第4話

 ここに、奥州鎮守府将軍の役を賜った男がある。

 

 名を、藤原秀衡。その血統は、かの地にて古来より力のあった安倍氏と清原氏にある。その血を受け継いだ者は奥州藤原氏を名のり、彼等もまた、代々地元で採れる砂金や名馬を朝廷に献上し、その信認を得ていた。

 それでいて、奥州の地は中央の影響を受けることなく、静かな繁栄の中に在った。平家の力も、遠く奥州までは届かない。


未だ。


 その、奥州藤原氏の当代、藤原秀衡は温厚で柔和でありながらやはり、覇者の風格を持った男であった。知命を数え、その風格はますます磨きをかけているように思える。強さの中に思慮深さ、忍耐強さを思わせる男であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る