、まさかそのスクール水着は!? だ、ダメです、勇者様っ! 今すぐみんなを連れてここから逃げましょう!? あれは、あれは我が王家に代々受け継がれてきた伝説のスクール水着なんです! 勇者様の着ているものと同じくらいの力があって、悪用されないように父上が隠していたはずなのに……!」
「そ、そうなのか?」
姫さんはそう言うが……正直俺だって極めてイカれた性能の魔装神器を着てるんだ。いくら強いと言っても、俺ならなんとかなるんじゃないか?
「ふっ、スクール水着をただ着ただけで僕と対等なつもりかい?」
そんな俺の思考を見抜いてか、リオンは不敵な笑みを浮かべた。
「甘い目算だね。君はまだスクール水着の真の姿すら知らないというのに」
リオンは、額に片手を当ててクールに微笑む。
「真の姿を顕せ――白銀の翼よ」
そして、両腕を大きく広げて、まるで十字架のようなポーズで高らかに叫んだ。それと共に、ヤツの着ていたスクール水着が眩いほどの光を放った。それはまるで魔法少女の変身のようだった。天使の降臨を連想させる白銀の輝きが、青年の身体を温かく包む。
「銀色の……スクール水着だと!?」
光の収束とともに現れたのは、煌々とした白銀のスクール水着だった。
「これがスクール水着の
ずさりと。その荘厳な姿から何かを感じたのか、俺の足が一歩後ずさりをしていた。……違う! あの姿は、あの銀色のスクール水着は、いままでのスクール水着とは何かが違う!
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