平成16年2月14日

 バレンタインだというのにミオがチョコをくれない。何故だろう。正月に作ってあげた服が気に入らなかったんだろうか。

彼女がもう喋れないことを知っている。

彼女がもう笑えないことも知っている。

彼女がもう生きていないことを知っている。

だけど、理解が出来ない。だって、僕の中では確かに生きているんだ。目を瞑れば、そこで笑っているんだ。「これはきっと悪い夢なのだ。」と、目を開ける度にそう思った。



 「すべてを思い出せないまま一周忌を迎えてしまったらどうなるんだろう。」

夢を見ている間、ずっとそのことを考えていた。死んだのが無かったことになるんだろうか。それはそれで良いかもしれない。いや、また人間になるのは厭だな。やっぱり消えるのが一番だ。さっさと何もかも思い出そう。

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