第2-2話 超ハイスペックなお姫様現る。しかし、その趣味は――?(2)
「でもさ、もし神様の話が本当だとしたら、次はお姫様と出会うんだろうね」
「はあ? なんでだよ?」
俺の拘束をなんなく振りほどいたナオは、人差し指を左右に揺らしながらそんなことを言ってのけた。
「よく考えてみなよ。無遠慮に髭を伸ばしたファッションセンス皆無なブサメンの配管工にすら守るべきお姫様がいるんだよ。世界の勇者にいないなんておかしいじゃないか」
「そりゃ二次元の話だろ。ここは現実だ。そうそう姫様なんて現れるはずが――」
「お前ら! チャイムがなったぞ! とっとと席につけ!」
その時、教室の扉が開き、担任教師の西山先生が入ってきた。
なんでこの先生はいつもチャイムと同時に入ってくるんだよ。
「ほら、先生来たよ。地底に戻りなよ、峰樹」
「俺のクラスはここだ」
ナオの冗談を受け流しつつ、机の上に顎肘をつく。
思案するのは当然この紋章のことだ。先行きは依然不透明だった。あのイカれた神様の言うことを真に受けるならば、邪悪の化身とやらを倒せばこの紋章も消えるのだろうが、肝心の相手やら現れる場所やら正体やら、いかんせん取っ掛かりがないんだよなあ……。
「よし、みんな席に着いたな。じゃあ急な話だが、今日は転校生を紹介するぞ!」
……ん?
「んー? おいおいおい、反応が悪いなあ。聞こえなかったか? 転校生だぞ、転校生。学園生活の一大イベントの一つだぞ。もっと驚くべきだろう。ハイッ、てーんこうせー、ハイッ、てーんこうせー!」
なんでハードなノリを強要すんだよ。朝っぱらからうっとおしいわ。
そしてほんと途端にガヤガヤし出すなよ、クラスメイト。
「せ、先生! いくら何でもいきなりじゃないですか! 歓迎パーティとか、クラスメイトからのお祝いとか! 僕たちにも心構えがいるんですよ!」
委員長の竹倉平三郎が立ち上がり声を荒げた。
「俺もいきなりだとは思うんだがなー」
「迷惑かけてる自覚はあるんですね~。でしたら当然事前情報をいただけるんですよね~?」
やけに偉そうだな、委員長。
「おう、なんでも聞いていいぞ」
「男ですか? 女ですか?」
「女だぞ」
「美少女ですか?」
「あー……残念なことに」
はあー……と、クラスの男子の落胆の息が漏れる。
「超美人だ」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
うわ、うるせえ!
先生も先生でフェイントが上手くいってニヤニヤしてんじゃねえよ。
「そりゃもうびっくりするくらいの超美人でな。しかも、外人だぞ、外人。超美人の外国人とか、正直俺が嫁に貰いたいくらいだわ~」
「先生はロリコンなのですか?」
「さもありなんだ」
委員長、なんでも聞いていいとは言ったがその質問はダメだろ。
後、先生もそこは否定しろよ。クラスの女子が引いてるぞ。
「ま、俺も突然すぎると思ったんだけどな。校長が昨晩急に『わしは異文化交流に目覚めたんじゃ』とか言い出してな。昨夜のうちに世界各国に電話して回った挙句、日本に外遊していたご令嬢を一人確保してきたらしいんだ」
すげえな、校長。
「しかもその令嬢ってのが小国ながら正真正銘一国の姫様でな」
マジかよ。
「外交官時代に築いた外務省のコネを総動員して即日転入させたらしい」
校長元外交官とか初めて聞いたぞ。そして、その手腕はもっと別のことに活かせよ。
「とうとうこの個性モリモリ学園にもグローバル化の波が押し寄せたんだなあ」
この学園名でよく入る気になったな、そのご令嬢は。いつ聞いてもひどい名前だぞ。……いやまあ、正式名称『古聖森々学園』だけどさ!
後、なぜ男子は椅子に掛けてたブレザーを着たり、ネクタイを締め直したりしてるんだ。背筋をピンと伸ばしても急に猫背は治らねえぞ。お前ら、そわそわしすぎだろ。
「じゃあ、前置きはこれくらいにして。長いこと外で待たせるわけにもいかん。今から入れるが、くれぐれも粗相がないようにな」
「「「はーい」」」
なんだその小学生みたいな返事は。上面だけ行儀よくしようとすると幼児化するのかお前らは。……なんだこの展開は。非常に嫌な予感がするぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます